Slaughterhouse-Five Slaughterhouse-Five
1,785円
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・メモ

カート・ヴォネガットの代表作、久しぶりに再読してみた。本編の片隅に書きこんだメモを見ると、最初に読んだのが1984年、さらに2009年という文字が読み取れる。最初に読んだ時の記憶はあるが、10年前に読んでいたことを失念していた。ということで読んでみた。

 

本書は13万人以上が亡くなった米軍(連合国軍)によるドイツのドレスデンへの集中爆撃を中心テーマとして、それに本人の意思とは関係なくタイムトラベラーとなったビリーの生き方を織り交ぜた物語だ。展開はSF仕立てだが、本作品はSFという狭い世界の話ではない。

 

以前の記憶では主人公のビリーは少し間の抜けた感じのする男で、物語の構成自体もちょっと調子外れの乾いたユーモアに溢れた作品だったように記憶している。

 

今回再読してみて、印象がまるで違っているのに驚いた。ビリーは間が抜けた男ではなく、タイムトラベルにより何度もドレスデン爆撃を体験するとともに唯一の生存者となった飛行機事故や自分の死の瞬間まで何度も体験することになる。そういった体験を通して彼は全てを受け入れることを学んだというか受け入れざるを得ない心境になったんだと思う。

 

ここに作者の思いが託されているような気がする。本書ではドレスデン爆撃および広島への原爆投下が記述されている。どちらも米国が正当性を主張する行為だが、こんな残虐な行為は許されるべきではない。ヴォネガットはこういった愚かな行為をする人間というものを受け入れた上で、それでもそこに希望を見出そうとしていたのかなと思う。

 

残り少ない人生の中で、この小説を読む機会があるのかな。多分あると思うw

 

so it goes.

 

[slaughterhouse-five/$3.5]

[Kurt Vonnegut/dell publishing co, inc.(1984/2)]

[215p/0-440-18029-5)

[time traveler, Dresden,manslaughter, Kilgore trout, Tralfamadore, despair, espoir]

[dell books][再][0038]