今週論文紹介をした論文に、アポトーシスの際に見られる現象としてミトコンドリアの膨潤(mitochondria swelling)を540 nmの吸光度の減少で見ていた論文があった。しかしながら、その原理についていくら調べても(この方法を使っている論文を10報以上探しても!)出てこなかった。

mitochondria swellingはmitochondrial permeability transition pore(MPTP)によって引き起こされていることが分かっているため、mitochondria swellingを測定するアッセイはMPTの強度を測定するのに用いられている。測定方法は以下のようなプロトコルによって行われているのが標準であるらしい。

swelling buffer: 0.2 M sucrose; 10 mM Tris-MOPS(3-(N-morpholino)propanesulfonic acid); pH=7.4; 5 mM succinate(コハク酸); 1 mM Pi(リン酸イオン, KH2PO4など); 2 µM rotenone; 10 µM EGTA-Tris(引用1) K+がmitochondrial swellingの開始剤となっていると思われる(引用2)。
↓抽出したミトコンドリアにswelling bufferを加え、540 nmの経時変化を測定する。 ポジティブコントロールとして100 µM程度のCa2+が用いられる(Ca2+はミトコンドリア由来のアポトーシスの誘導剤でもある)。
MPTPの阻害剤としてシクロスポリン(cyclosporin A(CsA))がよく用いられている。

ミトコンドリアにおけるアポトーシスの開始においては、cytochrome cの放出がよくみられる現象であるが、cytochrome cの吸光度が550 nmにあり、cytochrome cの分解が540 nmの吸光を減少させているのではないかとも考えた。しかしながら、引用2の論文によってその仮説は否定されていた。 このことから、僕のなかでのmitochondrial swelling assayの位置づけとしては、MPTがどの程度起こっているか、アポトーシスがどの程度起こっているかの指標の一つであるということになっている。何ともさっぱりしない実験方法である。
引用1
Zamzami, Naoufal, et al. "Measurement of membrane permeability and the permeability transition of mitochondria." Mitochondria 80 (2011): 327-340.
引用2
Ichimura, Takuya, et al. "Involvement of mitochondrial swelling in cytochrome c release from mitochondria treated with calcium and Alloxan." Journal of Biophysical Chemistry 2.01 (2011): 10.