荒川鉱山の後は、亀山盛鉱山に回りました。
0.はじめに
訪ねたのはこの連休の2日目(2021年11月)で、今まで十数回も訪ねました。いつもは人や車に会うことが少ない協和町も、今回は道路には今まで見たことがないくらい多くの車が走っていました。秋田ではコロナの感染者が非常に少ないにもかかわらず、政府の要請に従って家に籠もっていたことでストレスが溜まっていたところにきていて、漸く全国的にコロナの心配が少なくなったせいかもしれませんね。
1.産地まで
合貝の交差点から船岡の道をクネクネ曲がりながら進みます。協和スキー場の入口で左方に進み、唐松温泉の左横に見て通り、ダム下の三叉路で左を進み、坂道を登ると500m程のトンネルを抜けます。合貝から10kmほど来た協和ダムの脇を過ぎて、更に進むとすぐに橋の工事で通行止めの表示が。しかも11/10頃には既に通行止めだったようで。
仕方なしにダム下の三叉路まで戻って、右の道を進みます。こちらを進むと対向車が来るとすれ違えるのか心配です。ダム横のベンチのある小さな公園を過ぎると未舗装路のガタガタ道になり、道が狭いのでガードレールはあるものの、下手をするとダム中に車毎落ちてしまいそうな道です。幸い途中の橋のたもと、少し広いところに車が止まっているだけで、目的の所までヒヤヒヤですが到着できました。しかし、道は車が通った轍がしっかり残っているものの、車の腹は50cmもある雑草で擦れて、その音がうるさかったですね。
車を駐めた先には、立入禁止のテープが張ってあって先に進めません。下の写真のように落ち葉も溜まっていて人がほとんど来ていない感じが。で、どうして此処にカーブミラーがあるんでしょうか、謎です。
写真1 駐車した先の車止めのテープが
このテープの手前の広場になっているような所に車を駐めて、準備を整えて、道を少し戻っていざ突入です。
写真2 ズリへの入り口
ズリに行く際の目印、右側に「越口沢」の立て札を確認(上写真)。入口は、笹が生い茂っていてかき分けて進みます。すぐに笹はなくなり、以降ぬかるみがあったり、背の高いイタドリが枯れ込んでたくさん立っていたりで歩きにくいです。
大倉沢の立て札が立っているはずの近くに来ると、その立て札が見えません。(下写真) ズリの方向の(左の)道も雑草が茂っていて道が良く見えません。
写真3 ズリ手前の三差路
川向うに大倉沢の立て札が見えるはずだったが。
ここから100mも歩かず、スリに到着です。
2.変容したズリ
見て絶句してしまいました。
写真4a 今回(2021年11月)のズリ
写真4b 約10年前(2012年9月)のズリ
ズリの一番下にあった鉄の網の蛇籠はすっかりなくなっており、川に降りると、以前はすぐに川の水が流れていたのに、2m程の空き地があってから川を越える感じになっていました。流れが変わり、2mほどの幅でズリ部がえぐられ、ズリの下方の石がすっかりなくなっている感じでした。
3.採集した鉱物
今回、鉛鉱物の緑鉛鉱、青鉛鉱、白鉛鉱はなかなか見つかりません。緑鉛鉱は後ろの写真で示す2試料のみです。あまり良い物とは言えませんが、写真を掲載します。一つの緑鉛鉱は、亀山盛では珍しい針状のもので、鉱害処理で今は採集できなくなった比較的傍にあった小杉沢鉱山で産出した緑鉛鉱(参考1)に類似している。
青鉛鉱もあまり見つからず、孔雀石と一緒の皮膜状の物ばかりで結晶質の物はあまり見つからなかった。白鉛鉱は、のっぺり石に小さく貼り付いた物は見つかるが、結晶質の物が見つからない。
以下は、家に持ち帰った一部の石を観察して判定した石たちです。綺麗な結晶質の孔雀石は拾えなかったので、孔雀石は不掲載です。
写真5a 緑鉛鉱 (Pb5(PO4)3Cl、黄色、ビア樽状、試料サイズ55mm)
写真5b 緑鉛鉱(上の試料の一部拡大)
写真6a 緑鉛鉱(Pb5(PO4)3Cl、薄茶灰白色、六角針状、試料サイズ73mm)
写真6b 緑鉛鉱(上の試料の一部拡大、少し珍しいかな)
写真7a 硫酸鉛鉱(PbSO4、灰白色、微結晶あり、試料サイズ34mm、手に持つと重量感が)
写真7b 硫酸鉛鉱(上の試料の一部拡大、一部にコロッとした感じで微結晶がある)
写真8a 青鉛鉱(PbCu(SO4)(OH)2、淡青色、
見た目は皮膜状だけれど針状微結晶あり、試料サイズ27mm)
これも体積の割に重い
後で見なおしたら、別な面に結晶質の白鉛鉱ほか、いろいろあった。
写真8b 青鉛鉱(上の試料の一部拡大)
写真9 クリソコーラ(珪孔雀石、
(Cu,Al)2H2Si2O5(OH)4・nH2O、青緑色、ガラス質、試料サイズ37mm)
写真10a ブロシャン銅鉱(Cu4(SO4)(OH)6、緑色、粒状、試料サイズ、試料サイズ26mm)
写真10b ブロシャン銅鉱(上の試料の一部拡大、コロッとした結晶がある)
写真11a 藍銅鉱(Cu3(CO3)2(OH)2、藍青色、薄板状、針状、試料サイズ45mm)
写真11b 藍銅鉱(上の試料の一部拡大)
写真12a ビーバー石(PbCuFe2(SO4)2(OH)6、黄色、粉状、試料サイズ49mm)
写真12b ビーバー石(上の試料の一部拡大)
写真13a 尾去沢石(PbCuAl2(SO4)2(OH)6、黄緑色、粉状、試料サイズ37mm)
写真13b 尾去沢石(上の試料の一部拡大)
鉛を含む鉱物は、拾うと体積の割にずしりと重く感ずるのですぐ解る。他に、黒銅鉱(かな)、閃亜鉛鉱等も拾ってきました。黄銅鉱、方鉛鉱、などは亀山盛鉱山のズリではあまり拾えないけれど、まあ良かったかなと。赤銅鉱や結晶性のいい白鉛鉱が拾えなかったのは残念でしたが。
ついでに書いておけば、緑鉛鉱や水晶などがあまり見かけなかった感じで、これがないと言うことはツメブ石も拾えないって事だなあと。こちらも残念と思いながら、まだ観察してない残った石に期待をしていますが。
亀山盛鉱山では、非常にレアですが、他に赤銅鉱、ラング石、ローウォルフェ石、カレドニア石、レッドヒル石、ラウテンタール石、宗像石、ヒンスダル石、擬孔雀石等の産出が報告されている。今までの亀山盛での採集で、レッドヒル石、ヒンスダル石らしい物を見つけているが、確証が全然なくて弱っている。赤銅鉱、カレドニア石、宗像石は確かだと思っている。宗像石は、Seが含まれているのをEPMAで分析し確認しているので。が、長さ0.1mmほどの針状の結晶で、肉眼では全然見えない。写真も撮れていない(;_;)。
ヒンスダル石 PbAl3(PO4)(SO4)(OH)6 黄~黄緑、
粒状集合
ツメブ石 Pb2Cu(PO4)(SO4)(OH) 淡緑色透明、
緑鉛鉱や水晶上に
ラウテンタール石 PbCu4(SO4)2(OH)6・3H2O 緑色~青か?
ローウォルフェ石 Cu4(SO4)(OH)6・2H2O 青色?
擬孔雀石 Cu5(PO4)(OH)4 緑色?
レッドヒル石 Pb4(SO4)(CO3)2(OH)2 白~透明、
六角板状
カレドニア石 Pb5Cu2(CO3)(SO4)3(OH)6 水色、
繊維状集合
青鉛鉱 PbCu(SO4)(OH)2 淡青色
宗像石 Pb2Cu2(SeO3)(SO4)(OH)4 青鉛鉱に類似
ビーバー石 PbCuFe2(SO4)2(OH)6 黄色、粉状
尾去沢石 PbCuAl2(SO4)2(OH)6 黄緑色、粉状
擬孔雀石は、緑鉛鉱などリン酸塩鉱物が存在するので、採集できていてもおかしくないが、今まで30個以上の石で分析したことがあるが燐が検出されず見つけられていない。今回もよくわからない。緑鉛鉱と黄銅鉱、孔雀石の傍に来ているのだろうか。
4.最後に
日三市鉱山にも回りたかったのですが、荒川鉱山の方でウロウロして時間を費やしてしまったことと月曜には千葉で用事があったので、行けずに慌てて戻ってきました。連休中に東京の方に行く人は少なく、高速では夜の運転だったのでガラガラ。600kmほどをトイレタイム1回の6時間程度、ほとんどノンストップで帰ってきました。はあ、疲れました。
亀山盛鉱山については,別にも書いているのでご覧ください。
⇒ 秋田県、亀山盛鉱山での採集| putonewordのブログ (ameblo.jp)
5.参考
1.益富地学会館監修,日本の鉱物,p64,成美堂出版(1994)