私がこれまでに訪ねた関東周辺の主なブナ林をまとめます。ブナは深山に生える樹木ですが、本稿では比較的アクセスが良く、手軽に見られるブナ林を掲載しました。今後、新たにブナ林を訪ねた際は追記していきます。


【関東周辺のブナ林】

 関東周辺のブナの分布は以下の記事を参照されたい。

 

【日本海型ブナ林】

玉原高原・鹿俣山・尼ヶ禿山
 群馬県沼田市の標高1200~1500mに位置し、関東随一と称されるブナ林である。植生はブナ-チシマザサ群集で、ブナ平ではブナの優占度が高い。ブナ平を一周するだけでも見応えがあるが、鹿俣山・尼ヶ禿山へ至るコースにもブナ林がある。
〈アクセス〉
沼田駅からたんばらセンターハウス行きバス(土日祝運行)に乗り、終点で下車。
二次林だが、大木も点在する。
ブナ平のブナの中でも一際存在感があるマザーツリー。樹高25m・胸高直径1mくらいの大木である。
玉原高原のブナは樹皮が白っぽい。
玉原高原は日本海型気候域に属し、ここで見られるブナは大形で薄い葉をもつ「オオバブナ」と呼ばれるタイプである。
 
【太平洋型ブナ林】
筑波山
 茨城県つくば市に位置し、山頂(女体山)は標高877mである。南斜面は筑波山神社の社有林として古くから保護されてきたため、良好な自然植生が残されている。植生は山麓から標高が上がるにつれて、スダジイ林→アカガシ・モミ林→ブナ林と変化する。ブナは標高520mから出現し、700m以上で優占している。ブナとアカガシ・ウラジロガシが混生している場所もあり、北斜面ではイヌブナも生育している。
〈アクセス〉
つくば駅から筑波山シャトルバスに乗り、筑波山神社入口またはつつじヶ丘で下車。
筑波山のブナ林。林床にはアズマネザサが繁茂している。筑波山では近年の温暖化によりブナが衰退し、アカガシが優勢になってきている。
筑波山のブナは樹高が低く、横広がりの樹形で、低い所から枝分かれしている。また、筑波山のブナは紀伊半島・大台ケ原のブナと遺伝的に近いという。
 
三頭山
 東京都・山梨県の県境に位置し、山頂は標高1531mである。三頭山は江戸時代から伐採が禁じられてきており、南東・北西斜面は極相林になっている。北東・南西斜面は二次林で、幹径10cm程度のブナ若木も多数見られる。ブナが多いのは見晴小屋~山頂~ムシカリ峠~深山の路・石山の路と、山頂~鶴峠方面、山頂~ヌカザス山である。植生はブナ・イヌブナ・ミズナラ・クリなどの林である。
〈アクセス〉
都民の森から:武蔵五日市駅から都民の森行きまたは数馬行きバスに乗り、都民の森下車。
鶴峠から:上野原駅から鶴峠行きまたは小菅の湯行きバス(期間運行)に乗り、鶴峠下車。
見晴小屋(標高約1400m)を過ぎたところのブナ。東京都では奥多摩町日原川流域の標高1000~1700mにかけての山腹一帯と三頭山山頂付近に、ブナ-ツクバネウツギ群集が分布する。三頭山のブナ林は、林床にササを欠く特異なブナ林である。
深山の路にある、幹が2つに分かれたブナ。
三頭山のブナの樹皮。
鶴峠~三頭山のコースには、三頭山で最大クラスと思われるブナが存在する。

鶴寝山~大マテイ山
 山梨県小菅村・大月市に位置する。松姫峠~鶴寝山は二次林だが、鶴寝山~大マテイ山は巨樹の道と呼ばれ、ブナ・イヌブナ・ミズナラ・クリの大木が見られる。植生は三頭山と同様である。
〈アクセス〉
奥多摩駅・大月駅・猿橋駅から小菅の湯行きバスに乗り、小菅の湯下車。上野原駅から小菅の湯行きバス(期間運行)に乗り、小菅の湯下車。松姫峠行きバスは2023年で運行終了となった。
山沢入りのヌタ~大マテイ山にあるブナの大木。幹径90cm・樹高25mくらいあり、鶴寝山~大マテイ山で最大と思われる個体である。

ブナは大木だけでなく、幹径10cm以下の若木も多数見られる。


大菩薩嶺
 山梨県甲州市に位置する。裂石~上日川峠ではブナの優占度が高く、「大菩薩のブナ林」としてやまなしの森林100選に選ばれている。この区間のブナは幹径30~50cm程度の個体が多く、イヌブナ・ミズナラ・クリなどと混生していて、二次林から極相林への移行途中と思われる。また、幹径10cm以下のブナ若木も多い。植生や更新度合は奥多摩や小菅と同様である。上日川峠のバリアフリー歩道でもブナ・ミズナラ林が見られるエリアがある。
 裂石~丸川峠では上日川峠側と比べるとブナの優占度は低いが、大木が見られる。
〈アクセス〉
甲斐大和駅から上日川峠行きバス(季節運行)に乗り、上日川峠下車。塩山駅から落合行きまたは大菩薩の湯行きバスに乗り、大菩薩峠登山口下車。
裂石~上日川峠のブナ林。道路からもブナが見られる。

天城山
 静岡県伊豆市・東伊豆町に位置する。ブナが見られるのは天城峠・水生地下~八丁池~万三郎岳~四辻であり、八丁池側には大木が多い。八丁池とその周辺、戸塚峠~小岳~万三郎岳~万二郎岳のブナ林は国指定特別保護地区に指定されている。植生はブナ・ヒメシャラ・アセビなどの林である。天城山では年間3000ミリもの降雨があり、湿潤な環境を好むブナの生育に適している。
〈アクセス〉
修善寺駅または河津駅からバスに乗り、天城峠または水生地下で下車。修善寺駅から八丁池口行きバス(季節運行)に乗り、終点下車。
天城峠(標高約830m)辺りでは、ブナとアカガシが混生している。
1990年代の天城山系は林床にスズタケが密生していたというが、現在はニホンジカの増加に伴う食害で面影すらなくなっている。ブナの稚樹や若木も殆ど見られない。
天城山系のブナは、樹皮に苔が多いのが特徴である。
天城峠・水生地下~八丁池では登山道が不明瞭な箇所が幾つかあり、登山アプリで道を確認することを推奨する。

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