- 砂の女 (新潮文庫)/安部 公房
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[砂の女/¥514]
[安部公房/新潮社(2011/4/15)]
[276p/ 978-4-10-112115-4]
[砂、汗、暑さ、縄梯子、砂丘、昆虫、性欲、水、審判、教師、長老、たとえ話、千0534/1603]
[新潮文庫 あ-4-15][再図][016]
昆虫採集に訪れた男は、一夜の宿を村の老人から提供されるが、
それは罠だった。登ることのできない砂の壁の中のあばら家には
女がいた。気がつけば家に降りるために使った縄梯子は外され
男には崩れ落ちてくる砂をひたすら取り除く作業が課される。
作業を行えば、水とタバコと新聞が与えられ、作業を行わなければ
蒸し暑さと喉の渇きに苦しむことになる。作業をやるやらないに
関わらず男に食事と睡眠と性交を提供する。女はすっかり現在の
状況に諦めきっていて、鏡とラジオを買うことだけが微かな希望だ。
男は何度も脱出を試みるが徒労に終わる。作品全体を包むのは
ムッとする蒸し暑さと、やるせないほどの砂の崩壊だ。限りない
砂の流れは時間と空間の感覚を失わせ、焦燥感をつのらせること
になる。読者はこの環境に閉じ込められた男と同じ閉塞感を
強いられることになる。この感覚がすごい。読みながら男と
同様の蒸し暑さと全身砂まみれの不快感に苛まれることになる。
この人工的に構築された環境の不快感と焦燥感は安部公房の
真骨頂かもしれないな。ある意味で楽しめたが、同時に非常に
疲れさせられた。男は昆虫採集をしながら自分も昆虫を取るための
蜘蛛になってしまったようだな。
誠剛君はこう言ってる。