2025年8月13日掲載
2025年8月18日改訂・再掲載
3年ぶりに辰野町・塩尻市の矢彦・小野神社のナラガシワを訪ねた後、岡谷市の出早雄小萩神社のナラガシワを訪ねました。
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【岡谷市・出早雄小萩(いずはやおこはぎ)神社】
矢彦・小野神社同様に、扇状地に位置する神社です。
社叢は市指定天然記念物です。自然植生は半分以下です。
境内入口東側の林縁に樹高10mくらいのナラガシワが1本ありました!
やはり、ナラガシワは葉が大きくて存在感があります。1本しかないので更新は期待できません。
鳥居の両側にあるのはカジノキです。私がカジノキを見るのは2回目で、関東だとあまり見ない木です。古代から神に捧げる神木とされ、諏訪大社では神紋になっているそうです(諏訪大社にもカジノキがありました)。
自生と思われるものではケヤキが優占種で、ハルニレ・エゾエノキ・ナラガシワ・オオモミジ・イヌガヤなどが見られました。境内には多数のカエデ類に加えて、ブナ・イヌブナもありましたが、流石にこれらは植栽だと思います。
社叢の手前には水田が広がっています。ナラガシワが水田開発によって少なくなり、出早雄小萩神社は鎮守の森として守られたため、ナラガシワが残ったということを表すような光景です。
図書館で発見した「諏訪林業振興会 諏訪の巨樹・古木 神々の宿る木々 1998年」という文献によると、ナラガシワは下諏訪町・高木津島神社に1本、茅野市北山・子之社に2本生育しているそうです。
※2025年8月18日追記
下諏訪町・高木津島神社と茅野市北山・子之社のナラガシワを訪ねました。レンタサイクルは茅野駅にもありますが、岡谷駅の方が安いので、岡谷駅で借りました。
【下諏訪町・高木津島神社】
ナラガシワの巨樹が1本ありました!
幹に腐食があるものの、葉を沢山茂らせており、樹勢は良好に見えます。後継樹はありません。
境内の樹木には樹名板がつけられていました。非常に珍しく、長野県でも屈指の大きさであることもあってか、ナラガシワの延命活動が展開されているそうです。
社叢はケヤキが優占種で、ナラガシワ・エゾエノキ・ウワミズザクラ・コメツガ・スギ・ヒノキなどがありました。コメツガと表記されている木がありましたが、コメツガは亜高山帯に生えるので、標高から考えるとツガなのでは?と思いました。
茅野市北山の子之社に向かう途中、apollostation ニュー蓼科給油所の東の崖でナラガシワを1本発見しました!
1本しかありませんが、沢山結実しています!
【茅野市北山・子之社】
渋川沿いに鎮座する神社です。
川沿いに生えるナラガシワ。
境内中央部のナラガシワ。境内からだと撮影困難なため、東側から望遠で撮影しました。
境内南側の入口には、ナラガシワの巨樹がありました!
この個体は1998年時点では樹高16m・胸高周囲308cmとのことで、27年が経過した現在ではもっと大きくなっていると思います!ナラガシワは文献では2本と書かれていましたが、実際には3本ありました!後継樹は見られません。
ナラガシワの巨樹(中央)とケヤキの巨樹(右)。自生と思われる樹種はケヤキ・ハルニレ・ナラガシワ・クリ・アサダ?・コブシ・オオモミジ・キハダ・ミズキ・カツラ・トチノキ、植栽と思われる樹種はスギ・ヒノキ・カラマツ・カヤなどがありました。優占種はケヤキで、ナラガシワは3本だけですが、ケヤキに次ぐ第二優占種になっています。冷温帯の樹種も多く出現しているので、中間温帯といったところでしょう。長野県レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類(VU)のナラガシワが3本生育している上に、貴重な扇状地の自然植生で巨樹も多いので、社叢全体を天然記念物に指定しても良い気がします。
渋川沿いに河畔林があったので、子之社から東に行ってみると、ナラガシワを1本発見しました!ミズナラも混生しており、交雑種のナラミズガシワが実生から誕生する可能性があります!
さらに東に進むと、コナラ・ミズナラ・クリなどの林になりました。ナラガシワは暖地性なので、冷温帯性のミズナラが出現する標高になると、姿を見なくなると思います。
近隣の川沿いの神社も探してみましたが、ナラガシワは見つかりませんでした。
茅野市・市民の森にはナラガシワ・フモトミズナラが生育しているそうですが、時間がなくて今回は行けませんでした。
「横内斎 長野県植物分布の由来 社団法人信濃教育会出版部 1976年」という文献には、「ナラガシワは本州中部以北では裏日本(日本海側)一円に展開しながら表日本(太平洋側)に分布しない」と書かれていました。実際には太平洋側にも分布していますが、分布地点が極めて少ないので知られていないのだと思います。日本海側の分布については、石川・富山県では少ないそうですが、他では比較的普通に見られるのかもしれません。
沖積低地・扇状地の自然植生については、温暖な東海以西では常緑樹のイチイガシが林を構成しますが、やや冷涼な中部~東北では落葉樹のナラガシワ・ケヤキ・ハルニレなどの林になる印象があります。陽樹的性格が強いナラガシワは、日当たりの良い林縁で林を構成していたと思われます。
今回の調査では、子之社の社叢が一番大きな発見でした!
【おまけ】
夏の空と田園風景が美しかったので撮影しました(茅野市北山辺り)。
南西側湖岸から見た諏訪湖。諏訪湖にはナガブナ(環境省レッドリスト:情報不足(DD))という謎の魚が生息しているのも気になります。