・メモ
出版当時文学部の教授だった、斎藤氏(英語)、野崎氏(仏語)による語学に関する様々なトピックス。私にはとりわけ翻訳に関する箇所が面白かった。西洋古典学の場合、原本があって、それを辞書に加え、各国語訳、commentary
を参考にしつつ自分の訳を作っていくことが通常だが、これは一般的ではないことが面白かった。いくつかの翻訳を比べつつ訳を完成させるというプロセスの存在は一般的ではないということか。
また語学に関しては、達人であればあるほど自分の限界を知り、謙虚になっていくのに比べ、そこそこの技量しかない人がかえって強気になって問題を起こすことがあるそうだ。理系が専門であるにも関わらず文系の先生の書かれた英文をわざわざ添削したり(当然改悪であるw)、議論の中でわざと英語で発言したり(what do you think about thatとか)してなかなか悩まされたことがあったそうな。確かに英語ができるようになると一瞬全知全能になったように錯覚する瞬間がある。この人の場合は自分の話す英語が限られた世界の中の英語(表現)であることに気が付かず、自分が英語最強だと思ったということなのかな。
私の場合は英検1級を取った段階でもうやることはないなと思ったが、むしろここからが本当の勉強の開始であることを思い知らされるのにはほとんど時間はかからなかった。やはり語学に限らず学問に打ち込む場合は自分の実力を知り謙虚に取り組まないとw
また、翻訳に関しては逐語訳、翻訳、総合訳みたいな段階があり、逐語訳の後に翻訳者独自の表現による訳があり、最終段階になると元の言語で書かれた表現がうまく日本語に融合する形で表現された形になるといったような表現があり、これには納得するところが大きかった。多分最終段階の総合訳?を柳瀬尚紀先生は目指していたのではないかと思う。西洋古典学の翻訳者の方々には極力逐語訳に近い翻訳をお願いしたいw
あと、本書の前半で数限りない語学の猛者たちが紹介されているが、こんな人たちがいたのかと唖然としてしまう。すごいw
[英語のたくらみ、フランス語のたわむれ/¥2,090]
[斎藤兆史、野崎歓著/東京大学出版会(2004/4/20)]
[218p/4-13-083039-2]
[英語、フランス語、語学学習、読書、誤解、読書不足、翻訳からの翻訳、文学鑑賞、文学評論]
[@UT_Press]
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[単行本][自][050][kv 00][bb 04][mt 030]
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