あなたは魂の転生を信じるだろうか?

 

信じようが信じまいが、それは確かに存在する。
なぜなら、私がここにいて、それを司っているから。

 

なに?
最初の生物の魂は転生してきようがないじゃないか?

 

残念だが、そんなことは私の知ったことではない。
なぜなら、私の管轄は眼前の対象の今世と来世だけであって、それ以外のいかなる過去も未来も知らないからだ。

 

やってきた魂を審判し、転生させる。
それが私のたった一つの使命であり、始まりも終わりもない全てなのだ。

 

 ※

 

さて、またひとつ転生を迎えようとする魂がやって来た。
前世は平凡なサラリーマンで、他の生命を著しく不当に害した罪もない。

 

「あなたには二つの選択肢がある」
すぐに転生させて構わないとの判断を私は下した。

 

そうすると私の中に、ふたつの選択肢が湧き上がる。なぜ、そんなものが浮かんでくるのか、私には分からない。
分からないが、私の存在とはそうしたものであり、そのことに意味や理屈をつける必要はなかった。

 

「ひとつは、人間。もう一つは馬。さあ、どちらを選ぶ?」
特に人間から他種へ転生させる必要はないように思えたが、大きなペナルティーのない人間であっても次は人間よりも他の生物を望む例はない訳ではない。

人間として生きていくことに心底疲れてしまった魂というものも、それなりに存在するのだ。

 

「……あの? 男でしょうか? それとも女?」
しばらく躊躇した後で、魂はそう尋ねてきた。

 

「人間の場合でも、馬の場合でも、雄になる」
詳しいことまでは教えられないが、性別ぐらいは教えても差し支えなかった。

 

「……では、馬の方で」
そう答えが返ってきた。

どうやら目の前の魂は、何か男として余程辛い人生を送ってきたようだった。

 

「本当に、それでいいのか?」
一応確認をとる。

 

「はい、是非そちらで」
だが、眼前の魂はそう迷いのない返事を返してきた。

 

「では、行け」
私が手を一振りすると、魂は私の眼前から消え去り、まさに出産しようとしているサラブレッドの胎内に無事に宿った。

 

 ※

 

「……ふむ、気の毒に」
先ほどの魂がなぜ馬の方を選んだのかに不思議と興味を引かれて、その前世を精査してみると、男性自身が小指の先ほどの大きさしかなくて、随分と侘しい一生を送ったことが分かった。
どうせ雄として生まれるなら、「馬並み」にと考えたのも止む得ないのかも知れない。

 

しかしながら、先ほどの魂は、今度のサイクルもどうもついていないようだった。
確かに、馬であるに相応しい得物は授かるのだが、サラブレッドとして産まれた彼は満足な成績を残せず、牝馬に発情を促すだけの当て馬として、折角の持ち物も使うことの出来ぬままの辛い余生を過ごすはめになる。

 

さて、ものが役に立たずに男として認められないのと、役に立つものがあるのに横目で見ることしか出来ないのとではどちらがより辛いのだろうか?