変化朝顔を見に行く | なんだかんだの石集めと与太話

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鉱物を初めて手にしたのは、小学生の時。それからずっと中断。
2011年頃より、やっと暇になったので、また石の世界へと羽ばたき始めたけど。

朝顔について

 先日、千葉県佐倉市にある国立歴史民族博物館(通称、歴博)の付属の植物園「くらしの植物苑」で開催されている朝顔展に行ってきました。毎年ながら、今年も結構楽しめました。

 

 朝顔と言えば、小学生の時に多くの人が夏休みの宿題として朝顔の成長を書いたり、学校で育てたりしたなどで、記憶に残っている人も多いはず。

 朝顔は日本において江戸時代に突然変異種がたくさん輩出し、その後明治の中期から昭和の初めに、そして2000年頃からまた朝顔の育成が盛んになっています。

 佐倉市にある歴博では、毎年朝顔を展示しています、特に変化朝顔を。変化朝顔(または「変わり種朝顔」などとも言う)の詳細については、以下をご覧ください。
  → 九州大学の変化朝顔のサイト

 

 変化朝顔の基本として、以下の2系統があることを知らないと理解が進みません。

 A.正木(花が咲けば、種が取れる種類)

 B.出物(花が咲いても、種が取れない花がある種類)

 

 次に、出物では、以下の4種類が各系統番号の朝顔毎に発現する。

 1.牡丹出物(めしべ、おしべが花びらに変化して、種が取れない、鑑賞価値高い)

 2.一重出物(花びらが一重の物)

 3.親牡丹(花びらが八重の物、朝顔では八重と言わず牡丹と言う)

 4.親木(種が取れるが、この種の中に、1の牡丹出物の遺伝子を持つ種が

     あるから保存する。もちろん、2(一重出物)、3(親牡丹)の種も含まれる。)

 

 出物朝顔では、2,3の種は通常捨てる。2,3の種では絶対に1の牡丹出物が出てこないので、捨てないと1の牡丹出物の出現確率が下がって、なかなか見つけられないことになる。また、朝顔の種ってたくさん取れるので。

 

 出物の特徴として、出物が発芽したすぐの子葉の時に、出物かどうか判断できる  ので、そのときに親木と分け、苗ごとに育てる。また出物は、苗ごとに種を保存するなどのこともしないと牡丹出物の花を見る確率が下がってしまうので、出物朝顔の栽培は結構面倒で難しい。

 

 また、基本として出物の出現確率は、メンデルの法則に従い、上の番号順に

  1(牡丹出物):2(一重出物):3(親牡丹):4(親木)=1:3:3:9

なので、1(牡丹出物)の出現は(16個中)1個だけ。メンデルの法則が確立されたのは、明治に入ってからです。このようなことが、法則が確立以前の江戸時代末期の日本で、なんとはなしに理解されていたのは驚きですね。

 

 も一つ、変化朝顔はその名称を言うと、どのような物かわかるようになっています。出物では、同じ兄弟なのに名前が違ったりもしますので注意が必要です。

 

朝顔の名前の付け方

 朝顔の名前は、基本、花びら2つに関して付けらています。以下の項目を順番に選んでいくだけです。(一部は省略されますが。)

 

 葉の色(青、黄、萌黄など、ほとんどが前の2種)

 葉の質(渦葉、顰葉など、特徴なしは省略する)

 葉の模様(斑入、水晶斑入りなど、模様なしの時には省略する)

 葉の形(常葉、蜻蛉葉、蝉葉、乱菊葉、笹葉、爪龍葉、州浜葉、立田葉など)

 花の色(紺、青、、白、紅、藤など)

 花の模様(覆輪、縞、車絞、曜白、染分、吹掛絞など、模様なしは省略する)

 花筒の色(筒白、筒紅など)

 花弁の形(撫子、細切、風鈴、鳥兜など、特徴なしは省略する)

 花の形(丸咲、桔梗咲、切咲、石畳咲、采咲、撫子采咲、風鈴獅子咲など)

 花の大きさ(小輪、大輪など)

 

以下は名前付けの例です。

写真0.黄・蝉葉・栗皮茶・丸咲・大輪(114,正木、通称”団十郎”、筒白ですが省略)

 

 ちなみに花の色に関して、色の花を持つ植物は、朝顔エビネだけです。茶色の花を持つ朝顔は、歌舞伎役者の団十郎(茶の服装を好んだ)にちなみ「団十郎」系と呼ばれます。

 

朝顔とその近縁種である「さつまいも」について
 朝顔とさつまいもは同じ属で、親類に近い近縁種です。朝顔は東京など東日本でも普通に花を見ることが出来る。しかし、さつまいもとなるとこれはほとんど見られない。九州南部や沖縄など気候の暑めの土地に限られる。

 しかし、さつまいもの苗を朝顔に接ぎ木をすると関東でも花が見られる(参考5)。やってみたい人は是非どうぞ。

 余計なことだが、里芋の花も関東ではほとんど見ることが出来ない。が、昨年私は友人の畑でたまたま見ることが出来た。写真は撮ってないが。里芋は、座禅草とか水芭蕉、マムシ草、浦島草などの近縁で花はそれらと同様に包状に咲く。こんにゃく芋もまたしかり。

変化朝顔の写真
 さて、朝顔にもいろいろあるよということを私が知ったのは、千葉県佐倉市にある国立歴史民族博物館の「くらしの植物苑」で朝顔展が20年ほど前に開催されたことからです。以来、ほぼ毎年8月前後の時期、1ヶ月ほどの期間に朝顔展が開催されるので、今年も鑑賞しに行ってきた。

 以下は千葉県佐倉市にある国立民俗歴史博物館での今年見られた変化朝顔から少し(系統番号で6種)だけ、その写真です。(番号は、朝顔の系統番号です、)


写真1.黄弱渦柳葉白撫子采咲(Q1608,一重出物)

 

写真2.青笹葉黒鳩切石畳咲(X766.1,正木)

 

 

写真3a.黄抱常葉紫丸咲牡丹(419,親牡丹)

 

写真3b 黄抱常葉燕紫丸小咲(419,燕出物)

 

写真3c 黄抱常葉紫丸咲(419,親木)

 

 

写真4a. 青打込弱渦柳葉青采咲牡丹(605,牡丹出物)

 

写真4b. 青打込弱渦柳葉青采咲(605,一重出物)

 

写真4c. 青打込弱渦柳葉青丸咲牡丹(605,親牡丹)

 

写真4d. 青打込弱渦柳葉青丸咲(605,親木)

 

 

写真5a.青斑入海松(みる)葉茶覆輪細切采咲牡丹(666,牡丹出物)

 

写真5b.青斑入海松(みる)葉茶覆輪細切采咲(666,一重出物)

 

写真5c.青斑入笹葉茶覆輪車絞切咲牡丹(666,親牡丹)


写真5d.青斑入笹葉茶覆輪車絞切咲(666,親木)

    覆輪(花びらの先が白い)


写真6.黄・斑入・州浜葉-青紫・曜白・丸咲・大輪かな?(富士の桜,正木)

 

 大輪系の朝顔は、曜(花びらと花びらのつなぎの間)が通常より多い。これは6つある。大輪系以外の朝顔では、曜は5つが普通。また、大輪朝顔では、大きな物は花の直径25cmなんて物もある。


朝顔の本
 朝顔の本は、私は凝り性なためか、20冊ほど持っています。その中で、いくつか紹介しておきましょう。

お子さん向け(小学生向けかな)
1.中山周平,新装版 アサガオ-たねからたねまで-,あかね書房(2005)

 朝顔の基本を抑えて書かれています。大人でもお薦め。


2.わたなべよしたか編,アサガオの絵本,農文協(2001)

 絵本と言いながら、変化朝顔が中心に書かれているので、大人向け。

大人向け
3.田口秀丸,アサガオ,誠文堂新光社(1998)

 大輪朝顔の写真がたくさん。アサガオの科学、育て方など丁寧に書かれている。アサガオ関連では、特にお薦めの本。


4.仁田坂英二,変化朝顔図鑑,(株)化学同人(2014)

 朝顔研究の第一人者が書いた本。タイトル通りの変化朝顔について。変化朝顔の名の付け方から、葉の色、形、花の色、模様、花筒の色、花弁の形、花形など系統的に書かれている。写真も豊富でわかりやすい。


5.米田芳秋,色分け花図鑑 朝顔,学習研究社(2006)

 朝顔研究者が書いた本。大輪朝顔、変化朝顔の写真が豊富。また朝顔の類縁種などの記述があり、育て方まできちんと書かれている。でも、この本はアマゾンでは扱っていないみたい。


6.朝顔百科編集委員会編,朝顔百科,誠文堂新光社(2012)

 朝顔についてはほとんど網羅している一般向けであるが、専門書の感じ。類縁種については少ししか書かれていない。朝顔の栽培法、育種、採種、同好会などについても書かれている。これがあれば、朝顔については万事OKで、他の本はいらない感じもある。

参考
1.九州大学の朝顔のホームページ
  → http://mg.biology.kyushu-u.ac.jp/

2.佐倉にある国立歴史民族博物館付属「暮らしの植物園」
  → https://www.rekihaku.ac.jp/exhibitions/plant/project/index.html

3.変化朝顔研究会
  → http://henkaasagao.tumabeni.com/index.html

4.東京朝顔研究会
  → https://www.tokyoasagao.com/

5.新潟大学のサイト
  (サツマイモを朝顔に接ぎ木する実験紹介サイト)
  → https://www.sc.niigata-u.ac.jp/biologyindex/wada/p13/p13-2-1.html#:~:text=%E4%BA%92%E3%81%84%E3%81%AB%E8%BF%91%E7%B8%81%E7%A8%AE%E3%81%A7,%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%82%92%E7%A4%BA%E5%94%86%E3%81%99%E3%82%8B%E3%80%82