今年も年末になってしまいました。今年の自分を振り返ってみたいと思います。

今年の自分を漢字2文字で表すとすると「展開」でした。実に様々なことに手を出しました。 久しぶりに始めたゲームに水泳、自転車、掘り出した曲のmidi演奏など…新しく始めた趣味がだいぶ多かった年でした。そしてそのうちのいくつかはすぐに飽きてしまいましたが…

新しいことに手を出すと、今まで難しいだろうなと思っていたものが意外に簡単にできるようになる一方、クオリティを上げようとするとやはり長い時間をかける必要がある。そんなことを実感した一年でした。 ある意味では自分の強みは何かを理解することができた一年であったともいえます。

中学か高校のときに自分の好きな言葉は何か筆で書くということがありました。その時の言葉が、

「継続は力なり」

10年も昔に自分は結論を出していたのですね。
もう目の前には大晦日。今日は今年最後のレッスンに行ってきました。

小野アンナ
3オクターブ音階とアルペジオ gis-mollの4つつなぎをクリア。次回1小節スラー(4つ調が進んだ)。
3度 c-mollの4つつなぎをクリア。次回As-Durの2つつなぎ(3つ調が進んだ)。
6度 Ges-Durの2つつなぎをクリア。次回4つつなぎ(♭6つは厳しい…)。
8度 f-mollをひたすら練習してるのよ(3つ調は進んでる)。
10度 g-mollの2つつなぎをクリア。次回4つつなぎ(ほんの少しずつ進んでいる)。

現在は発表会へ向けて全てG-Durを練習中
最近は3度よりも8度のほうが鬼門になってきた気がする。音程が少しでもずれるとすぐにバレてしまう(笑)

セブシック
12番まで終了。現在はお休み中。

カイザー→クロイツェル
2番をいろいろなボウイングで弾き終わり、3番をクリア。現在はお休み中。


来年3月の発表会に向けて、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番第1楽章を練習中。16分音符を軽やかに弾くのがとても難しい。いかにも簡単そうに弾いてますよ~って弾かなきゃいけないんです。

発表会の曲について気を付けなければいけないところをまとめてみたいと思う。

まずは初めの一小節。重音は2-2でしっかり鳴らす。Gはディミヌエンドすることで少し音に溜めを作って、16分音符は動きをつける。


ここの8分音符はあまり飛ばさずに弾く感じ。



2小節目のEに向かって音を膨らませていく。最後はフレーズの終わりなので動いていたメロディーが落ち着く感じ。





上の段Gis-Aや、下の段D-Cis、Cis-D、Dis-Eは頭を大きく後ろは音をしぼませる。モーツァルトはこういうフレーズは大抵頭が重要。


このフレーズの「ラララ・ソ・ラ・ソ・ラ」の部分はまず3つ目のラに向かって弾く。次に最後のラに向かって軽やかに弾く。意外と難しい。次のフレーズは前のフレーズとは対比的に歌うように。


この16分音符のフレーズは2人が掛け合うように弾く。始めの16分音符の塊が1人目、後の塊が2人目となる。今回は初めのフレーズをスラーあり、後のフレーズは全て切って弾く。一番注意するポイントは初めのフレーズの8分音符のA。フレーズを受け渡すように弾くようにする。

ここをベターっと弾いてしまう癖があるようなので、少し切り気味に弾くと軽く弾いているように聞こえる。モーツァルトは軽い曲軽い曲軽い曲…


前のフレーズとはうって変ってここは決然と。一気に駆け上がる。次の小節はD-H, H-G, G-Eの順に音を小さくしていくが、それぞれの頭が重要。H-Gくらいまではそれなりに大きく、最後のG-EのEは後に"間"ができるように小さく(開放弦なのでかなり注意しなければならない)。


最初のミレドレは後のレに向かって弾く。あまり弓を使いすぎないように注意。


一つ一つはっきりと、しかしながらベターっとならない。それぞれの8分音符に向かって弾き、次の塊は弾きなおすといった風にするといいかも。


ここの1つ前のフレーズから雰囲気が変わる。risolutoの指示があるように決然と。最初のA-Bの2分音符はアクセント付きで、Bのほうを大きく。2小節目の最後のDisと3小節目最初のDisは雰囲気を変える(指を1→2に変える)。


後半B-A-H-A-C-A-Cis-A-Dの部分は半音階で上がる部分をはっきりと弾かないと動きが分かりにくくなる。


1小節目は決然と、2小節目は対照的に美しく。


前の小節は16分音符で動いているが、小節頭のCは雰囲気を変えて美しく弾く。Cでちょっとだけ切って次のEから始まる部分は同様に歌うように。


楽譜の指示通り、最初はピアノで、だんだん大きく。この後カデンツァがある。

この後は前半の再現部となる。そのため音は違うが注意点は前半部分と同じである。

全体をまとめると、モーツァルトは演奏者がいかにも弾いてますよーというように弾く曲とは対照的な曲であり、さらっと簡単に弾いているように見せなければならない。指が回ることは前提条件!……そんなこと言われてもねえ。
以前の記事でThe Hidden ViolinsというCDを買ったという話をしたが、そこで出てきたChristian Sinding(クリスチャン・シンディング)という作曲家の曲をいろいろ聴いていたら、予想以上に良い曲が多かった。タイトルの通り、なぜこの作曲家が忘れ去られてしまったのかというレベルである。

クリスチャン・シンディングはノルウェーの作曲家であり、1856年生まれ、1941年死去という年代からロマン派の作曲家である。最初はヴァイオリニストを目指していたということから、ヴァイオリンソナタやヴァイオリン協奏曲、ヴァイオリンのための小品など、ヴァイオリンのための曲を多く作曲している。(IMSLPでヴァイオリンのための曲を調べてみると、ヴァイオリン+ピアノの曲が15作品(!)、ヴァイオリンソロ曲が1作品、2つのヴァイオリン+ピアノの曲が2作品、ヴァイオリンとオーケストラの曲が3作品もある

) 自分がシンディングの曲をyoutubeで探していた時にはいろいろあったのだが、最近になって削除されてしまったらしく、現在聴くことのできる曲は限られている。

シンディングのヴァイオリン曲で一番有名であろう曲は『古い様式で書かれた組曲 作品10』(Suite im alten Stil, Op.10)である。これはハイフェッツがレパートリーにしたことがきっかけとなって有名になった曲である(五嶋みどりさんの解説より)。 しかしながら、シンディングの良い曲はこれだけではない(何しろヴァイオリンのための曲が20曲以上もあるのだから!)。今youtubeで聴ける曲だけでもいくつか聴く価値のある曲がある。

Cantus Doloris op. 78 日本語では『悲しみの歌』とでも訳されるだろうか(cantusが英語でsinging、dolorisが英語でpainの意味とのこと)。始めに主旋律が演奏され、その旋律が変奏曲風に展開される。中間部は美しい長調のメロディーが、そして終盤長調の終焉とともに再び激しい短調に戻る。最後は初めのメロディーが繰り返されることにより曲が締めくくられる。とても劇的で聴きごたえのある曲。

Violin Sonata No.3 in F major, Op.73 1st movement 北欧のロマン溢れる曲である。流れるような旋律が美しい。1楽章しかないのが残念。CDを買いましょう。

Serenade No.2 in A major, Op.92 こちらは2つのヴァイオリンのための曲。3曲すべてに言えることだが、とても聞きやすくBGMにするにはもってこいの曲である。また、ヴァイオリンのメロディーもいいのもあるが、どの曲にも共通することとしてピアノの盛り立てがとてもうまい。これがシンディングのヴァイオリン曲を印象深くしている一つの要因ではないだろうか。

他にも印象深かった曲が何曲もあるが、音源がないのでリストアップだけにとどめておく。

・Andante Religioso for violin and piano Op. 106/3
・Ballade for violin and piano Op.61/3
・Romance for violin and piano Op. 100

どれも何周も聴いてしまった曲である。この人を埋もれさせたままにしておくのはもったいない!
最近買ったCDがある。The Hidden Violinsという、ヴァイオリンの隠れた名曲を集めたCDである。
 
『ヒドゥン・ヴァイオリン~独奏ヴァイオリンのためのロマン派技巧的作品集~ゴダール、ヨアヒム、ヴェチェイ、他』 ヴォーン・ジョーンズ


隠れた名曲といっても様々な定義があると思うが、ここにおいてはマニアにおいてもほとんどの人が知らない曲のことを指す。そして、このCDでは世界初録音を含めたほとんど演奏されていない曲が詰まっている。そのリストは次のようになっている。

ゴダール(Godard, Benjamin) 無伴奏ヴァイオリンソナタ第1番op.20、第2番(どちらも世界初録音)
シンディング(Christian August Sinding) 組曲 ニ短調 op.123~第4曲アンダンテ『シャコンヌ』
フランツ・フォン・ヴェチェイ(Franz von Vecsey) 前奏曲とフーガ ハ短調
レオン・デ・サン=リュバン(Leon de Saint-Lubin) 『ランメルモールのルチア』の主題による幻想曲 op.46
ヨーゼフ・ヨアヒム(Joseph Joachim) スコットランドの調べ

寡聞ながら、最後のヨアヒム以外の4人はこのCDを買ったとき全く知らなかった。

以下簡単な感想

ゴダールの無伴奏ヴァイオリンソナタはどちらもザ・ロマン派といった感じの曲だった。確かに複数メロディーを並行させている部分もあったりするが、バッハのような厳格な対位法は使われておらず、メロディー重視のロマン派らしい曲だった。ゴダールのうまいと思った点として挙げられるのは、印象に残りやすいメロディーを作るメロディーメーカーである点、重音技法を多く用いているが、かなりの部分に開放弦が使われており、演奏効果の割には比較的弾きやすい(と思われる)点である。例えば、第2番4楽章の冒頭部分、 ここでは、最初の5つの重音全てに開放弦が使われている!楽譜を見たときにさすがにびっくりした。

シンディングのシャコンヌは「めっちゃバッハ意識しています」という感じの曲だった。この人もロマン派の人なのだが、この曲に関しては構成が完全にバッハと同じ…。最初に動機が示されたあと、変奏曲が続きます。調も同じニ短調。中間部は長調に変わります。そして再びニ短調に戻り、最後に動機が再び繰り返される。もうそのまんまやん。ただ、曲からはロマン派の薫りが漂ってきます。もともとヴァイオリニストを目指していただけあって、この人はたくさんのヴァイオリン小品を書いています。

ヴェチェイの前奏曲とフーガは、超絶技巧を魅せてはいないが、これは難しい曲だった。前期~中期のいわゆる典型的なロマン派の曲ではあまり用いられていないような重音を用いている。だからといって曲としては変になっていない。イザイとも方向性は違う。ちょっと表現に困るのだが、いい曲であることには間違いない。

前のヴェチェイの曲とは打って変わって、リュバンの幻想曲は華やかな技巧がとても目立つ曲である。ヴィエニャフスキを思い起こすような華やかな重音技法、左手ピッツィカート、トリルなどなど超絶技巧のオンパレードである。とても弾けそうにない…

最後のヨアヒムであるが、正直この人の作曲は好きではなかった。超絶技巧を使う割に、パガニーニやヴィエニャフスキのように演奏効果が最大限生かされていないのである(あと冗長)。ただ、今回ピックアップされているスコットランドの調べに関しては、そのような技巧はなりをひそめており、バックグラウンドで流れていてもおかしくないような暖かな雰囲気が漂う曲だった。

ゴダール、シンディングに関してはこれ以外にもいい曲があったので今度紹介しようと思う。
ガラクトースという単糖に対してヒトの細胞は実に不思議な応答をしてくれる。同じ単糖であるグルコースとは全く異なる挙動を示すのだ。

ガラクトースの話に行く前に少しグルコースの代謝について話しておこう。グルコースは細胞に取り込まれた後、解糖系(Glycolysis)を経て乳酸として代謝される、もしくはTCAサイクル・電子伝達系を経ることによってエネルギー源となりうる。

低酸素下やがん細胞においては、ミトコンドリアの機能が抑制されていることがしばしばある。この時細胞は解糖系に代謝をシフトさせてミトコンドリアの電子伝達系の抑制が働く。 しかしながら、ガラクトースを細胞に投与すると、細胞は解糖系のみでは増殖できない(らしい)。そのため、がん細胞にグルコースを抜いたガラクトース入りの培地を用いて培養すると、増殖がストップするのだ。また、解糖系を用いるだけでは細胞が増殖できないという性質を用いて、電子伝達系の活性を評価するシステムとしても用いられている。

ガラクトース培地では電子伝達系を用いないと細胞が増殖できない理由は(おそらく)次のようになっている。ガラクトースからグルコース-1-リン酸(Glucose-1-phosphate)に代謝されるスピードが遅く、解糖系のみでは細胞のATP需要に追い付かないためである(1)。 ガラクトースはLeloir pathwayを経ることで解糖系におけるグルコースの中間代謝物であるグルコース-6-リン酸に代謝される(Fig. 1)。その際1ATPを消費するが、グルコースがグルコース-6-リン酸に代謝されるときにもATPを1つ消費するため、グルコース・ガラクトースともに解糖系により生成されるATPは同じ2つである。 Fig. 1 ガラクトース代謝におけるLeloir pathwayと解糖系のつながり

おそらく、どの酵素が律速になっているかどうかはまだ調べられていないのではないのだろうか(調べが足りてない可能性もある)。

このように、グルコース以外の単糖を用いると解糖系だけでは細胞(とくにがん細胞)が増殖できないという現象は覚えておいて損はないだろう。

引用文献 1. Robinson, B. H., et al. "Nonviability of cells with oxidative defects in galactose medium: a screening test for affected patient fibroblasts." Biochemical medicine and metabolic biology 48.2 (1992): 122-126.

参考文献 1. Reitzer, Lawrence J., Burton M. Wice, and David Kennell. "Evidence that glutamine, not sugar, is the major energy source for cultured HeLa cells." Journal of Biological Chemistry 254.8 (1979): 2669-2676. 2.
Aguer, Céline, et al. "Galactose enhances oxidative metabolism and reveals mitochondrial dysfunction in human primary muscle cells." PloS one 6.12 (2011): e28536. 3.
Rossignol, Rodrigue, et al. "Energy substrate modulates mitochondrial structure and oxidative capacity in cancer cells." Cancer research 64.3 (2004): 985-993.