・メモ

ヨーロッパ各国で、とりわけオーストリア、スペインで確固たる地位を長い間築いてきたハプスブルク家の興亡を、絵画を通して読み解くという中野京子氏の連作の1つがこの著作ということになる。それにしても650年というのは余りにも長い。よく一族として持ちこたえたものだ。

 

ハプスブルク家と言えば度重なる親族婚により現われた特徴的な容貌が有名だが、その特徴も絵画の中では極力抑えられた表現になり、余りその強烈さは伺えない。画家たちもその点を極力抑える為に相当の苦労をしていたことが伺える。

 

さて本作品、他の作品と違い、終盤は余り絵画作品に目が向かず、むしろそこでの人間の有様に興味を惹かれていった。マリー・アントワネット、エリザベートという後世に名を残す有名人たちが、意外に残念な人たちだったことには非常に驚かされる。

 

これらの人物達の中で一番興味を惹いたのはハプスブルク家のマリー・ルイーズとナポレオンとの間に生まれたライヒシュタット公かな。風貌に恵まれない両親とは似ても似つかない薄幸の美男子、時代に弄ばれた気の毒な男の短い生涯には心打たれるものがある。

 

[名画で読み解くハプスブルク家12の物語/¥1,058]

[中野京子/光文社(2008//15)]

[206p/978-4-334-03469-4]

[スイスの弱小豪族、650年に渡る歴史、エリザベート、フランツ・ヨーゼフ、ライヒシュタット公、マリー・ルイーズ、ナポレオン、夢想家マクシミリアン、ゾフィ大公妃]

[光文社新書366][初王][0009]