梅雨が明けて、突き抜けるような青空が広がった7月16日。校内はすっかり夏休みの浮き足立った空気に包まれていた。
夏川七海《ナツカワ ナナミ》は、理科室の掃除中に『赤い石』を見つけた。
人体模型の足元に転がっていたその石は、まるで血を固めたように真っ赤だった。
何気なくそれを拾い上げた瞬間、低く響くような声が、頭の中に響いた。
『この石を拾った者は、七日以内に七色の石を全て集めよ。さすれば汝《ナンジ》の願いが叶うだろう。石は、学校の七不思議と関係の深い場所にある』
周囲を見回すが、誰もいない。いたずらにしては、声の響き方が異常だった。
七海の手の中で、赤い石がかすかに熱を帯びた気がした。
(願いが、叶う?)
そのとき七海の脳裏に浮かんだのは、先月から入院している親友の顔だった。原因不明で対症療法しかなく、このままでは二学期を迎えられないと言われていた。
七海は、一縷《イチル》の望みに賭けて、石をポケットに突っ込んだ。
――
音楽室のピアノの中で橙色《ダイダイイロ》の石を、図書室の古い書架の中で黄色の石を見つけた。
さらに、校庭の桜の木の根元で緑色の石を、使われなくなったプールの入り口で青い石を拾った。
そして、使われなくなった倉庫の裏で藍色《アイイロ》の石を手に入れた。
手に入る石が増えるたび、ポケットの中でそれらは互いに共鳴するように、静かな光を放ち始めていた。
残る石は、あと一つ。
屋上に向かう階段で、紫色の石を見つけた。
その時、屋上に続く扉の鍵がガチャリと開いた。
七海は屋上に出ると、七つの石を屋上に並べた。
「いでよ、シェン……」
七海の言葉を遮るように、七つの石が激しく熱を持ち、眩い光を放ち始めた。
そして、鮮やかな七色の光が天高く突き抜け、空に大きな虹がかかった。
『願いを、言え』
あの日に聞いたあの声が、優しく響いた。
七海は、声の限りに叫んだ。
「親友の病気を治して! また、一緒に学校に行きたい!」
その瞬間、視界が真っ白に染まった。
あたたかな風が吹き抜け、気がついたときには、空の虹も七つの石も綺麗に消え去っていた。
――
夏休みに入った7月23日。
七海は親友が入院している病院を訪れていた。
「あ、七海!」
ベッドの上で身体を起こした親友が、パッと顔を輝かせた。
石を集め始める前に面会に来たときは顔色も悪く起き上がることすら難しかったのに、今日の彼女はとても元気そうだった。
「見て七海! 私、自分でちゃんと座れるようになったんだよ!」
「体調は? 苦しくない?」
「うん。検査の数値が良くなったって。もうすぐ退院の許可も出そうなんだ!」
弾むような親友の声を聞きながら、七海は込み上げてくる涙を必死に堪え、満面の笑みを返した。
「うん! 二学期には、一緒に学校に行こうね」
窓の外には、どこまでも続く夏の青空が広がっていた。もうそこに虹は架かっていないけれど、あの虹よりも鮮やかな希望が、七海の胸にずっと輝き続けていた。
夏川七海《ナツカワ ナナミ》は、理科室の掃除中に『赤い石』を見つけた。
人体模型の足元に転がっていたその石は、まるで血を固めたように真っ赤だった。
何気なくそれを拾い上げた瞬間、低く響くような声が、頭の中に響いた。
『この石を拾った者は、七日以内に七色の石を全て集めよ。さすれば汝《ナンジ》の願いが叶うだろう。石は、学校の七不思議と関係の深い場所にある』
周囲を見回すが、誰もいない。いたずらにしては、声の響き方が異常だった。
七海の手の中で、赤い石がかすかに熱を帯びた気がした。
(願いが、叶う?)
そのとき七海の脳裏に浮かんだのは、先月から入院している親友の顔だった。原因不明で対症療法しかなく、このままでは二学期を迎えられないと言われていた。
七海は、一縷《イチル》の望みに賭けて、石をポケットに突っ込んだ。
――
音楽室のピアノの中で橙色《ダイダイイロ》の石を、図書室の古い書架の中で黄色の石を見つけた。
さらに、校庭の桜の木の根元で緑色の石を、使われなくなったプールの入り口で青い石を拾った。
そして、使われなくなった倉庫の裏で藍色《アイイロ》の石を手に入れた。
手に入る石が増えるたび、ポケットの中でそれらは互いに共鳴するように、静かな光を放ち始めていた。
残る石は、あと一つ。
屋上に向かう階段で、紫色の石を見つけた。
その時、屋上に続く扉の鍵がガチャリと開いた。
七海は屋上に出ると、七つの石を屋上に並べた。
「いでよ、シェン……」
七海の言葉を遮るように、七つの石が激しく熱を持ち、眩い光を放ち始めた。
そして、鮮やかな七色の光が天高く突き抜け、空に大きな虹がかかった。
『願いを、言え』
あの日に聞いたあの声が、優しく響いた。
七海は、声の限りに叫んだ。
「親友の病気を治して! また、一緒に学校に行きたい!」
その瞬間、視界が真っ白に染まった。
あたたかな風が吹き抜け、気がついたときには、空の虹も七つの石も綺麗に消え去っていた。
――
夏休みに入った7月23日。
七海は親友が入院している病院を訪れていた。
「あ、七海!」
ベッドの上で身体を起こした親友が、パッと顔を輝かせた。
石を集め始める前に面会に来たときは顔色も悪く起き上がることすら難しかったのに、今日の彼女はとても元気そうだった。
「見て七海! 私、自分でちゃんと座れるようになったんだよ!」
「体調は? 苦しくない?」
「うん。検査の数値が良くなったって。もうすぐ退院の許可も出そうなんだ!」
弾むような親友の声を聞きながら、七海は込み上げてくる涙を必死に堪え、満面の笑みを返した。
「うん! 二学期には、一緒に学校に行こうね」
窓の外には、どこまでも続く夏の青空が広がっていた。もうそこに虹は架かっていないけれど、あの虹よりも鮮やかな希望が、七海の胸にずっと輝き続けていた。