・メモ

筆者は清少納言がどんな意図、企み、戦術を持って枕草子を描き世に送り出したかを推論を元に解きほぐしてくれる。快活であっけらかんとした口調で語られる枕草子、その作者である清少納言を天然であるとか、空気を読めないとか論評する人は多い。事実私がごく最近に読んだ本の中で枕草子の現代語訳を担当した作家がそう言う趣旨の発言をしているのを目にした記憶がある。

 

だが筆者は、そう言った面は清少納言の多面性の中の1面に過ぎず、むしろその面に特化して書かれたと見るのが正しい読み方であると言う。枕草子の意図は、清少納言が絶頂期から、出家の時期を経て、再び天皇に愛されながら藤原道長によって度重なる虐めを耐え忍んだのちに出産と同時に短い生涯を終えた中宮定子を生前は慰め励まし、死後はその魂を鎮魂するために書かれたのだということだ。このことを実現するために清少納言は、作品中で悲しく辛い事象には一切触れず、明るく楽しげな話題に終始し、自らも「いけてる女子」を演じきっている。また枕草子が政治的圧力によって失われることがないように時の権力者に上り詰めた藤原道長一派に対する恨み、非難を一切書かないと言う戦略を採用したという。なるほど、そう言われてみれば頷ける部分はかなりある感じだな。

 

桃尻語で書かれた枕草子を軽いノリで読んだ経験しかない私にとって筆者の突きつけた主張は限りなく重い。一度きちんと読み直してみる必要があるな。あっ勿論現代語訳で(^_^)

 

[枕草子のたくらみ/¥1,620]

[山本淳子 /朝日新聞出版(2017/4/25)]

[312p/978-4-02-263057-5]

[天然、KY、ミーハー、多くの顔、キャラクタの使い分け、大鏡、中宮定子、清少納言、伊周、道隆、旧暦5月、機知のレッスン、えせ者、身分・道化、サバイバル戦術→生き残るために]

[単行本][初王][004]