2021年11月9日掲載
2025年9月24日改訂・再掲載
今秋も碓氷峠のナラガシワを見に行きました。
昨秋は熊ノ平→横川駅を歩きましたが、今回は横川駅→麻苧(あさお)の滝→碓氷湖を歩きます。
【麻苧の滝自然公園周辺】
川沿いにナラガシワが幾つか生えています。標高約380mです。公園内には上流側と下流側に1本ずつ橋が設けられています。
下流側の橋の右岸にあるナラガシワの成木。樹皮はやや剥がれます(2025年9月23日撮影)。
上流側の橋の右岸林縁にあるナラガシワの成木。この奥の林縁にもナラガシワの成木が1本ありますが、光を求めて歪な樹形になっている上に、蔓性植物に覆われています(2025年9月23日撮影)。
ここでもハルニレが生えています。ハルニレ・ケヤキは、東日本のナラガシワ自生地には必ずと言って良いほど出現します(2025年9月23日撮影)。
上流側右岸林縁のナラガシワ。右岸の林ではコナラが優占で、ナラガシワ・クリ・シデ類・ホオノキ・ケヤキ・ハルニレ・ネムノキ・イタヤカエデ・キハダ・ミズキなどが見られました。登山コースにもナラガシワがあるかもしれませんが、急勾配である上に、ヒルが多いそうなので行きませんでした。
2025年は結実しているので、並作以上にはなるかもしれません(2025年9月23日撮影)。
上流側左岸に生える2本のナラガシワの若木。左岸では河道内やスギ林の林縁にナラガシワが生育しています。
2025年9月23日撮影。
1つ前の写真の右側の個体の葉。ナラガシワにしては鋸歯が浅く、変わった形をしています(2025年9月23日撮影)。
左岸の人工林の林縁に生えるナラガシワの若木(2025年9月23日撮影)。
碓氷川に架かる橋付近に生えるナラガシワの若木の葉。葉はコナラの2倍くらいの大きさで、枝も太いです。
碓氷川に架かる橋付近に生える個体。この個体の葉は、典型的なナラガシワといった形をしています。どんぐりは大粒で細長く、滋賀県以東で見られるタイプです(2025年9月23日撮影)。
麻苧の滝自然公園周辺では、ナラガシワは上流側左岸に成木1本・若木4本、上流側の橋の右岸に成木3本、下流側の橋の右岸に成木1本・若木2本、その下流の右岸に若木1本の計12本ありました。ナラ枯れが心配でしたが、2025年9月時点では被害は見られませんでした。
【アプトの道】
アプトの道(旧信越本線)は霧積川に沿って敷設されています。ナラガシワは峠の湯(標高約500m)辺りまで優占しています。
スギ人工林が多いものの、僅かに残された天然林ではナラガシワが優占種となり、コナラ・ケヤキなどが混生しています。ナラガシワは沢沿いの林縁や急斜面に生育していました。
拡大して見ると、細長いどんぐりが成っているのがわかります。
コナラは場所を問わず広く出現しますが、ナラガシワの生育地点は明るく開けた場所に限定されていました。そのため、コナラよりも陽光を求めるようです。
谷底に生えるナラガシワ。個体数は多いものの、遊歩道から離れた場所に生育している個体が多いです。
沢沿いの崖に生えるナラガシワ(2024年10月26日撮影)。
【碓氷湖】
碓氷川を堰き止めて造った人造湖です。碓氷湖(標高約520m)ではナラガシワがミズナラ・イヌブナと同所的に生育しており、ミズナラ・イヌブナは碓氷湖が生育下限となります。ナラガシワの生育上限はめがね橋(標高約580m)です。横川駅(標高約390m)から歩くと、ナラガシワ・コナラ林→コナラ・ミズナラ林と植生が変化していきます。
低い所はスギ人工林ですが、上の方はコナラが優占する天然林で紅葉が進んでいます。
碓氷湖にはナラガシワが1本あり、見事に枝を伸ばした大木です。樹高12m・幹径70cmくらいです。
ナラガシワは陽光を求めて歪な樹形になっていることが多いです。
帰りは碓氷湖から中山道を歩きましたが、中山道沿いのスギ林の林縁にもナラガシワが点在しました。関東では稀なナラガシワが碓氷峠では何故多いのか謎です。
群馬県レッドリスト(2022年改訂版)にナラガシワが新規掲載され、絶滅危惧ⅠA類となりました。しかし、碓氷峠にこれだけの数があるので、碓氷峠の自生地が知られていない可能性があります。
※2024年10月29日追記
小根山森林公園にもナラガシワがあるという情報がありましたが、見つけることはできませんでした。園内は植栽された樹木が多いですが、「やしろの森」では天然林が残されており、そこにはカシワが優占しているエリアがありました。現地の説明板によると、藩政時代に馬の産地であった小根山一帯は草刈場として良い草を育てるために山焼きが行われていたと考えられ、明治37年(1904年)に林業試験地として開設された当時の林は、火の影響を受けたコナラ・カシワ・クリを主とする二次林であったようです。カシワも関東では珍しいので、思わぬ発見でした。