3.11人工地震陰謀説論者への贈り物 | PygmalionZのブログ

PygmalionZのブログ

ブログの説明を入力します。

【追加調査】
この記事の後にHAARPに関する米国特許文書を分析した結果を別記事として作成した。
本記事と合わせてご覧頂きたい。→ http://ameblo.jp/pygmalionz/entry-11109376351.html
------------------------------------------------------------------------

3.11人工地震陰謀説を信じて止まない人が後を絶たないので参考にと書いてみた。

人工地震陰謀説の方は、その方法論について以下の3つに分類出来る。

方法論1)HAARPと呼ばれる電磁波兵器によるもの。
方法論2)核兵器によるもの。
方法論3)原子水素による核融合反応によるもの。

各方法論は全て突っ込みどころ満載で情報量も多いので、このブログでは3回に分けて方法論別に反論を示す。

【方法論1】HAARP

3つの方法論の内で最も稚拙で失笑もの。
科学的知識を軽んずる人々の妄想。

HAARP地震兵器説論者の主張は概ね以下の通り。

■全ての物質には固有振動数というものがある。
■物質に固有振動数に相当する電磁波を照射すると共振により振動する。
■信じられないほど強い電磁波を物質に当てると共振が高じて破壊する。

中 学校の理科で共振というものはみなさん習っているはずだが、これは固体の固有振動数と同じ周波数の振動エネルギーを与えるとその固体は効率よく振動エネル ギーを吸収、保持し、長い時間その振動を持続するというもの。与えられたエネルギーが十分大きければその固体自身破壊する。この考え方は問題なし。

ここで間違えていけないのは、ここで与えられた振動エネルギーの正体である。
振動エネルギーはつまり、振動運動エネルギーである。

HAARP地震兵器説論者はガラスのコップを強いエネルギーで共振させると破壊することが出来るという。これは振動運動エネルギーの話で正しい。

ところがHAARP地震兵器説論者は振動運動エネルギーを勝手に電磁波エネルギーとすり替えて議論する。これは間違い。これを「論理の飛躍」という。

では物質に電磁波を照射するとどうなるか?
それは周波数と照射を受ける物質の組み合わせで異なる。

身近な例として電子レンジを見てみよう。
電 子レンジはマイクロ波を食材にあてて加熱する。原理は食材内部の水分にマイクロ波が吸収され、熱に変わる性質を持っているからである。これは一見水分子が マイクロ波に共振したように見えるが、これは水分子の共振ではなく、水分子が電気的偏りを持つ極性分子のため水分子同士が弱い結合状態(水素結合)にある ことによりマイクロ波が吸収され熱に変わる事による。

次にテレビのアンテナを見てみよう。
テレビのアンテナはテレビ局が発信するUHF帯と呼ばれる周波数域の電磁波(つまり電波)を受けて電気信号に変換する。
基 本原理は簡単。銅線で作ったコイルの真ん中に棒磁石を突っ込んで抜き差しするとフレミングの法則により電流が生じる。アンテナはこのコイルと同じ原理だが 異なるのは棒磁石の代わりに電磁波を利用する。電磁波は電場と磁場が交互に誘導し合うことで伝搬する。アンテナは導体なので周波数に対応した適切な長さで あれば電場と磁場の相互誘導(電磁波)から起電力を得る。放送局はこれを利用して電磁波に信号を載せて送る。テレビチューナーはここから信号を取り出し画 像や音声、文字情報などを取り出す。
この場合電磁波である電波は物質の振動ではなく起電力という形で作用する。

HAARPの正体
ではHAARPは本当に存在するのか?
HAARPとは米国で行われている電離層の研究を行うプロジェクト「The High Frequency Active Auroral Reesearch Program」の略称で実在する。
しかしながらHAARPという装置は存在しない。
このプロジェクトでは電離層に向けて高出力のHF帯の電波(陰謀論者風に言えば電磁波)を送信できるThe Ionospheric Research Instrument (IRI)と呼ばれる送信施設をアラスカに保有する。

陰謀論者はこれをHAARPという兵器だと主張する。
まずはともあれ下記のHP(英語サイト)をご一読あれ。英語に自信のない方は写真を見るだけでも如何にHAARP地震兵器説が馬鹿馬鹿しいか理解できるはず。

 HAARPのHPのURL http://www.haarp.alaska.edu/

このサイトにある巨大なアンテナ設備「HF Antenna Array」は固定式で陰謀論者が言うようなピンポイントで世界中の攻撃目標に攻撃を加えられるような高度な設備でははい。

ま してこの設備、HF帯の電波用のアンテナ群。HF帯って洋上を航海する船舶、航空機や国際放送用に短波ラジオ局が使う短波とよばれる周波帯である。これら になぜ短波が使用されるかというと、短波は電離層に反射されるため人工衛星を介することなく遠くまで電波が届くためだ。これは単に電波に過ぎない。こんな もので人工地震が起こせる筈もない。

陰謀論者は恐らく「何故この施設がアラスカの様な怪しげな場所に設置されているのだろう?米国なら砂漠がいくらでもあるのに?」と思っていることだろう。「The Core」などハリウッド映画では危険な陰謀に関する設備は大抵アラスカに作られている事になっている。

しかし、この施設をアラスカに置く理由が存在する。
このプロジェクトでは短波を使って民需および防衛利用の両面から太陽活動の電離層への影響を研究を行っている。

地 球科学に多少なりとも興味のある方らな高緯度地方の方が低緯度地方より地磁気の影響が少なくその分、太陽活動による様々な荷電粒子の影響を受けやすいとい う事実をご存じだろう。高緯度地方でオーロラが見られるのもそのためだ。だから米国内でこうした設備を造るならアラスカになるのが必然である。

この方法論に対する最も決定的かつ単純明快な最後の反論として電磁波は地殻の奥深くに達することは出来ないため24kmもの地下深くに達して人工地震を起こすなどあり得ないことを申し添えておく。

このように「HAARP地震兵器説」が如何に馬鹿げているかお分かりいただけたことと思う。

3.11を人工地震による陰謀とすることは、震災で被災された方々、福島第一原発事故で避難されている方々への冒涜であるばかりか、復興の足を引っ張る行為で許し難い。

3.11を人工地震による陰謀と言われる方々には、自然への畏敬の念を取り戻していただき、真摯に自然と向き合い未来につなげていくことを望む。

【追記】
以下のような情報が寄せられたので反論を追記する。
 陰謀論HAARP説は極超長波による地盤貫通の様です。空気や水中での減衰を考慮して石英の固有振動数に合わせるという神業…。更に彼等の論は震源近くに巨大な電場を作り逆ピエゾ効果による石英の膨張収縮らしいのですが…

HAARP地震兵器説論者の言う極超長波とはどうやら極極極超長波(ELF=Extremely Low Frequency)の事のようだ。ELFは波長の短い電波に比べて水中や地中貫通力が高いのは事実だが、ELFの波長は10000~100000km。そもそもどうやってこんな電波を作り出すというのか?

HAARP地震兵器説論者によると高出力の高周波を電離層に当てて電離層を活性化する「電離層ヒーター」というものを利用するそうだ。ここで高周波とはEHF(Extremely High Frequency;ミリ波;波長が1~10mmなのでそう呼ばれる)だそうだ。ところがミリ波は電離層には影響しない。基本的にVHF(超短波;波長1~10m)より短い波長の電波は電離層の影響を受けない。このことを利用して衛星通信、GPSなど多くの衛星システムが運用されている。またミリ波帯は電波望遠鏡で宇宙観測を行うのにも用いられる周波帯で日本でも野辺山に国立天文台のミリ波望遠鏡が設置されている。つまりミリ波は宇宙のあちこちから地球に降り注いでいる。それがどうして電離層を活性化するというのだろうか?中にはHFとEHFを高出力で同時に電離層に当てるとELFが発生すると主張する物もいるが高出力だろうが低出力だろうがEHFは電離層に作用しない。

次に、石英の逆エピゾ効果について話そう。石英は水晶またはクオーツと呼ばれ、時計やデジタル電子機器に広く利用されている。
クオーツに圧力をかけると極性が生じて電圧が生じる。その電圧はその結晶が持つ固有周波数で正確にパルスを生じる。これが圧電効果で別名エピゾ効果という。逆エピゾ効果とはこの逆の現象でクオーツに電圧をかけると結晶が持つ固有周波数で振動する現象である。
ここで重要なのは固有振動数は結晶の大きさや電圧をかけると方向で異なるという事実。陰謀論では極超長波を石英の固有周波数に合わせるそうだが、自然界に存在する石英の結晶は大きさも結晶の方向もまちまち。一体何にに合わせるのだろう?
ここまでは石英の結晶に電極をつけて直接電圧を掛けられるという仮定の元の話。電波を石英への直接照射しても逆エピゾ効果は生じない。効果を生じるには直接石英に電圧をかける必要がある。また、石英は大陸近くないに豊富に含まれ多くは深成岩である花崗岩に含まれているが、花崗岩には電波で起電力を生じるには導電体は存在しない。

ここで百歩譲ってこれまでの反論が全て誤りだったと仮定しよう。極超長波が地下深くまで届き石英が逆エピゾ効果があると仮定した場合、いったいどのような仮定を経て爆発に至るのだろうか?そもそも爆発とは急激な膨張現象を指す。逆エピゾ効果がもたらす石英という微粒子の微小な震動ではない。爆発を起こすためには結晶構造を壊してなんらかの物質が外部に放出される必要がある。仮に逆エピゾ効果の振動が高じて温度が上昇したとする。石英は573℃に達すると結晶構造が遷移し、逆エピゾ効果を失う。石英の融点は1650℃。爆発をもたらす沸点は2230℃。つまり爆発に至るよりずっと低い温度で肝心な逆エピゾ効果を失うことになる。

HAARP地震兵器説論者はExtremely(=極端に)という単語が好きらしい。Extremely High Frequencyを使ってExtremely Low Frequencyを生み出す。
HAARP地震兵器説論者は「超」、「非常に」、「信じられないほど」とか言う言葉を連発する。

結局HAARP地震兵器説陰謀論は自分でも理解していない専門用語に「超」、「非常に」、「信じられないほど」などの言葉を添えて、いかにも理解しているかの如く思わせて「論理の飛躍」を隠し、煙に巻いている。さらにたちの悪いことに彼らは自ら「論理の飛躍」が有ることに自ら気付かないまま、強引に論理を展開する。

次回は「方法論2)核兵器によるもの」について各予定です。