HAARPについての調査結果 | PygmalionZのブログ

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相変わらずHAARPを人工地震兵器という陰謀論者の方々がおられるようなので、HAARPについてネットで文献調査を行った。
私自身、HAARPで如何にELFを発生するか原理が良く解らなかったが、ドキュメントを読み進むうちに合点が言った。
以下はその結果である。

【HAARP】
HAARPはThe High Frequency Active Auroral Research Programの略で、高出力の短波(High Frequency; HF)を利用して電離層の振る舞いの研究を行い、その成果の民間及び軍事利用を目的とする研究プログラムである。このプログラムの予算は米国防総省(The Department of Defense; DOD)から出ている。この辺りがHAARP人工地震兵器陰謀論者(いご単に陰謀論者とする)の方々の注目する理由なのだろうが、DODが予算を拠出する多くの研究プログラムは後に民間へと技術展開される。例としてはカーナビでお馴染みのGPS、インターネットなどが有名。

HAARPで使用されている高出力の短波発信用アンテナはThe Ionospheric Research Instrument (IRI)と呼ばれ、ダイポールアンテナを十字に組み合わせたユニットが12×15=180機並べられたものでアラスカに設置されアラスカ大学が運用を行っている。陰謀論者の方々はこれを指して遠隔人工地震発生装置と考えている様だが全くの誤り。以下にその理由を示す。

【The Ionospheric Research Instrument (IRI)】
先ずはHAARPの中心的実験装置であるIRIについての理解を深める。

この装置は、電離層圏界面と地磁気の磁力線がほぼ直交する場所で、磁力線に沿って高出力の短波を照射する事により電離層にあるプラズマ状態の電子(宇宙線などの衝突で電子とイオンに分離して出来る)の運動エネルギーを増加させる(加速する)。さらに十分なエネルギーを与えると周囲の電気的に中性な分子のイオン化を促す。これにより周辺の荷電粒子密度が増加する。電子の持つエネルギーが1keV程になると励起されたプラズマによる不均一な磁場が形成され磁力線沿って上昇する力が生じる。これによりプラズマの上昇流が発生する。

ここで一つの疑問は、なぜ短波で電子のエネルギーが増加するかである。これにはいくつかの条件が必要となる。
条件1)照射する短波は北半球では右回転偏向(右旋円偏波)、南半球では左回転偏向(左旋円偏波)で、周波数は電離層内の電子のローレンツ力による回転周期(ジャイロ周波数)を元に決定する(対象とする電離層の高度により異なる)。
条件2)照射する電離層の部分は圏界面に対して地磁気の磁力線がほぼ直交している。つまり高緯度地方てあると云うこと。

ここで電離層内の荷電粒子は磁力線に沿って螺旋を描きながら降下する。電子の場合、S極(北極はS極)のある北半球では右回り、反対に南半球では左回りとなる(陽イオンはその逆)。これは磁束中を進む荷電粒子はローレンツ力を受けて磁束に沿って真っ直ぐに進むことが出来ず、磁束の垂直方向に円を描く為で、円を描く方向はフレミングの左手の法則に従う。

条件2を満たすIRIの在るアラスカ上空の電離層内では、上記の理由により右回りに電子がほぼ垂直に降下する。この電子に向かって地上から条件1の短波を地磁気の磁力線に並行に照射すると電子サイクロトロン共鳴により電子の運動エネルギーが増加する。

以上、米国特許4686605より。

HAARPではこれを様々に応用して通信に関する研究を進めている。

【ELF/VLFの発生】
ここではIRIを用いたELF(極々々超長波)/VLF(極長波)の発生について理解を深める

以下は参考としたサイトのURL。因みに一つ目は米海軍の研究所のサイト。

参考URL
http://wwwppd.nrl.navy.mil/whatsnew/haarp/
http://www-star.stanford.edu/~vlf/publications/2004-06.pdf
http://www-star.stanford.edu/~vlf/pars/pars.htm#1.%20INTRODUCTION

これらによるとELF/ULF/VLFはIRIで発生するプラズマの上昇流を発生させたい周波数に合わせてパルス状に周期的に発生させる事により発生する。

ここでELF/ULF/VLFの電波は地上で反射し、電離層を抜けて地磁気の磁力線に沿ってプラズマ圏を伝搬し、対となる反対側の半球まで到達することが知られている(ホイッスラー現象)。

【HAARP人工地震兵器説への反論】
以前のブログで示した通りELFが花崗岩を爆発させるなど荒唐無稽だが、それでもHAARPを人工地震兵器にしたがる陰謀論者の方々の為に更なる反証を示す。

上記に示した事実からHAARPのIRIを人工地震兵器とするには以下の矛盾が生じる。

■ELFは地磁気の磁力線に沿って発生し、磁力線に沿って伝搬する。
アラスカに在るIRIでELFを照射出来る場所はIRIを通過する地磁気の磁力線上の南太平洋上の一点のみ。日本、中国、スマトラの何も狙えない。

陰謀論者の方々はHAARPを使ってELFを発生させ地球上の何処でも(少なくともアジア太平洋戦争地域別)狙って地震を起こせるとしているが、HAARPのIRIの仕組みからそれは不可能である。
他に秘密施設を作ったとしても、この仕組みは地磁気の磁力線が電離層面に対してほぼ直行する高緯度地域でのみ成立する。低中緯度地域は狙えない。

3.11を人工地震とする陰謀論者の皆さん。
HAARPでは、地球大気の外側に広がる電離層、プラズマ圏、磁気圏などの地球を取り巻き生命を支える自然の性質を理解しようと研究がなされてきました。
その中には通信妨害などの軍事技術の研究も含まれますが、多くは純粋に科学的な探究心によるものです。何故なら自然はあまりにも奥が深く、どんな天才を持ってしても理解し尽くすことは出来ません。
だからこそ科学者は日夜研究を続けています。
陰謀論者の方々には、科学万能主義を捨て、自然を畏れ、自然を理解し、正しい考えをお持ちください。