大半のマイクはまったく使用されることもなく死蔵されているが少しはサークルで使ったことがある、または使う予定があるものについて書きました。オーディオドラマでは掛け合いの芝居を収録をするので同じマイクが最低2本必要になります。

■ラージダイアフラムコンデンサー
audio-technica AT4050/CM5

現在の主力コンデンサーマイク。ただしこれで台詞を録音して完成した作品はまだ無い(サークル作品以外の仕事録音では何度も使用)。万能系で声から楽器から何でも録れる。一聴すると特徴が無さげで地味な印象だが、よく聞くと密度感のあるしっかりした音でノイズレベルも低く加工に良し、そのまま使うも良し。下位機種のAT4040と比べるとスイートスポットを離れた時の音質変化のシビアさが緩和され中低音に腰があって安定感が向上。無印AT4050とCM5の違いは基板の部品が表面実装品かリード部品かの違いだとかでCM5のほうが現行品の無印より古い初期形だが両者の音の違いを顕著に感じたことはない。無指向、単一指向、双指向の3段切り替え式。同人オーディオドラマサークルとしてはこれ持ってれば他のマイクは要らないんじゃないかと思うほどの優等生。3本所有。

CAD M179

AT4050の前の主力コンデンサーマイクで2012年に輸入し複数のサークル作品の台詞録音に使用(その前はMXL V67Gを使っていた)。指向性の切り替えが無指向、単一指向3段、双指向と多様なのが特徴。同様の特徴を持つAKG C414より安価だがC414と違ってカプセルはノイマンタイプ。指向性を切り替えても音質の変化が少ない。内蔵アンプに単品のFETではなくオペアンプを使用しているのも特徴で、他のマイクより消費電力が多め。負帰還を強めに掛けて周波数特性の改善や非直線性歪みの低減を狙っている。このため音に癖がなくS/Nも良く何に使っても実用上の問題が無いが高級マイクの個性みたいな要素が無い。ビンテージマイクのRCA77DXに似せたと思われる卵型の外観が近年のマイクとしては異端で見た目で信用されにくいのが難点。コンパクトでノイズも少なく指向性を絞れるので効果音録音に向いているマイクです。楽器録音や双指向でのトーク番組収録用にも使用。2本所有。

Milab VIP-50

ヨーロッパの放送局では定番マイクのひとつらしい。日本のスタジオではほぼ見かけない。これも指向性の切り替えが無指向2段、単一指向3段、双指向と多様なマイクだが、手持ちの個体は双指向で使うと表と裏の音質に差があるので単一指向か無指向でしか使わない。ノイマンU87iと比べると爽やかな印象を持っているけれど指向性の切り替えでだいぶ音の印象が変わる。広めのカーディオイドだとあっさり目のナチュラル感ある音でオフ目になると低音の痩せが顕著だが、狭指向にすると密度感と低音のある押しの強い音になってオフ目でもあまり痩せない。ローカットスイッチがすごくバッサリ効く。M179と比べるとウォームな感じ、AT4050と比べるとビビッド感(解像度)に劣るが厚みはこちらのほうがある。1本しか持っていないためオーディオドラマの収録では使わず、仕事の声録音でもU87iやAT4050のほうが使い慣れているので利用頻度が極めて低く滅多に出番無し。

Studio Projects LSD2

FMステレオラジオドラマ制作時代に台詞の定位録音で何度か使ったノイマンSM69が欲しいけど高価過ぎて買えないので代替品として買ったマイク。設置面積極小でX-YまたはM-S方式のステレオ録音ができる(ステレオドラマなら1本で全員の芝居が録れる)。SM69と同様に上下に二つのダイアフラムが並んでいて上側が回転して向きを変えられる仕組み。ダイアフラムごとに無指向、双指向、単一指向の切換スイッチがある。953gと重くてデカく、専用のマイクケーブルが要る。その重厚な見た目に反して音質は中低音のふくよかさも密度感も薄く、手持ちのコンデンサーマイクの中では少々物足りない音に思われる。定位録音は収録の前に演者の動きを決めておかないといけないのでうちのように録音当日ギリギリまで台本が完成しないサークルには敷居が高く、いまだ実現していない。ステレオの効果音録音では何度も役に立っている。1本所有。

BM800改

改造ブームで有名になった格安中華マイクで私も改造して使っている。写真の黒い個体はソースフォロワーにしてある。改造前の音質はとてもドラマの声収録には使う気になれないものだが改造後はどうにか使える。サイドアドレス型マイクではあるが厳密に言えばこのマイクがラージダイアフラムの範疇なのかは疑問が残るところ。製品の個体差が大きく、対策しても胴鳴りが残るのが欠点。1本2000円程度で買えるため、埃にまみれたり水濡れの危険性がある効果音収録にも恐れず使える。これはこれで当サークルには必要なマイクでとても重宝している。4本所有。

OCTAVA MK-319

ロシア製。変なマイクマニアの中では定番品。安価な価格帯のラージダイアフラムコンデンサーマイクの中では際立って個性的な音質で、高域の解像度が高くないので尖った感じがなくソフトな音になる。シャリシャリキンキンさせたくない録音に使うとコスパが良いマイクかもしれない。当サークルでは布団の音を効果音として録音する時に使っている。ダイヤフラムの表面を覆う黒いカバーを取ったり、風防の内側のメッシュスクリーンを取ったりして改造すると明瞭度が上がって化けるらしい。1本所有。

■ダイナミック
sennheiser MD422U

2023年作「新作はまだか」の台詞収録で使用。クジラマイクとして有名なMD421Uの後継品として作られたが、あまり売れなかったので早々に廃番になった珍品。後述のMD441Uと同様にハムキャンセルコイルを内蔵した複雑な構造のダイナミックマイク。MD421Uと聴き比べると高域のブライト感が薄い(ドンシャリ感が薄い)ように思えるが、それが評価がイマイチだった理由だろうか。オーディオドラマの台詞を録るとSM58のようなボーカル用マイクと違って落ち着いた感じで個人的には結構好き。単一指向性でコンデンサーマイクより感度が低いので防音がやや甘いスタジオでも使いやすい。何の録音にも向く万能系マイクだと思う。難点はマイク本体もマイクホルダーも壊れたら替えが効かないこと(MD421と同じ構造なのでロー抜けします)。できればもう1本欲しい。3本所有だが1本は部品取り。

sennheiser MD441U

通称サンマ。MD422Uに比べると胴長で重く、狭い録音ブースだと設置に難儀する。単一指向性で指向性がかなり鋭い。ダイナミックマイクにしては近接効果が薄く正面ならややオフから喋ってもコンデンサーマイクのように声を拾う。マイク本体に高域ブーストスイッチと5段階のローカットスイッチがあって卓EQを使わずに音質を変えられる仕組みがある。MD422Uは明快な音だがMD441Uは重心が低く高級感がある音で出力もMD441Uのほうが低い。最近の高域特性が伸びたコンデンサーマイクと声を録り比べるとビビッド感が抑えられソフトで洗練された印象の音になる。そのうちこれでドラマを録音してみたいと思いつつまだ実現していない。2025年リリースのドラマCD作品「いつもと少し違うカレー」でセリフ録音に利用してみたところ、S/N的に不利という欠点を抱えるものの低音男性声にはすこぶる相性が良いことがわかった。2本所有。

【関連記事】
ダイナミックマイクでオーディオドラマの台詞収録をしてみた

AIWA DM-68A

私が最初に手にした業務用品質のマイク。1960年代にリボンマイクからより高性能なダイナミックマイクへ移行した頃に生まれ、1980年代位まで国内の放送局で広く使われていた国産のダイナミックマイク。高校野球の会場アナウンスやラジオの渋滞情報でお馴染みの交通センターのマイクも長年これだったらしい。単一指向性で、側面の金網部分も息を当てると吹かれるので指向性を作るために使われているようだ。感度は低め。人の声を録音する場合と音楽を録音する場合で特性を切り替えるスイッチがある。ダイナミックマイク同士で比較すると、やや圧縮がかかったように聞こえるSM58に対して抑揚感が薄くナチュラル方向な音で近接効果が薄く低音の減少がゆるやか。現代的なコンデンサーマイクと比べると音の彩度や周波数帯特性に劣り枯れた印象の音ではあるが、元々ラジオ放送用に作られたマイクなのでこれで録音した人の声を他の音と混ぜた状態で聞くと意外と聞き取りやすい。生粋のラジオドラマ用マイクと言えるかも(?)。現代の台詞録音の仕事ではコンデンサーマイクが主体でこのようなマイクはもはや使われないため、これもいつか当サークルのドラマ録音に使ってみたいと思っている。2本所有。

AUDIX OM3

ドラマの台詞録音には使っていないが、稀にご相談がある朗読会や歌ライブ等のステージPA用の主力ダイナミックマイク。その分野でのド定番SM58を持っていないのでこれを使っている。SM58より指向性が鋭く音はこちらのほうがナチュラルに思える。感度は低め。全体に高域寄りで近接効果が大きく口もとに近付けたほうがしっかり低音を拾う。丈夫で使いやすいマイクであることは間違いない。4本所有。

audio-technica AT-PV500

こちらもステージPA用途でOM3を補佐する役割のダイナミックマイク。スイッチ付きで吹かれやグリップノイズに強く、手に持つとしっかりとした重さがある。手持ちのハンドマイクの中では感度が高く、周波数帯域も広めなので会場によっては帯域の端にある定在ノイズを拾う時がある。メーカーでは高級カラオケマイクとして売っていたが外観も華美ではなく普通に使いやすいハンドマイクだと思う。3本所有。

SHURE SM57

うちでは珍しいド定番マイクのひとつ。近接効果を利用する効果音収録用途に加えて、イベントや配信番組の生演奏で楽器録音用に使用(定番なので文句が出ない。実際に誰もが聞き慣れた音で拾うし設置も楽)。しかしMD422Uと聴き比べるとSM57のほうが癖が強い音に感じられる。2本所有。

SAMSON R21s

スイッチ付きの雑用マイク。安価なマイクなので特に音に厚みや高級感があるわけではなく、高域のヌケも微妙に良くないが小規模イベントの司会MC程度ならこれで問題ない気がする。Classic ProのCM5も持っているがあっちを買うくらいなら200円足してこっちを買うほうが……。感度が高めでHAの利得が低い機器でも使いやすい。誰が見ても使い方がわかるごく普通のマイクでトークバックや連絡回線用、予備用として現場に持って行く。2本所有。

beyerdynamic M58

胴が細くて長く手に持って相手に向けやすいインタビュー用のダイナミックマイク。メーカーもENGつまり放送取材用に作ったと明言しており音質は低音控えめで人の声が聞こえやすいようにカリッとしており振り回してもグリップノイズがほとんど入らない。感度は低め。ステージボーカル用のダイナミックマイクが単一指向性なのと違って無指向性なのも特徴的。日本の放送局ではインタビュー用にデザインがもっとスッキリしたSHURE SM-63Lか、大きな風防を付けても見かけが良いsennheiser MD431IIが使われていてM58は見かけない。ドラマの台詞録音には向かないので、インタビュアーがマイクフォローをするような同録仕事の依頼があれば使うのだが、そういう依頼が無いので利用頻度は極めて低い。2本所有。

■スモールダイアフラムコンデンサー
M-AUDIO PULSER-II

スモールダイアフラムのステレオペアマイク。透明感に劣り個人的にはさほど好きな音質ではないが、軽くてコンパクトかつ専用の収納ケース入りで運用上の取り回しがしやすい事から利用頻度が高く、主力マイクとなっている。ステレオハンガーを使ってホールや屋外でステレオ録音をしたり、スタジオではない一般施設でのワークショップで声を録音したり、ピアノ録音に高音用と低音用で分けて立てたり。2本所有。

audio-technica AT857QMLa+AT8614

40cmほどの細いアームの先に小形のECMカプセルが付いた会議用のグースネックマイク。人の声を拾う事に特化しているので単体で音を聴くと低音の豊かさが無くしょぼいがネット配信用に使うと口元に近い事もあり声の明瞭度が高く音質が悪いパソコンのスピーカーでも聞きとりやすい声音になるので配信用の主力マイクとなっている。見た目も撮影時に顔が隠れる面積が少なくスマート。AT8614は台座部分。4本所有。

SANKEN CUS-105W

グースネックマイク。AT857QMLaだけでは本数が足りない時に使う。音質はAT857よりこちらのほうが優秀で台座にトランスを内蔵しており放送局っぽい音がする。グースネックの先がダブルカプセルになっていて1台につき2つのマイク出力がある。フェイルセーフ設計なのか設置場所が狭い所で二つの楽器を録音する用途なのか中古で買った自分には理由がわからない(国会中継用のダブルカプセル特注マイクMUW-105と型番が似ていること、MUW-105の先代のAIWA DM-99がVIP用マイクとして世界初のダブルカプセルマイクとして誕生した経緯を考えるとフェイルセーフ用途のような気がします)。3本所有。

SANKEN CSS-5

X-Y方式のステレオ(Wide/Normal)とモノラルの切換式ガンマイク。同録業務と効果音収録の主力マイク。音質はブライト感があり声の明瞭度に優れサイドも良く切れる。ふくよかさはあまり無い。難点はガンマイクとしては重いことと配線が5ピンケーブルになること。1本所有。

SANKEN CS-30

モノラルガンマイク。マルチカプセルでスーパーカーディオイドに生じる後方指向性を減衰する工夫がされている。CSS-5と同じ系統のブライト感ある音質だがサイドの切れはこちらのほうが上で、屋内の効果音収録で多用している。1本所有。

RODE NTG-1

モノラルガンマイク。上記のSANKENのガンマイク2種に比べると明瞭度や指向性の鋭さに劣るが、軽くて小さく取り回しが楽。騒音の中で声を録るというガンマイクの用途を考えず、単純にスモールダイアフラムのマイクとして聴くとこちらのほうがナチュラルな普通の音質に思える。指向性のゆるさを活かして調理音や食事音、ガヤなどの録音に使用。2本所有。

sennheiser MKE2

ワイヤレスでも有線でも使っている主力ラベリアマイク。聴感上は後述のLC-617MDのほうが周波数特性が広いように思うが、声だけに限った明瞭度でいえばこちらが上で同録用や仕込み用でよく使う。6本所有。

AKG LC-617MD

有線ラベリアマイク。マイクヘッドのサイズがMKE2より大きい。比較的新しいマイクなのでMKE2よりインターフェアーに強い。MKE2より音に艶があり低音まで拾うのでマイクを寄せての効果音録音や楽器集音用に使用。しかし声の明瞭度ではMKE2に劣る。2本所有。下の写真で肌色がLC-617で黒いのがMKE2。


Que Audio DA CARPO DA12BE

耳掛け式の口元用小型ラベリアマイク。キーボーディストなど両手が塞がる人のMC用。DPAやCountrymanほど有名な製品ではないがカプセルサイズの割にはかなり高音質だと思う。利用頻度は極めて少ない。1本所有。

AUDIX ADX-40

吊り下げ用マイク。天井から垂らして集音する用途に特化していてケーブルを上からいじってマイクの向きが変えられる仕組みになっているが利用頻度は極めて少ない。カプセルのコンパクトさを活かしバイノーラル用途に使えないだろうかと試してみたが単一指向性でマイクに近い音の録音には向いていなかった。2本所有。

セリアZY-50改

100均ショップ(セリア)で売られている丸七株式会社発売のカナル型イヤホンに無指向ECMカプセルのXCM6035を埋め込んで改造した簡易バイノーラルマイク。ステレオのプラグインパワーで動作する。部品代だけなら400円程度で作れる(手間がかかるけど)。すごく良い音質とは言わないが意外と低音も拾うし無指向カプセルの音でいかにもなバイノーラルっぽさがある。入浴や洗髪のバイノーラル音を高価なダミーヘッドマイクを水に浸けて録音するわけにいかないので作ったが、人目のある混雑した場所で目立たず現場ガヤを録音するのにも役立つので壊れたらまた作りで常時2〜3本は使える状態にある。ファンタム電源とプラグインパワーの変換BOXを持っていると通常のオーディオインターフェースにも接続できる。

(がんくま)