Seide PC-Me は低価格なLDCマイク(Large Diaphrum Condencer microphone)としては国内で最初期に普及したマイクではないかと思います。カラフルな色のバリエーションがあってポップな印象が残っています。私が持っている個体はソフ○ップ秋葉原店の中古楽器コーナーにかなり長いこと売られていたもので、ある日気がつくとジャンク品として78円になっていました。たしか売札に「マイクとしては使えません」などと書かれていたと思います。その不憫さに情が湧き思わず買ってしまい、ギャグでトークバックのスピーカーでも仕込んで使うか、と思っていたのですが、持ち帰って分解してみるとカプセルを支える樹脂製の台座のネジ穴が緩み、中でカプセルが脱落してしまってはいるものの、音はちゃんと出ることが判明。台座をホットボンドで止めてテスト用やフォーリー収録用のマイクとして1年ほど使っていましたが、また壊れてしまいました。

再破損の原因はやはり樹脂製台座のネジ穴の緩みです。ネジ穴が拡がってしまってまったく効かない状態です。
PC-Me 修理前
ネジ穴を復活させるための方法を検索すると、「プラリペア」というものを使うと良い、と書いてあるページがありました。その内容を参考に修復を試みました。
PC-Me プラリペア
最初は離形剤を塗った元のネジを雄型として穴の中にネジ山を作る方法を試みましたが、ネジ穴が小さく短いために失敗。
PC-Me ネジ穴埋め1
そこで素直に穴を埋めてみるだけにしました。プラリペアの粉末の中に硬化液が浸みていかない感じなので、最初に針の先で穴の底に硬化液を塗り、粉を半分まで入れ、硬化液を満たして針でつつき、さらに上から粉を落として溢れている液と混ぜ、パテ状に半練り状態になってから穴を埋めて硬化を待ちます。
PC-Me ネジ穴埋め2
硬化したら盛り上がった部分を削ってキリで下穴を開け、ネジを締めます。
PC-Me ネジ穴埋め3
これはうまくいきましたが、このやり方ならプラリペアではなくて2液系のパテでも良かったような?ちなみに作業中にプラリペアの粉末をひっくり返して大変なことになりました。あの小さなバケツのような容器は取り扱い要注意です。

さて、もともと台座とワイヤごとカプセルがマイク内をゴロゴロと転がっていたせいで、カプセルと基板をつなぐ2本のワイヤが破断しかかっています。できるだけ外したくなかったので今まで放置していたのですが、今回あきらめて付け直すことにしました。ワイヤの先のラグ板は外して再利用します。取り替えるワイヤには本来静電容量的な配慮も必要なのでしょうが、結果が悪かったら考えることにして、手元にあったカナレL-2B2ATの芯線を使ってみました。それでも元の線材より太いです。元のワイヤと同じく単線ではなくしなやかな撚り線です。

振動板のセンターターミナルのネジを外すとラグ板が付いていた金色のワッシャーも外れました。この振動板中心の配線を止めているネジとダイヤフラムの外側の配線を止めているネジは太さ長さが微妙に違います。

ワイヤの長さを合わせて作り直します。ラグ板側は半田付けした後にリューターで削って形を整えています。左側が元のワイヤで右側が作り直したワイヤです。
PC-Me ワイヤ比較
組み立てます。幸い、配線を元通りにつなぐと無事に音が出ました。
PC-Me フロント側基板
PC-Me リア側基板
が、台座を取り付けるときに前後を間違えていました。マイクの指向性のフロント側が修理前と逆側になっています。これを修正しようとすると、しばらくは外したくない台座をまた外さないといけないので、もうフロント側とリア側を製品本来の向きと逆にして使うことにしました。テプラでフロント側のマークを作って貼って、これで実用上の問題はありません。
PC-Me フロント面にマーク貼付
ジャンク品として買ったときはマイクとして使うのを諦めていたのですが、壊れても惜しくないマイクというのは持っていると自作や修理、効果音製作をしているととても重宝します。マイクの構造を知るためにも良いし、改造も気楽にできます。修理できる限りは使い続けたいと思います。なお、壊れても惜しくないとは書きましたが、中身はDCバイアス式のちゃんとしたコンデンサーマイクです。高級品ではありませんがコンデンサーマイク入門用としては悪くない品だと思います。

参考サイト:RK-47 Capsule Installation Instructions http://microphone-parts.com/pages/rk47-capsule-installation-instructions

当記事を参考にした修理は自己責任でお願いいたします。

(がんくま)