前回のリモートコントローラーCSR-1の修理に続き、後期型本体の修理を試みました。

■ACアダプターの購入
欠品していたACアダプターは汎用品を購入しました。STD-15026(ATS040T-A150) 15V 2.67A出力です。トモカ電気ラジオデパート店で購入。このアダプターを使うことで、特にノイズなどは感じません。

本体の修理


本体の構造はフロントパネルとリアパネルの二つのコの字型の金属板で内部の基板を固定する仕組みで分解のためには全てのツマミやジャックのネジ止めを外す必要があります。メイン基板は2段で、下基板にはNEC製の12Vリレーと、その駆動用の表面実装トランジスタが大量に並んでいます。基板裏にオペアンプ。



上基板には制御用マイコン(ATMEL AT90S8515)、リモートコントローラとの通信IC(Ti SN75165B)、メーター表示用DSP(ALESIS AL3101CG)、メーター表示用A/D(ALESIS AL1101G)、デジタル入力用のD/A(AKM AK4117VF,AK4396VF)、低周波増幅とローパスフィルタ用のオペアンプ(MC33079など)、制御信号や表示信号を変換するシフトレジスタ(74HC595D)が載っています。




背面パネルのアナログ音声ジャックも別基板で、各基板はフラットケーブルやピンコネクタで接続されています。フロントパネル裏のピークメーター基板にはLch/Rchで各30個、合計60個のLEDが付いていて5ピンのケーブルで上基板とつながっています。



このうち音量で言えば低い方から8個以上が点灯しっぱなしです。メーター自体はオーディオ信号に反応しますが信号があっても無くても常に下位8個は点灯し、唯一、通電直後だけは左から11個目まで点灯した後に一旦すべて消灯し、それからLchのみ8個以上が点灯します。



本機にはメーターの校正機能があり、基準信号入力時にキャリブレーションボタンを2秒以上押すと、そこを-18dB(真ん中15個目のLED)に合わせられます。しかしどのようにキャリブレーションを使っても下位8個が消せません。当初はLchのみ異常でしたが何度も通電しているうちにL/R両方同じ現象が起こるようになってしまいました。

このメーターは出力ボリュームやMUTEボタンとは無関係で、常に入力音量を表示し続けます。デジタル入力でTOSを選ぶと高域の無いピンクノイズのようなもさっとした音が出っぱなしだったので、最初はそこを疑いましたが回路を追った所、D/Aして一旦アナログ音声にしたあと、メーター表示のためだけに再度A/Dしていることが分かり無関係でした。

■電源の不安定さ対策


前回書いたように、後期型は単一電圧から複数の電圧を取り出すために前期型より電源回路が複雑化しています。電流モード昇圧コントローラーTPS40210によりFET Si4480dyをスイッチングしてトランスで分圧し、逆流防止のショットキーダイオードSS26を介してオペアンプ用の±15Vと制御系用の+5Vを取り出しています。



前期型は7815と7915による正負電源でした。壊れると入手が難しい。自分で作れる人には簡単な回路なのですが。

[参考]
前期型電源のピンアサイン(gearslutz)
前期型用の互換電源

+5Vをオシロスコープで見るとノイズがあります。ハムのような短く規則的なものが出る時と、長周期の非常に低周波なノイズが乗る時があり、後者が出るときは点灯したままのメーターが明滅します。短いものだと点滅はせず点灯しっぱなしです。メーター表示用のA/D AL1101Gもこの5Vで動いているので、このノイズの影響でLEDが消えないのだろうか?

まず、電源回路の電解コンデンサー(Chang製)を5V系以外も含めて全て交換してみました。アースの面積が広い多層基板で、はんだシュッ太郎では部品を抜くのが厳しく何箇所かランドを破損してしまいました。これの修理後に電動はんだ吸い取り機を購入。しかしノイズは消えません。基板を押すとノイズが変化するので、基板の端に並んでいるチップ部品のはんだ付けを全てやり直しました。



すると電源の不安定さやデジタル入力のノイズについては改善しました。しかしメーターは依然として下位LEDが点灯したまま。

■メーター表示回路を追う


本機のメーター表示は上基板のヘッドホンとラインアウト用のオーディオ回路からA/D AL1101Gと、DSP AL3101CGを経由してマイコンAT90S8515に送られ、そこからシリアル信号でメーター基板のシフトレジスタ74HC595Dに送られる仕組みになっています。AL1101GとAL3101CGは本来音声機能もあり、このシリーズだけを使った音響機器もありますが、本機ではDSPによるメーター表示機能のみを使っており音は出力しません。原因切り分けのためにAL1101G周辺のパターンをカットしてみました。



・AL1101Gの音声入力を切る
→下位点灯の状況変わらず。
・REF INを切る
→音声表示のレベルが上がってしまう(切る前よりメーターが上の方で振れる)。
・VAを切る
→下位点灯したままで、音声入力への反応がなくなる。
・VDを切る
→LEDが全点灯する。
・MTROUTを切る
下位8ビット点灯したまま。
・AT90S8515のRESETをLOWにしてリセットかけてみる
→反応変わらず。通電直後は全消灯、その後下位点灯。

MTROUTを切る、すなわちAL3101CGの入力を切っても下位8個が点灯したままということは、マイコン側やLEDドライバ側でなければ、AL1101CGのA/DデータをDSP処理してシリアル通信でマイコンへ送っているAL3101CGには原因の可能性がある。一方、通電直後に一旦LEDが全消灯することから、LEDやLEDを駆動しているシフトレジスタ74HC595Dには異常が無いと思われる。AL3101CGを交換して現象が同じならマイコンに原因がある可能性が高まるが、AT90S8515のファームウェアを読み書きする手段が無いので交換は不可能。

eBayにAL3101CGとAL1101Gの出品があったので発注してみました。3月6日に発注して到着は4月10日過ぎ。



まずAL3101CGを交換してみました(この修理の後、クリームはんだを購入しましたorz)。が、下位8個点灯の状態は変わりません。ということはマイコンか?(泣)。どうせなら、と原因の可能性は薄いと思っていたAL1101Gも交換するべく取り外しました。



取り外しているのでMTROUTが無いのですが、この状態で電源を入れるとメーターが全点灯します。MTROUTをGNDに落としても変わりません。前回と反応が違うなあ・・・と、通電直後にキャリブレーションを押すと下位8個の点灯状態が消えた。あれ?治った??

しかし、新しいAL1101Gを貼り直すとL/Rともに表示が振り切ります。全点灯継続ではなくピーキーに振れている感じです。発振しているのかなあ。C19/20/58/59の無極性10uF/35Vを触ると乗ったり乗らなかったりしたので、これを交換したり、いじくり倒しているうちにまったく音声入力に反応しなくなりました。MTROUTを触るとメーターが反応するので死んだのはAL1101GでAL3101CGは生きているようです。



はっきりとはわかりませんが、AL3101CGかAL1101Gのどちらかが表示異常の原因であったようです。メーターの動作は正常に戻ったものの音声信号には反応しません。


AL1101Gの取り寄せにまた時間がかかるけれど、どのみち普段これのピークメーターを見て作業しているわけではないので、ひとまずこれで修理を中断し組み立てることにします。半年も分解したままだと組み立て方を忘れてしまう。

■スピーカートリムのボリュームにご用心


上基板に合わせて下基板のカップリングの47uF/50V無極性コンデンサーもMUSEに交換しました。横幅、高さともに微妙に元のChangより増え、特に高さ方向は余裕がなくギリギリです。この交換は音質対策だったのですけれど、実のところスピーカー調整用のA/B/Cの6個のボリュームのせいで音が悪くなっていたようで、ここをグリグリすると音質が改善しました。



ジャンク品だったので長いこと通電していなかったからでしょうか。ここはスタジオ運用上、一度設定すると極力触りたくないボリュームではありますが、音質対策のために年に1回はグリグリ動かすことをオススメします。

(がんくま)