- 子平の財と皆財論 (命)-

 (季刊「五術」平成13年3月号から抜粋)

 

人間の三大欲望は、「財・禄(官・権)・寿」とされています。

これは何人といえども望まない者はなく、しかも希望がなかなか成就できないものなのです。この三大欲望については一般社会の学問も常識もさけているか、ありきたりの修養論まがいに逃げています。

努力・修養・学問などは冷静に考えますとこの三大欲望に関してはまったくカラマワリの論にすぎませんし、これで人間の欲望がかなえられるなどとは何人も信じていないはずです。まして、現今のようにきびしい社会現象を呈している時、いかに無役なものかがはっきりしています。

努力などで成敗がきまるなら何人もしますし、現に二十代の男女がいっせいに四月に社会に出た時の、涙ぐましい努力、中年の男性の独立願望 ―― などをみても、いかに努力などというバカげた熟語が空虚なものかわかると思います。修養などにいたっては百害あって一利なしの机上の空論にすぎません。学問も、よい学校を出た人のみが成功するものではない事は衆知の事実です。

こうした事に対して我が五術は明確に答えを出し、しかもその実行法を説いているからすばらしいのです。

五術の中でこの ―― 「財」について具体的に述べているものには、子平推命術と奇門遁甲術の二大占術があります。

奇門遁甲ではこの「財」を迫力と競争の二点から財を得る方法を説いています。いかに人間が迫力をつけるか!そして他よりいかに一歩先んずるか!という事です。ここまで書きますと、前の努力修養論と同じではないか、と思われるでしょうが、そうではありません。

具体的に、いかに人間に迫力をつけ財にむすびつけるか、という点を十干の中から「丙火・甲木」をとりだして用いる方法を説いているのです。

競争も他と競うのではなく、他がだめになるから、自分が勝つ、という道徳を排した実践的占術感に立ったものなのです。具体的方法として遁甲行軍三奇・甲尊丙奇造作法 ――など。

子平推命術では、「財」を個人の先天的に所有している財に関する宿命と、それをいかに応用するか、の二点から究明していくのです。

生年月日の八字の中で、おのれが剋するものを「財」としています。ここは遁甲と同じく他を制する迫力が財なのだ、という感覚です。

子平ではさらにこの迫力の財を個人差でもって究明していきます。喜神財と忌神財です。それは財が迫力だとしても万人に迫力がよいというものでもなければ、迫力のみで財につながるものでもありません。そのため、迫力を喜忌の財としてわけたのです。さらに、この喜忌の財が命中八字に有る命、無い命とわかれます。

無い命は行運でいつくるか?来た時に命中に、どう作用するか?

有る命はその財(喜忌)がどこにあるか?年柱・月柱・時柱によって非常にちがってきます。

その有る財に対して他干がどう作用するか?

行運でその有る財にどんな作用をするか?

以上、あげだしたらきりがないくらい子平術では「財」に関して究明していく方法があるのです。これを自己の命にあわせますと、何人といえども「身分(宿命)相応の財が得られる」という結論になるわけです。