「空爆」という言葉の謎と不思議 | blue-roseのブログ

「空爆」という言葉の謎と不思議

今では爆撃を意味する「空爆」という言葉は、すっかり定着しているようですが、私が初めて「空爆」という言葉を知ったのは湾岸戦争のときでした。
それまでは「空爆」などという言葉は見たことも聞いたこともなかったので、湾岸戦争のときに初めて空爆という言葉を耳にしたときの驚きを今でも鮮明におぼえています。

 

「クーバク? なんじゃそりゃ?」

 

新聞を隅々まで読んでも、なぜ「爆撃」を「空爆」と言いかえることになったのかの経緯は書かれていません。
その頃、テレビでは連日、湾岸戦争を伝えるニュースを繰り返していました。
どこのテレビ局もニュースの解説では、米軍の精密誘導弾は従来とは比較にならないほど正確に標的を攻撃できるので、民間人を巻き添えにすることはないと、しつこいほど繰り返して強調していました。
それなのに、なぜ「爆撃」を「空爆」と言いかえることになったのかの説明は一切ありません。

 

そんなある日、NHKのニュースを見ていたら、イラクからの衛星生中継の映像でNHKの特派員が
「こちらではアメリカ軍による爆撃が・・・」と言ってしまってから大慌てで
「アメリカ軍による空爆が・・・」と言い直すシーンがありました。

 

空爆という言葉を使い慣れていないのだから言い間違えるのは無理もないのですが、その時の恐怖に満ちた慌てようが尋常ではないほどで、一瞬で顔色が変わったように見えました。
まるで爆撃という言葉を使ったら殺されるとでも思っているかのように。

 

おそらく「爆撃」とか「空襲」という言葉は無差別殺戮を連想させるので、アメリカに遠慮してそれまで馴染の無かった「空爆」という言葉を使うことになったのだろうと、だいたい想像はつきます。
しかし、それならそれで「空爆」という言葉を使うことになった経緯を説明するべきです。
何の説明も無いのは、アメリカ政府とグルになって日本の世論を湾岸戦争賛成に誘導する意図が有ったからに違いありません。

 

恥ずかしながら、私は子供の頃は右翼少年で、毎日のように戦争関連の書籍類を読み耽り、同好の士と「ミッドウェー海戦はどうすれば勝てたか」などという議論に興じていました。
「坂井三郎空戦記」や松本零士の「戦場漫画シリーズ」などは心酔して何度となく読み返していたほどです。
ですからなおさら「空爆」という言葉に違和感をおぼえました。

 

東京大空襲では爆弾よりも主に焼夷弾が使われましたが、もしも米軍が「正義」の戦争のために、何かの都合で爆弾ではなく焼夷弾を使い始めたら、また新しい言葉を創作するのだろうか?
空爆が航空爆撃の略称だというのなら、航空焼夷弾攻撃の略称で「空焼」とか?

 

「空爆」というそれまで馴染の無かった言葉を、マスコミ各社が何の説明もなく使い始めたのも不愉快ですが、その点を誰も深く追求しないのも、また不可解です。
湾岸戦争の当時、私は、やがて何年かすれば「実はあの時・・・」という内幕話をマスコミ関係者の誰かが暴露するだろうと思っていました。
しかし、あれから30年近くが経っても「爆撃」を「空爆」と言いかえることになった経緯は隠蔽されたままです。

 

インターネットが普及してからは、時々思い出しては「空爆」という言葉を使うようになった経緯をネットで調べています。
誰でもインターネットで情報を発信することができる世の中ですから、マスコミ関係者の誰かが「王様の耳はロバの耳」の話のように、真相を語りたいという欲求からネットに書き込みそうな気もしますが、現在までのところ有力な情報は何も有りません。
組織的に隠蔽している秘密というのは、インターネットが普及した現代でも、やはりガードが堅いようです。