Classic Pro CEMPW100をMicroDotのマイクで使ってみた
【ご注意】本記事は製品を販売店の動作保証外の環境で使う話で、一部に製品を分解して内部を改変する内容を含みます。よって、本記事を参考に同じ製品を買い求めたら書いてある内容と違うとか、改造したら製品や相手の機器が壊れたとか、そのような苦情を販売店であるサウンドハウス様に入れることはお止めください。本記事を参考に販売店推薦の組み合せ以外で記載の各機種をお使いになる場合や、修理や改造を行う場合は、皆様の自己責任でお願いいたします。知人に小さなマイクのお薦めを聞かれ、AKGのラベリアマイクLC617 MDが安くなっていたので推薦したところ、買ったが音が出ないとのこと。このマイクの出力はマイクロドット端子でミニXLR(TA3F)との変換コネクタ(MDA1)が付属します(*1)。これを一般的なXLR3pin/48Vファンタム電源仕様のミキサーにつなぐためにClassicProのCEMPW100というファンタム電源変換アダプターを使っています。現物を見ないと何とも言えない部分が多いので送ってもらいました。マイクのテストに使っているFOSTEXのFM-1という電池式のマイクプリにつなぐと、最初チャージされるような微かな音が一瞬するのですが、出力音がものすごく低くて到底使える状況ではありません。手持ちの変換アダプタAUDIX APS910につなぐと正常に音が出るため、不調の原因はマイク側ではなくCEMPW100のほうにあるようです。CEMPW100は同ブランドのイヤーセット・ラベリアマイクCEM1-AK専用で他の製品での使用は動作保証の範囲外です。しかしCEM1-AKの最後のAKは出力コネクタのピンアサインがAKG互換ということを示しており、であればCEMPW100もAKGのマイクで使えるはず、と思っていました。AKGのベルトパック型送信機DPT70の説明書によると、AKGのワイヤレスマイクのピン配置(TA3F)は次の通りです。1 GND2 SIGNAL3 DC(+4V)各ピンの相対位置が標準サイズのXLRと違います。大半のラベリアマイクのヘッドカプセルはDC+3~5V程度で動作します。LC617 MDはMicroDotなので2線式ですからDCは信号線に重畳されて送られるはずです(交流である音声信号と直流であるマイク電源はコンデンサで分離できる)。テスターでMDA1のピン接続を調べてみると、TA3Fの1番ピンがMDA1の外周とMicroDotコネクタのシールド側につながっており、2番ピンと3番ピンはどちらも芯線につながっています(=2番ピンと3番ピンはショート)。CEMPW100は出力コネクタ側のネジを外すと基板全体を引き出すことができます(配線を強く引っ張ってTB3Mコネクタから配線がもげると修理不能になるのでご注意)。値段からしてもっと単純な中身を想像していたのですが、予想に反してトランジスタやCRのチップ部品が実装された部品点数の多い基板です。さらに驚くことに、基板を引き出した状態でファンタム電圧をかけるとLC617 MDが動作して音がちゃんと出るのです。しかし内部に押し込むと動かない。基板の端に4つのランドがあって、それぞれLED/VCC/IN/GNDの表示があります。TB3Mコネクタからの白、黒、赤の3色の配線のうち、白(2番ピン)がINに、黒(1番ピン)がGNDにつながっていて、VCCには何もつながっていません。写真のように赤い線(3番ピン)が余っています。この赤い線が未接続なのが動かない原因(配線忘れ)で、これをVCCに配線するのか?とも思ったのですが、原状未接続のままでも音が出ているのでそうではありません。この状態でマイクを繋がずにTB3Mの電圧を測定してみますと(*2)、1(黒) GND2(白) SIGNAL/DC(+3.55V)3(赤) N.C.でした。CEMPW100の現物は目の前の一点しかありません(←後日談で検証しました)、これから推測するとCEM1-AKも2線式マイクのように思われます。基板上のVCC端子には5.1V出ていました。未使用の端子があるのは、ここの配線を変えることでTA4Fや3極ミニプラグ、ヒロセ4pinコネクタ等を使った他のラベリアマイク用にも転用できる汎用変換基板として作ったためでしょう(*3)。動かない原因ですが、赤い線の先端がなんら絶縁されず剥き出しなので、これがコネクタの内側か基板のどこかに触れて3番ピンがGNDとショートしているのではないかと思われました。というのも、前述のようにMicroDotへの変換アダプタMDA1でミニXLRコネクタの2番と3番が短絡するからです。試しに赤い線の先端を基板のGNDに落とすと不調時と同じ状況が再現します。使わない線を残しておくのは不思議ではないものの(むしろ改造派にはとてもありがたい)、絶縁処理をせずに放置しているのは疑問です。しかし、もしかするとCEM1-AKで使った場合はマイク側のTA3Fコネクタで3番ピンが無接続になっていて問題にならないのかもしれず、製品不良とも言い切れません。もう1個同じ製品を買ったらそちらは線の位置が良くてLC617 MDがそのまま動くかもしれません。いずれにせよCEMPW100の保証外の使い方をしているので文句を言う筋合いがありません。対策としては、赤い線の先端を自己融着テープで覆い、基板を出し入れするたびに折れ曲がって負担がかかる配線部分を付けなおしホットボンドで補強しました(ここが原因である可能性も当然ある)。これで半日ほど複数のミキサーにつないで様子をみましたが正常動作したので持ち主にお返ししました。■おまけAUDIX APS910のほうもマイクを繋がずに電圧を計ってみました。1 GND2 SIGNAL3 DC(+3.16V)こちらのほうがAKG DPT70の説明書にあるピン仕様に忠実ですが、CEMPW100とピン配置が違っても動いたのはLC617 MDが2線式であるためです(*4)。分解してみるとトランスが入っているのが見えます。しかし基板を完全に引き抜くこともTB3Mコネクタを取り外すこともできないので、マイク側がどういう接続になっているかわかりません。出力側から覗き込んだ配線から推測すると、こんな感じ?(1番ピン以外は見えている範囲から導通が無いので白線の先にも何かあるはず)。なお、APS910は現在新型になっていて、おそらくCEMPW100と同じようなトランスを使わない仕組みに変わっているのではないかと思われます。手持ちの古いSennheiser MKE2+MZA-10UとLC617 MD+CEMPW100の音を比較してみました。【音声比較】AKG LC617 MD+CEMPW100/APS910(旧) (AAC)Sennheiser MKE2+MZA-10U (AAC)録音に使用したのはZoom F8です。ローカット無し。MKE2のほうがテレビやラジオ向けに人の声を録音するのに向いている特性で、LC617のほうが周波数のレンジ感が広いナチュラルな音のように思いました。声量を揃えて比べるとホワイトノイズの量はLC617のほうが多め。ケーブルはMKE2のほうが太いが不要輻射に対するシールド性能はLC617のほうが上。どちらもバックエレクトレットでカプセルのサイズはMKE2のほうが小さいです。CEMPW100とAPS910も音が違います。LC617 MDで聴き比べると、CEMPW100よりAPS910のほうが音量が低いです。CEMPW100のほうが明瞭度が高く元気な音で、APS910は落ち着いたトーンのちょっと暗い音に感じられました。(*1)サウンドハウスでMDA1を単品で購入すると7,580円なのに、MDA1が付いてくるLC617 MD(ベージュ)は6,380円(定価は46,750円)で買えてしまう。LC617のブラックは32,800円。ベージュは『衝撃特価』ですね(2022年4月11日現在)。(*2)FOSTEX FM-1は電池駆動のマイクプリなので、元のファンタム電圧が通常のミキサーやオーディオインターフェースより低い可能性があります。したがって、本記事中に記載の電圧は他の機材環境では異なる可能性があります。(*3)この基板、市販のECMカプセルを使ってダミーヘッドマイクを自作する方や、パソコンやスマホ用に売られているプラグインパワー仕様の2極・3極マイクをXLR3pin仕様のオーディオインターフェースやミキサーにつなぎたい方にはメチャクチャ都合の良い仕様です。昔、同じ用途のためにボタン電池とDCカット用のコンデンサを使って機材を自作したことがありますが、この基板を使えば簡単に解決できますね。値段も安いし。(*4)ベルトパック送信機に2線式のマイクをつなぐ場合、2番ピンと3番ピンをショートして使ってね、とはAKG自身もアドバイスしているそうで。ケーブル特注日記!AKG C409 金管楽器用コンデンサーマイクの差し込みプラグをAKG ワイヤレス PT40で使えるようモノラルミニフォンからミニXLRに変更!(音光堂ブログ )http://onkodo-blog.com/?p=1896しかし、CEMPW100は3番ピンにDC出力があるという記事もあります。製造時期によって違う??エレコンマイクユニットをファンタムで使う(Gun3s Audio Workshop)https://g-works.at.webry.info/201501/article_1.html■後日談もう一個買っても本当に同じように絶縁されていない赤い線が余っているのだろうか?という謎が気になり個人的にCEMPW100を買ってしまいました。さっそく前回使ったFM-1を使って同じ状況で電圧と導通を測ってみます。1 GND2 SIGNAL/DC(+3.49V)3 N.C.LC617 MDをつなぐと正常動作です。分解してみました。あっ!赤い余り線が無い!!2本分解しましたが、どちらにもありません。白と黒の2本だけ。どうやら先日の赤い線が余っていた個体のほうがイリーガルだったようです。基板写真を見ていて、R3からC4の端につながっているパターンをカットし、空いているVCCのランドに余っている赤い線をはんだ付けすればAPS910と同じピンアサインになってAUDIX ADX-40でもLC617MDでも両方で使えるのでは?と考えていたのですが、アテが外れてしまいました。TB3Mコネクタをラジオペンチで掴んで回そうとしてみましたが回らず。となるとあとから配線を追加するのは不可能に思えます。不具合の原因だった赤い線、個人的には無いと残念だなあ。■さらに後日談その後、ECMカプセルを使ったダミーヘッドマイクをバランス出力化するために部品取り需要で更に2本、CEMPW100を購入しました。あっ!赤い線がある!!しかも2本とも!!やはり、リード線先端の絶縁処理はされていなくてMicroDot変換コネクタMDA1を使った場合はショートの可能性があります。しかしこうなるともう赤い電源線の有無は運でしか無い印象。5本取り寄せて3本にあって2本には無かったという結果(*5)、CEMPW100をどう使いたいかでまるきり逆の見方になってしまいますね。悩ましい。前取り寄せた2本を部品取りに回し、今回取り寄せた赤線付きの2本をAPS910互換に改造することにしました。前述のようにC4/C5が音声信号を通すコンデンサーと思われますので、R3からC4へのDC給電用のパターンをカットし、赤い線を空いているVCCに繋ぎました。これでAUDIX ADX40は動くようになりましたが、LC617MDが何故か動きません。赤線をVCCではなくカットしたR3の端か、下の写真のように空き端子であるLEDにつなぐと動作します。不思議ですが、2本ともそうでした。この状態ならADX40もLC617MDもどちらも動きます。R3/VCC/LED端の違いはチップ抵抗だけのはず?ですが、上記の配線変更後にLED端子の電圧を測ると無負荷で4.43〜4.16V位、ADX40接続時3.85V、LC617MD接続時2.68Vまで下がりましたので、テスト用に使っているFOSTEX FM-1が電池式なせいでLC617MDの負荷だと動作電圧が下限ギリギリになるのかもしれません。他のミキサーやオーディオインターフェースでも動作確認できましたのでホットボンドで固めて持ってないから確認のしようがないけど本来のCEM1-AKでは使えなくなった可能性が高いので、テプラを貼って注意書きしました。2線式ECM用に基板を流用する話は別記事にしました。(*5)どれくらい売れている製品なのかはわかりませんが最初の1本から最後の5本目を取り寄せるまでの期間は2ヶ月以内でした。関連記事:ECMカプセル(ダミーヘッドマイク)用のファンタム電源兼バランス出力変換BOX(がんくま)