【報告】国交省へ成田延伸の中止申し入れ
成田プロジェクトが国交省申し入れ
10月13日、成田プロジェクトが国土交通省申し入れを行った。
成田プロジェクト呼びかけ人の大野和興さんらが国交省航空局首都圏空港課成田国際空港整備推進調整室の島田室長と石田課長補佐に対して、声明「成田空港B滑走路の延伸の中止を求めます」を手渡し、供用中止を求めた。
声明──成田空港B滑走路の延伸の中止を求めます
成田空港では、B滑走路(暫定平行滑走路、2180メートル)を北に延ばして2500メートルにする計画が進められ、成田国際空港会社は今年10月22日に供用を開始すると発表しました。
B滑走路が2500メートルに延伸されれば、大型のジャンボ機が発着することになり、空港会社は年間の発着回数を2本の滑走路を合わせて現在の20万回から最終的には30万回に増やすと言っています。B滑走路の南端には農を営む人びとが暮らしており、いっそうすさまじい騒音と排気ガスが、そしてさまざまの事故の危険性がその人びとを襲うことになります。これは、現地で生活する人びとに対するあからさまな人権や生存権の侵害です。
空港公団を引き継いだ空港会社は、公団が現地や周辺の住民、反対同盟と取り交わした約束や協定を誠実に守らなければならない立場にありながら、そうした約束を反故にしてB滑走路の延伸を強行し、また全国の一坪共有者に権利返上を求める動きを強めています。
さらに、今年3月にA滑走路で米フェデックス貨物機が炎上し初めての死者を出す事故が起きましたが、空港会社は、この事故を理由にして大型機が飛べるようにB滑走路の延伸を早めたと言っています。本来ならば、この事故を教訓にして、開港前から問題視されていた空港立地の地理・気象条件そのものを根本的に再検討しなければならないはずです。しかし、こうしたことをまったく顧みず滑走路の延伸と発着回数の増大だけを追求するのは、安全性無視もはなはだしい態度です。
いま地球温暖化をはじめ地球環境問題が重要な課題になっているとき、石油燃料を大量消費してCO2を排出し排気ガスを撒き散らす航空機をどんどん増やしてよいのでしょうか。しかも、航空会社は増便すればするほど赤字が増えるという状況に陥り、航空政策そのものの迷走ぶりが大きな問題になっています。こうした視点からも、空港の拡張・新設や滑走路の増設・延伸が問い直されるべきです。
私たちは、人権・生存権、安全性、環境の観点から成田空港のB滑走路の延伸に対して重大な疑問を表明します。そして、国土交通省と成田空港会社が10月に供用を開始することを中止し、現地で暮らす住民をはじめとする当事者の意向を聞き、延伸計画そのものを再検討することを求めます。
2009年10月13日
成田プロジェクト
(「いま成田空港で何が起きているのか」プロジェクト)
◎声明賛同署名人
秋本陽子 (ATTACジャパン)
安部 誠 (全国ユニオン)
天笠啓祐 (ジャーナリスト)
石川文洋 (報道カメラマン)
大野和興 (農業ジャーナリスト)
大沼淳一 (みたけ・500人の木曽川水トラスト)
小倉利丸 (富山大学教員)
尾瀬あきら(漫画家)
尾関葉子 (地球的課題の実験村事務局長)
鎌田 慧 (ルポライター)
菅野芳秀 (置賜百姓交流会)
神田公司 (熊本市民センター)
齋藤たきち(農民詩人)
桜井建男 (空港はいらない静岡県民の会)
佐高 信 (評論家)
設楽清嗣 (東京管理職ユニオン)
白川真澄 (ピープルズ・プラン研究所)
菅井益郎 (國學院大學教授)
鈴木一誌 (ブック・デザイナー)
高木久仁子(成田バスツアーの会)
田中伸尚 (ノンフィクションライター)
塚本春雄 (横浜事件の再審を実現しよう!全国ネットワーク)
富山洋子 (日本消費者連盟)
中山千夏 (作家)
名古屋哲一(元郵政4.28ネット・免職者)
西尾 漠 (はんげんぱつ新聞編集長)
花崎皋平 (哲学者)
伴 英幸 (原子力資料情報室共同代表)
平田 豊 (北部労協(全労協)前事務局長)
福富節男 (元東京農工大学教授)
藤原寿和 (廃棄物処分場問題全国ネットワーク)
前田哲男 (軍事評論家)
前田裕晤 (協同センター・労働情報代表)
松谷 清 (自治体議員政策情報センター)
水原博子 (食と農から生物多様性を考える市民ネットワーク)
武藤一羊 (ピープルズ・プラン研究所)
村田 久 (「田をつくる」)
村山 敏 (神奈川シティユニオン委員長)
山口幸夫 (原子力資料情報室共同代表)
湯浅欽史 (高木学校)
吉川勇一 (市民の意見30の会・東京)
ロバート・リケット(研究者)
渡邉充春 (歯科医師)
◎成田プロジェクト呼びかけ人
浅井真由美(『労働情報』編集長)
大野和興 (地球的課題の実験村共同代表)
梶川凉子 (成田バスツアーの会)
鎌田 慧 (ルポライター)
白川真澄 (『ピープルズ・プラン』編集長)
高木久仁子(成田バスツアーの会)
高橋千代司(三里塚一坪共有者)
中里英章 (成田バスツアーの会)
花崎皋平 (哲学者)
藤川泰志 (みさと屋)
水原博子 (食と農から生物多様性を考える市民ネットワーク)
成田プロジェクト
(「いま成田空港で何が起きているのか」プロジェクト)
〒101-0061 東京都千代田区三崎町2-13-5 影山ビル
協同センター・労働情報気付 ファクス:03-6675-9097
【報告】講演会「鳩山政権と核の「先制不使用」~核軍縮の障害からの脱却」
講演会「鳩山政権と核の「先制不使用」~核軍縮の障害からの脱却」
講師 田窪雅文さん(「核軍縮」主宰)
10月9日、講演会「鳩山政権と核の『先制不使用』 核軍縮の障害からの脱却」が行われた。講師は田窪雅文さん(「核情報」主宰)。
田窪さんの講演は
「オバマ米国大統領が平和賞を受賞することになった。もう少し具体的な政策を出してからの受賞がよかったかもしれない。
核先制不使用とは核兵器を先に使わない考え。核抑止というのは、普通は核攻撃に対して核で報復する。アメリカで議論されているのは核の役割を限定する。つまり、核兵器で攻撃された場合は核攻撃で報復する。だから、核攻撃をするなよという脅しをかけておく。これに限定する。生物化学兵器・通常兵器による攻撃には通常兵器で報復する。(一部の考えでは、役割を限定するといいつつ、先に攻撃する恐れが若干残る。)
先制不使用は、そういうのではなく、先には絶対攻撃しない。核攻撃をかけようとしているかどうかは判断しにくい。お互いに疑心暗鬼になっていくと核戦争の可能性が高まってしまう。核兵器の場合、数発でも相手国に壊滅的なダメージを与える。それで十分。存在そのものが抑止になる。核は使われない状況になっているから、それを確認し追認する形で先制不使用を宣言し、使われる可能性を下げていく。核の有用性という考え自体をだんだんなくしていく。これが核の役割限定、先制不使用。
昔からある考えだが、冷戦後90年代初めに議論された。94年、クリントン政権の核態勢見直しは、冷戦時代の考えが延長したものになった。クリントン政権に入った学者は大幅削減を考えていたが、軍部が巻き返しをして、クリントン大統領は関与しなかった。核態勢の見直して有名なのは子ブッシュ政権で、先制攻撃を含む核態勢をとった。
オバマ政権は核体勢見直しをしている。見直しを命じた法律で、議会委員会が設置され最終報告書が5月に出された。
「日本が問題だ!」
議会委員会報告を見て、米国の活動家・アナリストが「日本が問題だ」と日本の運動に伝えてきた。
どういうことか。オバマ政権では二つのグループが対立している。一方で核態勢の見直し、核の役割限定・先制不使用を考えているグループがいる。もう一方で現状維持、核の役割強化を考えているグループがいる。
現状維持派がその理由として挙げているのが日本の姿勢。最終報告書の中で、核抑止を強化して維持すべきだと。その一つが核トマホーク維持。核トマホークミサイルは、父ブッシュ政権時代に海上配備をやめた。ソ連崩壊の中で、ソ連周辺諸国に配備されている戦術核の保安体制が崩れて、誰かの手に渡ることを父ブッシュ政権は恐れた。ロシアに核兵器を引き上げることを呼びかける。見返りとして、欧州配備の戦術核を本国に引き上げ、水上艦船・攻撃原潜の核は陸に揚げる。海に残るのは戦略原潜のミサイルだけにすると宣言。このままだと、2013年に廃棄処分になる予定。現在使える状態の核ミサイルが100発、整備し直せば配備できるのが200発。軍部の多数派はこのまま廃棄するという考え。
シュレシンジャー元国防長官は配備維持を主張している。彼は議会委員会の副委員長。委員会文書に核トマホーク維持とある。《アジアの重要な同盟国が核トマホークの配備維持を望んでいる。これを廃棄処分にすると心配することは明らかだ》とある。アジアの重要な同盟国が日本を指すのは明らか。
つまり日本が半分死んでいる原潜の核トマホークの寿命を長くしてし、原潜が日本の周辺をうろうろするようにして核抑止を機能させてくれと。そのような内容が報告書に書かれていると米国から伝わってきた。
同時に、核兵器の役割を核抑止に限るという表現に日本が反対していると。なぜ反対しているかというと、生物・化学・通常兵器による攻撃に対しても核兵器で報復してもらわないと困ると日本人は言っていると。だから、核体勢を見直すと日本が核武装するおそれがあるという主張がされている。
7月末から8月初め来日した米専門家は、緊急に日本側のメッセージがほしい。《核の役割限定に反対しない、先制不使用を支持する、アメリカがそのような核戦略をとっても日本が核武装することは絶対ない》と伝えてほしいと。政権側がそういうのが一番いいが。
日米首脳会談の直前の9月22日づけで米国の核問題専門家が両首脳宛の書簡を出した。オバマに対しては、日本が核武装するからという口実に使わないで核の役割を限定するという方針を表明してほしい。鳩山に対しては、このような方針を支持すると明確にしてほしいと。残念ながら報じたのは共同、朝日だけ。先制不使用問題の重要性がマスコミで理解されていない。
核先制使用に固執する外務省
日本は核先制使用についてどのような態度を採ってきたのか。82年、社会党の横路孝弘議員の核兵器先制使用に関する国会質問に対して、抑止とは核兵器・通常兵器一体でなされるから核兵器を先に使うという考えも含まれると答弁している。これは、アメリカがヨーロッパで旧ソ連に攻撃を仕掛けたらどうするか。当時はワルシャワ条約機構の通常戦力がNATO軍の通常戦力を圧倒的に上回っていると理解されていた。だから、核戦力で抑止するという考えがとられていた。アメリカはこの考えは東アジアでも当てはまると言っていたので、本当なのかと横路議員が質問した。
答弁は、本当だ、75年三木・フォード会談の新聞発表に、そのことが含まれていると。これは、どのような攻撃、核攻撃があっても日本は守りますよという意味合いに取れる。ところが、日本政府の説明は、これは通常兵器による攻撃でも核兵器で報復するという意味が含まれているとなっている。75年のときから、そういう考え方はあると説明された。
90年代に先制使用という考えはいつからあるのかと外務省に聞くと、講和の時から日本は先制使用に頼っていると説明する。90年代末から現在にかけて、外務省に「核先制不使用を支持できないのか」と何度聞いても答えは同じ。《アメリカが核先制不使用という政策をとると日本の安全に責任をも持てない》
非核三原則を考えれば先制不使用が当たり前だと解る。三原則はつくらず、持たず、持ちこませず。つくらず、持たずについては、NPTや国内法で禁止している。問題は持ち込ませず。日本政府は他の兵器の攻撃にも核で報復してほしいといっている。それで、核兵器を絶対持ち込むなという話はないだろうと思う。しかも、死にかけている核トマホークを蘇生措置して、原潜に装備して日本の周りをうろうろしてほしいと言っている。しかも、その役割は先制使用を含む。それで、絶対持ち込むなはないだろう。 岡田外相は核密約の調査を命じた。
今見たように密約の素地は当然あった。論理として、核兵器を先に使ってほしい、核兵器を持ってない国にも使ってほしいという考え方を持っていて、日本に絶対持ち込むなとはならない。そうなると、実は持ち込んでいいという裏取引をして、密約しておかないと持たない論理構造になる。
90年代から外務省官僚と話をしてきたが、彼らの先制不使用反対の姿勢は強硬。佐野部長はえらい剣幕でそんなことしたら大変なことになると言っていた。
問題は日本の政策だけではない。いまは10月中にもオバマ政権の日本の核態勢見直しの方針が出てくる重要な時期。
オバマ政権では、見直しで核の役割を下げて、使われない兵器という考え方にたってどんどん削減していこうというグループと、それを阻止しようとするグループのせめぎあいが報じられている。既にドラフトができてオバマに送られている。年末までに文書を議会に提出する。議会委員会報告書を書いた人が国防総省に入って核態勢見直しの文書を書いている。報道によると、オバマは現状維持ではダメだとつき返している。その中で、核の役割限定、核の数量を数千から数百に下げるという方針を出せと命じている。
米国のNGOは、オバマ政権は核の役割限定に行きうると見ている。だが、それを阻止しようとするグループがいて、「そうすると、日本が核武装する」という議論をしている。
日本で普通に考えたら、日本の核武装は考えづらい。だが、日本は「核以外の攻撃にも核で報復」という立場をとっている。94年核危機のとき、米国が韓日に核放棄をすれば核攻撃しないと北朝鮮に約束したいと聞いた。枠組み合意ではその内容が盛り込まれたが、日本は反対した。《北朝鮮は生物化学兵器を持っている。北が核兵器を持たないと約束しても、核攻撃をしないと約束しないでほしい》と米国に言った。今回の核実験でも同じ態度をとった。
94年の核戦略見直しに関わった米国の元当局者は、核先制不使用にならなかったのは、そうすると日独の核武装の可能性があるという反対論があったからだと証言している。
先日、原水禁が先制不使用支持を求めて外務省に行ったが、軍事管理軍縮担当の佐野部長は、核先制不使用にしたら第二の朝鮮動乱が起こる。北朝鮮が核兵器を使ってない段階で、南に対して動いたり、日本に対して生物化学兵器を積んだミサイルを発射したら、核兵器で報復することを支持すべきだと言っていた。
そうすると、あらゆる国が核兵器を放棄しても、生物化学兵器・通常兵器が存在する限り、核報復したいと考えている日本が核武装する可能性がある。論理的にはそうなる。この論理を否定するのは、これまでの日本の政策を考えると難しい。
鳩山政権は核の先制不使用を日本の政策として発表するところには至っていない。鳩山も岡田も個人的には先制不使用を支持している。民主党の核政策の検討グループの中心は岡田。しかし、日本政府としてそういう方針をとっていると米国側に伝えない限り、現状維持派の論理を突き崩すことは難しい。十月中には核態勢見直しの骨格が決まるといわれているので、日本政府が政府方針として「先制不使用支持」「核の役割を核抑止に限定する」を支持すると明確に伝えないと、今までの核戦略が続いてしまう。今までの考えに立って核兵器配備を継続する。核トマホークの寿命を延ばして、攻撃原潜に載せることになるかもしれない。米ロの核軍縮でも、「そうすると日本が心配する」と、核軍縮しない全ての口実に日本が使われる。
日本の運動として、核廃絶一般や核兵器禁止条約の早期締結を訴えるのはいい。それだけではなく、そういう考え方を背景に先制不使用という考えに立って、それをアメリカに強く伝えられようにしないといけない。
日本は「唯一の被爆国」で、非核三原則で核持込みに反対し、核廃絶をめざしていることになっている。実は裏では違うことをしている。外務省役人の考え方は相当強硬。外務省官僚の抵抗を乗り越えて、岡田外相が明確なメッセージを出せるような状況を運動やマスコミの側がつくらないと負けると思う。