・メモ

MJGで行われたトッド・ラングレンの特集、それも初期のトッドラングレンズ・ユートピア時代に焦点を当てた特集ということで今回も参加してきた。講演者の梅村氏はザッパ 関連のMJGでのライブで司会を務められた方だが、今回はトッドの特集の講演者という形で登場された。ちなみに梅村氏によれば、ザッパ については秒単位!で把握したい、トッドについてはそれほどでもないwそうだ。

 

今回は3時間近くにも及んだ長丁場で、盛り込まれた内容もかなり盛り沢山だった。もっとも梅村氏によれば言いたいことの半分も言えてないそうだw これは続編、あるな。

 

今回の講演、上にも書いたように内容が多岐に渡るため、きちんと再現することは無理そう、ということでいつものように断片的なトピックスを以下にまとめる。

 

トッドとプリンス、実はこの2人には共通点が多いそうだ。二人ともマルチプレーヤで何でも一人でできてしまうこと、ユートピアとレボリューション、アーティスト本人とバンドとの関係、多作品と、なるほど言われてみればそうだ。プリンスがレコード会社と契約したのもトッドが好きなようにやらせてもらっているのを見て、自分も自由にできると思ったことが決め手になったそうだ。

 

トッドの初期の作品群のデザインはアメリカのプッシュピン・スタジオの手によるものだという。結構有名らしいが私は知らないw

 

ザッパ の代表作、hot ratsのジャケットに写っている女性、ミス・クリスティーンは実はトッドのガール・フレンドだったという。知り合うきっかけは、トッドのバンドrunt(utopiaの前身)のメンバーだったsales兄弟が、ザッパ がプロデュースしたグルーピーユニットGTO'sにも関わっており、そのメンバーがミス・クリスティーンだったという。トッドがスパークスのプロデュースをすることになったきっかけは実は、ミス・クリスティーンがトッドに聴くことを熱心に勧めたためだという。ちなみにこのスパークスのアルバムを聴いていると、初期のロキシー・ミュージックのサウンドに極めて近い感じだ。

 

トッドのバンド、ユートピアだが、そもそもはsomething/anythingでヒット曲を出したトッドにライブもやろうという話になり、runtのメンバー中心で始めたのがきっかけだったらしい。しかし最初のツアーは大失敗しw そこからメンバーを大幅に入れ替え、メンバーとしてムーギー・クリングマンと彼の仲間が加わることでユートピアが実体として存在することになったらしい。この仲間の中には、ベースのジョン・シーグラーやキーボードのラルフ・シュケットらが含まれている。ムーギーらは腕利きのスタジオ・ミュージシャンだったという。なるほど、6人編成時代のユートピアの楽曲を聴くとかなり曲の完成度が高い。

 

その後ロジャー・パウエルやジョン・ウィルコックスが加わることになる。私たちが知っているユートピアの4人体制になっても当初はベースをジョン・シーグラーが弾いていて、その体制が半年続いた後、あのカジム・サルタンが加わって、ユートピアがFIXすることになった。

 

ちなみに私が観た79年の厚生年金でのライブはCD化されているらしい。これは聴かねばw このライブ、FM東京のゴールデン・ライブステージで放送されたが、"i saw the light"の演奏は、熱心なファンのリクエストで実現したものだという。その熱心なファンの方本人!が今回の観客の中にいらした。その方、76年の最初のライブからずっとライブを観ているらしい。凄いw

 

話をムーギー・クリングマンに戻すと、彼がトッドと出会ったのはザッパ のライブ(リハーサル?)だったという。そして二人で数々の名作を作り出したsecret soundスタジオをほぼ手作りで作ったらしい。しかしこのスタジオで作られた作品群、音質は極めてよくない(^_^;) その原因の一つはトッドが演奏よりも楽曲の質に重点を置き、演奏のクオリティに拘らなかったのも原因らしい。

 

トッドは父親との関係が極めて悪く、このことが彼の人となりに大きく影響している。また、学校でも孤立していた。ただ楽器の習得能力は極めて高くそれが彼を救うことになる。そして彼はものすごく楽天家なのだという。この辺りの複雑な性格が彼の作品にも大きく影響している。彼の完璧主義、一人で何でもやる姿勢、正しいことを追求するという姿勢はこの70年代の彼の行動を読み取る上でかなりのキーになる。

 

彼が最初にはまったのがいわゆるドラッグだった。なる程 a wizard/ a true starを改めて体験してみると、アルバムのデザイン、曲の音質、構成にドラッグの影響を非常に感じることができる。中でも歪んだ音質、モヤのかかったような曲の感じは彼のドラッグ体験が如実に反映されたものに感じる。

 

そして次に彼の心を捉えたのが神秘主義だった。彼が貪り読んだブラヴァッキーやシュタイナー、アリス・ベイリーの著作の影響がトッドの作品に如実に現れている。その代表作が未来神(initiation)だ。その影響は作品のタイトルにも如実に現れている。

 

そして最後にはまったのが宗教、それもいろんな宗教、1つに絞らないところが非常に面白い。

 

この講演会の後半ではユートピアのアナザー・ライブを中心に話が進んだが、このユートピア、音的にはマハヴィシヌ・オーケストラとかイエスを目指したものらしい。

 

メンバーは腕利きのスタジオ・ミュージシャン達なので高度な演奏はお手のもので、非常にレベルの高い演奏をこなしている。曲の構成として各メンバーのソロパートを盛り込む形にしているので1曲が長くなる傾向があったらしい。このスマートな演奏、私にはジャズミュージシャン達が高度な演奏技術を駆使して耳障りの良い楽曲を提供していったクロスオーバー、フュージョンの成り立ちを思い出させた。

 

トッドがプロデュースしたホール&オーツのウォーベイビーズだが、私の記憶ではこの作品の後、ダリル・ホールがトッドの歌唱を極端に真似るようになったと読んだ記憶がある。なる程、この作品でのダリル・ホールの歌唱はトッドの歌い方とそっくりだ。だが待てよ、余りに似過ぎでいるぞ???梅村氏によると歌い方に影響を受けたのは実はトッドの方だという。そうか初期の甘い歌声からエモーショナルな歌声に変わったのは実はトッドの方なんだということが改めて判った。ただし、ホール&オーツの代表曲"wait for me"はまるでトッドが作りそうな楽曲であり、このLPにおいてトッドは歌唱力を、ダリルは作曲能力をお互いに吸収することになったというのが本当のところなんだと思う。

 

そしてこの講演会の最後の楽曲は"just one victory"。実はこの曲、アナザー・ライブのジャケットにこの曲を見つけた私は是非この曲をかけて欲しいと梅村氏にお願いしたのだが、これはあとでやりますからと微笑まれ、それではと、じっと待っていたのだった。この曲は本当にいいなぁ。

 

・画像および楽曲

☆第1部

 

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