・メモ

地区の監督牧師の娘として生まれ徹底した禁欲的な生活を教えられ、父の死後も忠実に教えに従って慎ましく暮らしてきたマチーヌとフィリッパ姉妹の元に故国のフランスを追われるようにやってきたバベット。彼女は姉妹の召使いとして雇われ限られた予算を巧みに使い生活を少しずつ潤いのあるものに変えていく。

 

十四年が過ぎたある日バベットは思いがけず大金を手にすることになる。これを知った姉妹はバベットとの別れを覚悟することになる。そんなおりバベットは監督牧師の百年祭には自分の予算で料理を振舞わせて欲しいと姉妹に申し出る。戸惑いながらそれを受け入れる。これが彼女との最後のふれあいになることを感じながら。

 

百年祭の当日、料理を振舞われたのは十二人の教会にゆかりのある人物たち。その中にはかつてマチーヌとほのかな交際のあったレーヴェンイェルム将軍の姿もあった。

 

食事は格別の味わいだったが、その味の価値を本当に分かっているのはレーヴェンイェルム将軍だけだった。彼は料理を口に運ぶたびに、かつて食事をしたパリのカフェ・アングレの味とうり二つなことに驚かされる。

 

全てが終わり、客人たちが引き上げた後で姉妹とバベットとの対話で明らかになる意外な事実。この辺りのくだりはある程度予想できたものだったが、著者の筆が冴えて話に一気に引き込まれてしまう感じだ。

 

個人的にはかつてカフェ・アングレのシェフだったバベットのかつての顧客たちへの思いが非常に印象的だ。うーむそうくるかと言った感じだ。才能のある人の文章はうまいな。

 

正剛くんはこう言ってる。

 

[バベットの晩餐会/629円]

[カレン・ブリクセン著、枡田啓介訳/筑摩書房(1993/9/10)]

[250p/4-480-02601-0)

[バベット、エーレンガート、マチーヌ、フィリッパ、監督牧師の百年祭、レーヴェンイェルム将軍、ロッター王子、リュドミラ妃、カゾッラ、カフェアングレ]

[ちくま文庫て-5][初図][0039]