彼女は、
目の中に、桜の木を、
入れたんです。
それで、
痛がっているんです。
僕は、
彼女の目の中に、
指を入れたんですけど、
桜の木が、
どこにあるのか、わかりません。
「どこだろ?」
「すごくゴロゴロしてるの」
「寝てもらった方が、
取りやすいかもしれない」
僕は、
彼女を、
公園の芝生の上に寝させます。
「目蓋(まぶた)を開きますよ?」
上目蓋と、下目蓋を、
つまんで、開きます。
中は、
ピンク色の襞(ひだ)です。
濡れています。
「よく、
こんな小さな穴に、
あんな大きなものが入りましたね?」
「離れると、小さくなるでしょ?」
「小さく見えるだけで、
本当に、
小さくなるわけじゃないですよ」
「そうなの?
私、
空を飛ぶ飛行機って、
小さいでしょ?
3cmくらい。
あの飛行機に乗っている人たちって、
どれだけ小さいのかしら?
って思ってた」
「本当に、
飛行機が3cmだと、思ったんですか?」
「今度、
飛んでいたら、
つかまえてみます」
「空を飛んでいる飛行機を、
つかまえちゃうんですか?」
でも、
彼女は、
300m先の桜の木を、
つまんだんです。
そして、
目の中に入れてしまったんです。
「目蓋の裏かしら?
その辺りに、はっきりと見えるの。
すごくきれい」
「でも、
あんな大きな桜の木が、
目蓋の裏にあったら、
ふくらむでしょ?
ふくらんでないけど?」
「とにかく痛いの。
舐めてくれます?」
「舐めちゃっていいんですか?」
「犬だって、猫だって、
痛いときは、舐めるでしょ?」
きっと、
他(ほか)の人たちからは、
僕らが、
芝生の上で、抱き合って、
キスして、見えるはずです。
彼女の目蓋を、
めくるようにして、舐めます。
ちょっと、しょっぱいです。
舐めれば、
舐めるほど、濡れてきます。
「あ~っ、いい~」
彼女、かわいいんです。
芝生の上に寝転がって、
こんなふうに、
目蓋を舐めていると、
もうガマンできません。
「・・・・あの?」
「はい?」
「どこかへ行きませんか?」
「どこ?」
「ホテルとか」
「でも、目が痛くて・・・」
彼女が、
潮を吹くように、目蓋を濡らします。
濡らした目蓋が、ぬらぬらと光って、
たまらないんです。
ー つづく ー
飛んでいる飛行機って、
ゆっくりだから、
捕まえられそうですよね![]()
![]()




