十一月の読書 他 | A DAY IN THE LIFE WITH MUSIC

十一月の読書 他

十一月に読んだ小説は六冊。

すべて単行本、すべてミステリー小説、すべて話題作、どれもなかなか読み応えのあるものでした。

 

 

・夕木春央「方舟」 

クローズドサークル型のミステリー&どんでん返しもの。

地下施設に閉じ込められた10人、浸水による迫りくる溺死の恐怖、一人を犠牲にすれば助かる、そんな中で起こる密室殺人、犯人を見つけてそいつを犠牲にしてやろう、そんなオハナシ。

ま、最初に「どんでん返し」とか書かれると構えて読んでしまいますし、面白さがその一点に集まるというかで、でもまあ普通にドキドキしながら読めました。

が、ワイ的には「もうめちゃくちゃ面白かった!」ちゅうもんでもなかったです。

「なるほどそうきたか」などと割と冷静でした。

これまでに腐るほどどんでん返しミステリーを読み過ぎたせいでワイの中でどんでん返し耐性がついてしまってますわ。

良かったんは良かったんですが、ややハードル上げすぎたか、という感じですかね。

どんでん返し度:★★★★☆

 

 

・相沢沙呼「invert 城塚翡翠倒叙集」

「倒叙」というのは最初から犯人や犯行のトリックなどわかっている形式のもので、わかりやすく言えばドラマの古畑任三郎シリーズなんかがそうです。

探偵役がそれをどう暴くかがキモで、とりわけ通常のミステリー小説の映像版とかだと大物俳優のキャスティングで犯人がわかってしまうという裏技的謎解きがあるのですが、この倒叙形式だと予め犯人がわかっているのでその心配はいらないですね。

この「インヴァート」は中編三作の倒叙ミステリーが収録されており、一応シリーズものとなってます。

可愛くてドジっ子の探偵役の主人公は好みが分かれるかと思いますが、これは面白かったです。

前作の「メディウム」もなかなかインパクトがありその続編ということで「まあこういうキャラよな」ってな感じでそこらは普通に流して読めました。

倒叙形式ミステリーの醍醐味は完全犯罪と思われたものが僅かなほつれから徐々に謎が解き明かされていく爽快感であり、そのあたりは読んでいて気持ちがいいというかスカッとするというか、ある意味勧善懲悪的な面白さがありますな。

また、ミステリ小説のメタ的描写もあったりしていろいろと考えさせられます。

 

なおドラマ化されている模様。

倒叙度:★★★★★

 

 

・荒木あかね「此の世の果ての殺人」

史上最年少の乱歩賞受賞作っちゅうことでまあちょっと読んでみるか、ということだったのですが、ワイ的にはまあまあやった。

数か月後に地球に惑星が衝突して世界が終わってしまうという状況の中で殺人が起こって云々、というストーリーで、まあ設定にいろいろと無理があるな、というか特殊な設定及び登場人物たちの行動も特殊やな、という感想ですわ。

もうすぐ地球が滅亡という状況で自動車学校で免許取りに行く、という地点で謎ですよ。

目新しさもなく、「うーむ、これが乱歩賞か・・・」っちゅう感じでした。

乱歩度:★☆☆☆☆

 

 

・白井智行「名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件」

実話をモチーフとした多重解決ミステリーで、これは好みが分かれる作品やと思います。

登場人物の名前がそもそも変なものが多く、そもそも多重解決ってなんやねん、となる人は多いかと。

とは言えストーリーはよく練られており、クセのある小説ではありますがワイ的にはアリというか面白かったです。

認識のねじれについて考えさせられる作品です。

宗教度:★★★★☆

 

 

・呉勝浩「爆弾」

緊張感のある骨太ミステリー。

酔っ払って自販機をしばいて捕まり取り調べを受けた冴えない中年のおっさんが「霊感」を駆使して都内で「爆発」が起こると予言してその通りになって云々~というストーリーで、これはドラマとか映画向けですかね。

犯人と思しきそのおっさんと警察とのやりとりというか緊迫した心理戦が面白く、ハラハラドキドキで一気読みでした。

冴えない中年に翻弄される警察、それぞれの登場人物が抱える苦悩、面白かったがプロローグで登場する女は特に意味があるわけでもなく思わせぶりなだけで、もうちょっと全体をスッキリまとめることができたのではないか?と謎の上から目線。

個人的にはデヴィッド・フィンチャーの映画「セヴン」を思い出しました。

爆発度:★★★★☆

 

 

・柚月裕子 「教誨」

これも実際にあった事件をモチーフとした作品、多分ね。

自分の娘と近所の子供を殺めて死刑となった女性、彼女は本当に極悪人なのか?「約束は守ったよ、褒めて」という最期の言葉にはどういう意味があったのか?

とにかく暗く沈んでいくような内容で楽しく読めるようなものではないのですが、さすがの柚月裕子というべきか、圧倒的筆致で一気に読ませます。

当たり前体操だが殺人は決して許されるものではない、だがしかし・・・。

やるせなくて考えさせられる小説でした。

もう少しなんとかならんかったんか度:★★★★☆

 

 

 

こうやって読んだ本の感想を書いてみると11月は重たいもんが多かったですな。

なお年末年始用の小説ももうすでに購入済、さらには年末年始用のウイスキーも購入済です。

ちゅうわけでキルベガンっちゅうアイリッシュを飲みながらの音楽は2018年の青葉市子のアルバム「qp」。

キルベガン蒸留所は世界最古の蒸留所らしいです。

1757年設立、ワイが生まれる少し前やな。

アイリッシュは総じてすっきりと飲みやすいですな。

スイスイと飲めてしまうのが長所でもあり短所でもあるっていう諸刃の剣。

 

そして青葉市子、彼女はクラシックギターを弾き語るSSW(シンガーソングライターな)で、ややクラくて不穏な雰囲気がいいのです。