前の車が起こした風が道端のかさかさ落ち葉をくるくると舞い上げた。

(わぁ! つむじ風だぁ!)

小春日和の午後、ふと君のあげた笑い声を聞いたような気がした。

秋が深まり、車を走らせている渓谷沿いの道は黄や赤に色づいている。

 

 ※

 

 

 

(ストーップ! 綺麗だね! 写真撮ろうよ)

君のリクエストで路肩に車を寄せた。

立派な公孫樹の樹とその傍らにほっそりとした紅葉の樹。

黄色と深紅を競うように紅葉させていた。

 

 

(また来ようね)

写真を撮り終えて車戻ると、助手席から弾んだ君の声がした。

その唇が、紅葉する樹々よりも更に艶やかに色づいている。

溜らず抱き寄せて、紅を貪る。

 

 ※

 

「くそったれ!」

一人、愛車のボンネットに腰かけ、目の前の去年と変わらず艶やかにペアで紅葉する公孫樹と紅葉に思いっきり毒づく。

もういない君を追いかけるとか、まったく、我ながら、何やってんだか――