フロントガラスにひびの入ったミニバスに乗って丘を登っていく――ど派手なアメリカ大使館を横目に、赤土と土壁に覆われたでこぼこの道路を過ぎて、北海道のような巨大な通りに出る。不自然なくらい整備された道路だが、通行量はとても少なく、そこがカメルーンであることに違和感を覚えるほどであった。視界が開け、眼下にヤウンデの町が広がる。

 

湿った草の香り

赤土の大地を彩っている深緑

隅に揺れるちいさな青い花

 

生命力にあふれた植物を目にして、その名を知ることができたらと思った。

 

アフリカにも山がある。山を縁取る木々は、まるでカメルーン人かのように背が高い。まっすぐ細長い枝で、上の方に葉が固まって生えている。

 

今日、この目で初めて、いわゆる「スラム街」を見た。

表通りは賑やかな市場で、華やかな柄の布や食べ物、靴、携帯、工具、タイヤ、服などが売られている。モスクがあるかと思えば、隣には教会がある。ナイジェリア人、ニジェール人、マリ人など様々な国の人々がここに住んでいるという。境界線のない概念と混沌とした街並み。

 

ムスリムの男性が道で祈りをささげている。

ラマダーンも近いからだろうか、道は混み合い、クラクションを鳴らしあいながらへし合い押し合いして道の取り合いをする。車はどれも傷がついていて、後部席に5人以上が詰め込まれているものもあった。

 

市場の店の合間に細い路地が見えて、その奥に鉄板をそのまま乗せたかのような乱雑な屋根が見える。私たちはそれを「スラム」と呼ぶ。貧しい生活をしているから?ぼろぼろの服を着ているから?私は頭に大きな籠をのせて歩いている女性のその高貴さに、「スラム」という言葉はあまりにも不釣り合いな気がした。

 

錆びた鉄筋、変な柄のじょうろ、傾いた店の看板、生ごみが溢れてハエのたかっているゴミ箱、砂埃で赤くなった少年の細い足首、ぼろぼろのビーチサンダル、ギラギラした目で通りゆく車を眺める男性、アイスクリームをほおばる大柄の女性――車窓から眺めるすべてのものが、非現実的で恐ろしく、美しく、厳しく、難しかった。

 

夕刻には、さっきまで晴れていた瑠璃色の空が曇り、大粒の雨が地面をたたきつけた。人の話し声が聞こえないくらいの雨音は一瞬にして地面に川を作り、冷たい風を吹かせた。

 

さっきの雨が砂埃を洗い流し、雲間から深い瑠璃色の空が映る。

毎日目に映るすべて、感じる心の変化、未知に対する抵抗と受容――

私はここで生きていくのかと思うと、とても奇妙で、なんだかへんてこな現実だとおもう。

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