・メモ

レオ・ドゥヴニヤック、無法者の父から悪の教育を授けられ、反発しながらも頭脳明晰、抜群の行動力を持つ立派な悪人に育つ。2人の弟を巻き込んで起こした強盗事件は、ヨン・ブロンクス警部によって解決され、レオは弟、父共々刑に服することになる。これがこれまでの話だ→熊と踊れ。

 

刑期を終えたレオは、再び大胆な犯罪を計画する。パートナーに選んだのは刑務所内で知り合った父殺しの罪で服役していたブロンクス警部の兄、サム・ラーシェンだった。レオがサムを使って起こした強盗事件、その調査の過程でヤンはレオとサムとの関係に気づき愕然とする。

 

レオは次の事件現場からヨンを引き離すため、かつてのアジトに以前の事件の重要な証拠となる武器をわざと晒し、架空の取引があると見せかけヨンを引きつける。これに成功したレオは以前の事件で証拠として押収されていた紙幣が廃棄される一歩手前で警官に変装し盗み出す。

 

全てがうまくいき、後はスエーデンを出る船を待つだけの段階にこぎつけたレオとサムだったが、かつてのアジトに仕掛けたカメラを見たときに、ヨンといっしょに映っていたのは更正した弟のヴィンセントだった。レオに兄サムを共犯者として持っていかれたヨンが、今度はレオの弟ヴィンセントを人質に取り逆襲に転じる。アジトにもどったレオはヨンと対決するがこの場は悲劇的な結末で幕を閉じる。

 

なんとも後味が悪い展開であり、最後は結論を語ることなくレオの子供の頃に起こした事件の回想で終わる。非常にシャープな頭脳を持ちながら最後にはいつも弟たちを巻き込んでしまうレオ、反発しながらもなんとか兄サムを罪から逃れさせようとするヨン、自分勝手な家族の絆という言葉の元にレオを何度も犯罪に走らせてしまう父イヴァン、血ということばを考えさせられる作品だ。

 

繰り返しになるが後味は極めて悪い。

 

[兄弟の血 上、下/946円]

[アンデシュ・ルースルンド、ステファン・トゥンベリ、ヘレンハルメ美穂、鵜田良枝訳/早川書房(2018/9/25)]

[390p,396p/978-415-182156-1,978-4-15-182157-8

[レオ、フェリックス、ヴィンセント、ヨン・ブロンクス、サム・ラーシェン、エリサ・クエスタ、復讐、兄と弟、血、探り合い、罠の掛け合い、レオの誤算、ヨンの逆襲、ヴィンセントの運命、父イヴァンの身勝手]

[早川ミステリ文庫 HM439-6,7][初店][0066,7]