会社でも使っている01V96、小型デジタルミキサーの業界標準みたいな機種で、あちこちでとてもよく見かけます。過去にも内蔵電池が切れたり、同期基板に液体が垂れてノイズが発生したり、電源部分の電解コンデンサーが劣化してノイズが発生したりで何度か開けた経験があり、修理する個体としては今回が三例目です。例によって当記事を参考にした修理は自己責任でお願いします。


今回の個体は映像編集室で使われていたもので、Mini-YGDAIスロットにはAES/EBUカード(MY16-AE)が挿さっており、全体に使用感が少なく綺麗に見えます。音屋が録音やPAで使うときは移動やコネクタの抜き差しが多くてもっと使用感が出ますからね。


アナログのライン入力端子も酸化してませんで、中がピカピカです。全てのライン入力端子にプラグがささっていたことがわかります。一方でインサーション端子の内部は酸化しており全く使った形跡がない。


症状としては1番フェーダーのノブが紛失し、ノブを取り付ける金属板も変形していて動きが悪い(動かないわけではない)です。また、ST IN1/2と3/4の2つのツマミの軸が折れてツマミ自体も紛失しています。



サービスマニュアルによると、ST INに使われているのは部品リファレンス番号:EC301/EC302 部品番号:V3750700 型式:EC12E2410401 品名:12形エンコーダーというものです。EC12E2410401という型番で検索するとALPS電気製のEC12系というロータリーエンコーダで、パルス数24であることがわかります。残った軸の残骸を回してみるとノークリックタイプです。同じようなものを秋月電子でみた記憶があったので買ってみました。

秋月電子 ロータリーエンコーダ(ノンクリックタイプ)
http://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-06358/

秋月で売っているものの型番はEC12E2430803で、軸受部分にボリュームと同じようなネジ山が切ってあり元々付いているものと少し外見が違います。


削ったら入るだろう、とか、最悪今付いているロータリーエンコーダを分解して軸だけ移植するか、などと思っていましたが、次に寄った千石電商に軸受ネジ山が無いロータリーエンコーダが売られていました。


軸が長いものと短いもの、クリックタイプとノンクリックタイプの合計4種類で、軸が短くノンクリックタイプのEC12E2430404を購入しました。


01V96を分解し、デファインキーとST INのエンコーダーが付いている基板を取り外して破損した部品を取り外し、新しい部品と交換します。






PANやEQに付いているエンコーダーと比較すると、先端の形が微妙に違います。しかしパネルから出る軸の長さは変わらないようで、純正のツマミもちゃんと付きます。



とりあえず千石電商のサンクラタイプのツマミを挿してみましたが、ツマミが長すぎで座面が擦ります。しかもツマミが太いので操作が微妙に窮屈です。純正のツマミが上に向かって先細になってるのは訳があるんだな、と気付かされました。


ちゃんとフェーダー値も変化します。パルス数が同一なので操作感も同じはず。純正部品であるEC12E2410401の代替品として使えましたが、厳密に同じ挙動かどうかはわかりません。


フェーダーのノブ取付部の変形はペンチで挟んでジワジワと曲げ直しました。中心から外れていたのでべキッと音がしてちょっとひやっとしましたが、キャリブレーションやMOVEのチェックも無事通って問題なく動きます。



わかっちゃいるけどフェーダー下部がスカッと空間になっているのを見ると、普段アナログ音響機器ばかり修理しているので感心しますね。


過去の修理で交換した経験があるバックアップ電池と、電源部分の100μFの電解コンデンサーは、今回不都合が出ていないので触らず。多機能製品なので時間をかけてチェックしましたが動作自体に不都合は無いようです。紛失しているツマミ類を純正部品として取り寄せます。

フェーダーノブ 部品番号:WA84460R 品名:Fader Knob L_Gray/Black
エンコーダーノブ 部品番号:WB32870R 品名:Encoder Knob Gray/Gray


修理完了です。録音現場ではオーディオインターフェースとDAWが多機能化したのでミキサーを使うことが少なくなってきましたが、01V96はまだまだ現役機種なので使っていこうと思います。


(がんくま)