2013年春
10年前の春、上司が替わり、その頃から次のステップで何をするかを問われるようになってきた。50代半ばの管理職にとっては世間的には人事的に珍しい話ではないのだが、当時の私にとっては自分の能力を否定されたようで大きなショックを受けた。
新らしい仕事を模索する手もあったが、個人的には適当に過ごしてしまった大学・大学院時代に悔いが残り、もう一度1から勉強してみたいという気持ちが強くなった。当初は物理学を基礎からやり直したいと思い、大学を模索してみたが、教養からやるのはしんどいと考えていたところ、3年次編入の学士入学という制度があることを知った。ただ、当時は母校の東工大も東大も物理学科は諸般の都合で進学は難しかったと思う。
そんな中で東大のサイトを見ていると文学部にも学士入学という手があることを知った。そういえば趣味でずっと語学を続けていてラテン語も学んでいたので大学でラテン語を勉強する手もあるかなとふと思ったのをきっかけに東京大学文学部の人文学科西洋古典学専修を目指すことにした。正式に決めたのは2013年7月初頭だったと思う。
7月の下旬には本郷に学士入学の説明会に参加した。話をしてくれたのは当時の西洋古典学の先生だった葛西教授だった。2時間の中で西洋古典の魅力をたっぷり伺い、学士入学の思いは募った。
その後は企業での業務を続けながら、英語は以前からやっていたTIMEの各号全ページ読破、フランス語は何冊か参考書を読みながら、ラテン語についてはほとんど手付かずな形でw 勉強を続けた。
2014年冬
英仏の勉強は続けていたものの、ラテン語については停滞気味、古典ギリシア語についてはほとんど手付かずのままテスト当日を迎えてしまった。試験の受験科目さえもきちんと把握していなかったためこれでは受かるはずないとたかを括っていたので、気分的にはかなりの余裕があった。とりあえず古典ギリシア語については、当日試験会場で教科書をチラッと見ればいいかな的なノリで本郷3丁目についたが肝心の教科書を忘れてしまい
古典ギリシア語についてはほぼ丸腰のまま試験に臨んだ。
意外なことに英語、仏語とも割と簡単なので拍子抜けしたが、小論文は何を書いていいか分からず苦戦し、専門の問題についてはラテン語、古典ギリシア語は問われなかったものの、設問が難しく当時は専門書もあまり読んでいなかったので書いては見たものの合格の可能性はゼロだと諦めた。
一時合格発表の日。この日は珍しく東京は大雪。この日はどう見てどういう道順で帰ってくるかまで決めていた。正門から入って法文2号館の掲示板を横目で見て不合格を確認し赤門から帰るという非常にコンパクトなパスだ。ところが掲示板を見てみると自分の受験番号が。。。余りの意外さに茫然自失となり思わず雪がすっぽり積もった安田講堂前をあてもなくふらついてしまったw 気を取り直して受けとった書類を見ると午後から面接とあるが何も準備していない。とりあえず当たって砕けるかw
午後一時からの面接、私は2人いた合格者の2番目だったので二時前からの面接だった。葛西教授との面接は穏やかに進み、よほど人間的におかしくない限りは一次合格者が二次面接で落ちることはないとのことだった。
2014年2月下旬
再び本郷を訪れる。次年度の合格者に自分の受験番号を確認。しかし実は諸般の事情により、今回はもし合格したとしても進学はせず会社員を続けるということは筆記試験を受ける前に決まっていた。なので折角の学士入学試験合格という事実も喜び半といった感じだった。
次の受験機会は還暦の60を過ぎた時になる。今度は辞退の心配はないが果たして知力が受験に耐えられるだろうか。ということで学士入学の件は一旦凍結し6年後に再挑戦することになった。
第1回、第2回の学士入学試験受験の話は以下にまとめています。