すぅっ、と風が吹き抜けていく。

見渡す限りのコスモスが通り過ぎていく風に挨拶するかのように頭を揺らせる。

 

ほんの先日まであんなに暑かったというのに、往く風は随分と涼やかで時に肌寒くすらある。

色とりどりのコスモスの花を見ながら、小さく「ふぅっ」とため息をつく。

 

白いコスモスの花言葉は「乙女の純潔」だという。

まっさらなキャンパスのように描き手が現われるのを待ちわびる。

恋に恋焦がれる。

 

赤いコスモスは「愛情」だという。

ようやく現われた描き手に染められて色づいていく。

何も知らない純な白から、期待に萌えるピンクの頃を経て、真っ赤な愛情の花を開かせる。

世界のすべてが赤に染まる。

 

黒いコスモスは「恋の終わり」だという。

チョコレートに似た甘い香りが、痛い。

本当なら隣にいるはずだった誰かがいないのが、ひどく寂しい。

 

すぅっ、とコスモス畑を風が吹き抜けて、甘い香りを散らせていく。

少し肌寒いくらいの涼風は思いのほか心地よかった。