和賀仙人鉱山での水晶などの採集(長文注意!) | なんだかんだの石集めと与太話

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鉱物を初めて手にしたのは、小学生の時。それからずっと中断。
2011年頃より、やっと暇になったので、また石の世界へと羽ばたき始めたけど。

 岩手県にある和賀仙人鉱山を最初に訪ねたのは2011年8月11日だった。単身赴任していた秋田から、盆休みで家に帰る途中だった。新潟にある赤谷鉱山を探して赤鉄鉱などを採集していたこともあって、同様の赤鉄鉱を求めて和賀仙人鉱山を訪ねることにした。実は赤谷鉱山の赤鉄鉱は、此処に運ばれてベンガラを作っていたのだそうだ。だから、和賀仙人鉱山での赤鉄鉱の採集には注意が必要だっ(参考3)たのだが、現在となっては撤去されて残骸がないので気にすることはない。

 ここは、鏡鉄鉱黄鉄鉱などの鉄鉱石の産地として知られているが、比較的大きい結晶性の黄鉄鉱が採集できるところとして知られている。また鏡鉄鉱に伴ってたくさんの水晶も採集できる。鏡鉄鉱や水晶はまだまだ採集できる。下遠平鉱床からは黄銅鉱閃亜鉛鉱方鉛鉱も産出したらしいが、まだそちらの採集には行ったことはない。一応、2箇所ほど紹介しておこう。

     

図1.和賀仙人鉱山付近の地図(国土地理院の地図引用)

   赤丸のところが紹介の場所

 

     
写真1.国土地理院の航空写真引用

 

      

図2.参考1のp123から

  (方角を上の図1や写真1に合わせて回転させた)


 最初に訪ねた場所は、文献1や2を見ると、おそらく金肌鉱床と思われる場所。上の国土地理院の地図の中央下、赤丸付近。ここへ行くには、北上市の方から来ると、長く大きくうねった和賀仙人スノーシェルターを抜け、和賀仙人スノージェットに入って数mの所を左の川の方に降りていく。スノーシェルターでは、トンネル状の中を進み、長く、大きくカーブする。スノージェットの方は、反対側が見えるほど短く、赤に鉄枠が塗られているのですぐわかる。スノージェットの所から脇の道に入ってすぐに、川の対岸に崖崩れのような所が見える。初めての時はその左脇にあるズリに行った。自分が今まで採集した物よりも大きい、結晶性のいい黄鉄鉱を探す目的で訪ねる。
     

写真2.金肌鉱床への入口

          スノージェットの3番目と4番目の赤い柱の間を川側に降りていく。

 

     

写真3.最初に訪ねた金肌鉱床(?)

   車を駐めた広場から見る。


 スノージェットから100mほど降りていくと広場のような所がある。以前は此処に弁柄を製造していた工場があったようだ。が、今回はその残骸すら見あたらなかった。スロープを降りてきて、広場のようになっているところで、川の方向に向けて車を駐める。その場所は川の面からはかなり高くなっているようだった。

 車の先で林の一部が切れているように見えたので川に向かって進むと、林の中に川へ降りていく道があった。道は一旦、下流側に進むが途中でくの字に曲がると上流側に進みながら川面に出る。出たところからズリまでは200mほどあっただろうか。戻る場所が解らなくなるのが不安で、目印になるように降り口の木の枝に黄色のタオルを巻き付けた。

 

 川原に降りて、川を渡ることになったが、人が乗ってもびくともしない、大きな石がたくさんある。また幸いなことに川を流れる水が少ないので、石の上をポンポンと渡れば濡れずに反対側の岸に渡れる。が、私は途中で足を滑らせて片足を濡らしてしまった。風が強くて、暑い日だったのですぐに乾いたが。

 最初は、堆積した岩ばかりの詰まらない場所かと思ったが、少し上流に行き、ズリの上の方に登ると鏡鉄鉱が見つかる。その辺りを中心に採集を開始する。見ると灰鉄輝石のような鉱物が沢山見られる。場所を変えると黄鉄鉱もあった。が、目的とする綺麗な結晶の物はあまり見つからないと思いながら、うろうろ。

 あまり良い結晶の黄鉄鉱がないなあと思いながら、たまたまちょっと黄鉄鉱が見えた岩をハンマーで叩いて割ったら、10mm弱の比較的綺麗な結晶の黄鉄鉱が現れた。ラッキーだった。そばに30cmもあろうかという鏡鉄鉱の塊があった。いくつかを採集した後、少し上流の場所に行くと、鏡鉄鉱の鉱脈がドンとあるのに気づく。山の上の方に続いている。その時は観察しただけで何もしなかった。
     

写真4.黄鉄鉱 FeS2 サイズ44mm


 その辺に転がっている石を見ると、灰鉄輝石緑閃石緑泥石らしき物が沢山見られる。最後は、少し上流の露頭でと思ったが、川岸が狭く急傾斜の感じがあって、川に落ちると深い場所のようで怖かったのと、風が強くなってきたので採集を止めた。又この次の機会にでもと思って戻ってきた。
     

写真5.緑泥石 サイズ51mm

 

     

写真6.赤鉄鉱(鏡鉄鉱、雲母鉄鉱) Fe2O3 サイズ115mm


 また別の機会に同じ付近に行ったときには、ドンとあった鏡鉄鉱の鉱脈を探したが見つけることができなかった。場所を勘違いしたのだろうか。その時には露頭の上の方まで登り、平頭状の方解石などを拾ってきた。
     

写真7.方解石 CaCO3 サイズ83mm

 

     

写真8.友人にもらった灰礬柘榴石(Ca3Al2(SiO4)3)、サイズ68mm

ラベルにはそう書いてあるが、私は灰鉄柘榴石(Ca3Fe2(SiO4)3)と思っている。


 私が初めて採集した金肌鉱床は、川を渡らなければならないので、川の水量には注意が必要だ。十分気をつけて渡る必要がある。水量が多いようだと撤退する勇気も必要だ。

 しかし、山形の五十川(いらがわ)で会った三重からの人は、和賀仙人で高い場所へ行ったかと聞かれたのが今もって頭に残っている。かなり良い水晶が採取できるらしいが。

 別の採集場所(遠平鉱床だと思うが)は、水晶鏡鉄鉱を目的に行った場所。最初の図の左上の赤丸付近。道の駅錦秋湖から湯田ダム付近のトンネルを抜けてすぐ脇の空き地に車を駐める。そこから50mほど北上方面に進んだあたりの山側の谷を登ると鏡鉄鉱が転がり、水晶も転がっている。水晶目的に行くには良いところだ。場所を見つけるのに歩き出して、5分もかからないだろう。下の写真の右端に見える白い所(石捨て場か?)まで行かないので。
     

写真9.最初の図の左上の赤丸付近。

 

     

写真10a.水晶 SiO2 サイズ215mm 

   (リビングのテーブルの上に置いている)

 

     

写真10b.上の写真の拡大


 次に行くときには、非鉄金属系の鉱物を目的に行ってみようと思う。
 

 参考に和賀仙人鉱山の別の鉱床をを探索した探検系のサイト(参考4)を紹介しておこう。鉱山のズリらしい場所の説明が出てくるが、とても危険なところなので行けそうもないが。

 以下のサイト

 


参考
1)新岩手県鉱山誌,南部松夫、高橋維一郎,東北大学出版(2003)
2)室住正義,地質調査所月報,vol.4,(No10),p641-648(1953)
 この文献は次のサイトから。和賀仙人鉱山の鉱床の位置がよくわかる。
  https://www.gsj.jp/data/bull-gsj/04-10_06.pdf
3)http://mineralhunters.jp/wagasennin.html

4)和賀仙人鉱山のとても危険な箇所の探検サイト

 廃線レポート (yamaiga.com)

 ここは非常に危険なので行かないように