・演奏
今回のメインは1曲目のフリー・インプロヴィゼーションの楽曲、これがかなり興味深い楽曲だった。静かな展開からヴォイスがしっかりと言葉を語り始める。そこから静かな調べをヴァイオリンが紡ぎ始める。メロディはなんだか寂しいと言うか悲しみを感じさせるものだ。
そのうちにリズムボックスを使ったようなリズムを利用してその上で太田氏のヴァイオリンが自在なメロディを押し出し始める。その後、太田氏は小さなメガフォンを使って再びヴォイスを繰り出す。曲調はアジアの大地の香りからいつの間にかリズム&ブルース的なものに切り替わって行く。
その展開のあとは、曲調はプログレ的なヴァイオリンに変わって行く。少しエディ・ジョブソンを想起させる演奏だ。そこから曲調は更にフリー・フォームに近いものになって行く。この中で太田氏が繰り出す圧巻の超高速フレーズに息を飲む。最後は再び静かな展開に落ち着きプレーが終わる。1時間を超えるパフォーマンス、この流れの中でミスタッチ的なものがほとんど見られないのは驚くべきことだと思った。
アタッチメントの数々
迫力のソロパフォーマンス
味のあるヴォイス
・メモ
- 今回司会を務めるはずだったおなじみの小島氏が体調不良のため欠席、残念でした。体調も回復してきたとのことで一安心。
- ヴァイオリニストの太田氏、ほぼ毎日のようにライブ、スタジオワークをこなしているのに加え、劇団の伴奏、味のある声を活かした声の仕事もこなしているとのこと。
- 声を使った仕事としては「世界ウルルン滞在記」などでヴァイオリンとともに声の出演をしていたそうだ。
- 更に、龍馬伝、るろうに剣心などの音楽も担当された。
- 日本のクラシック以外のヴァイオリニストは音大でクラシックの教育を受けていることがほとんどだが、太田氏は情操教育として子供の頃にヴァイオリンの鈴木メソッドを受けただけで大学でのヴァイオリン教育は受けていない。本人曰く、クラシックより世界各国の民族音楽の中で使用されるヴァイオリンの方に興味があるそうだ。
- 今回の演奏、1曲目は1時間を超える即興演奏だった。また実際の活動でも連日のようにライブをこなしている。一体どうやって練習時間を確保しているのか伺ったところ、「練習は嫌いです」とのことだったw ライブの実践の中で技量を磨いているような感じですね。
- 演奏の中で、太田氏はヴァイオリンに加え、味のあるヴォイスを多用している。このヴォイスの歌詞は太田氏がアドリブで歌っているもので意味はないそうだ。所謂タモリの「ハナモゲラ」ですな。しかし各国の民族音楽を習得する中で身につけたこのヴォイスの技量はかなりのもので、山下洋輔と共演したトルコでの大きなホールでのライブでは、太田氏のヴォイスに観客は大喜びで総立ちになったそうだ。確かにこのヴォイス、実に面白い。
- 演奏者として、数多くの活動を行ってきた大田氏、参加したアルバムは500!を超えるという。主な共演者を教えていただいたので以下に列挙しておく
山下洋輔
佐藤允彦
木村充揮
宇崎竜童(竜童組)
渋さ知らズオーケストラ
忌野清志郎
梅津和時
石橋凌
ZABADAK
酒井俊
COCCO
三四郎
カルメン・マキ
等
- 今回太田氏は3つのヴァイオリンを用意していた。最初の楽器は、通常のアクースティックなヴァイオリン。2つ目のものは、アンプ、アタッチメントに通せるが音を本体で反響することが可能な、ギターで言うとセミアコタイプのヴァイオリン。そして今回使用しなかった3つ目は完全にエレクトリックタイプで、太田氏は「ストラトキャスタ的なもの」と称していた。音もエレクトリック・ギターに極めて近い。
・演奏者
太田惠資 ヴァイオリン、エレクトリックヴァイオリン
・演奏楽曲
1 solo improvisation
2 in a sentimental mood
3 minor swing
等