焼き芋を焼いたまま、
出たんですから、
すぐ近くにいると思ったんです。
でも、見つかりません。
ところが、
交番に戻ってみると、
彼女の姿も、ないんです。
トイレの中にも、いません。
「目玉がないのに、
どこに行ったんだろ?」
彼女、
目玉を落としちゃったんです。
それで、
僕らは、
落とし物として届いていないか、
交番に聞きに来たんです。
ところが、
お巡りさんが、いなくて、
探しに出たら、
戻ってみると、
今度は、彼女が、いないんです。
ほんの10分間か、そこらですよ?
目玉だって、ないのに、
どこへ行っちゃったんでしょ?
どこにも行かないって
約束したのに。
恋した心が、疼(うず)きます。
ところが、
交番を飛び出して、
彼女を探しているうち、
怒りが、
込み上げてくるんです。
だって、
どこかに行くにしても、
僕に一言(ひとこと)くらい
言ってくれてもいいじゃないですか。
勝手に行っちゃうなんて、
あんまりでしょ?
悔(くや)しくって、怒って、
探しているうち、
桜の咲いている公園で、
彼女を見つけます。
僕は、駆け寄ります。
「なんで、交番を出たんですか?」
僕が怒っているので、
彼女が、とまどいます。
「私、交番、出たの?」
「出たでしょ?」
「もし、
私の目玉が届いているとしたら、
その辺にないかしら?って探したの」
「ドアを開けて?」
「開けたかしら?」
彼女が、首をかしげます。
「戸棚の戸だと、思ったかもしれない」
「クルマとかに、ぶつかったらって、
心配しました。
川があれば、
落ちちゃうかもしれないし」
「ごめんなさい」
でも、
彼女が見つかってみると、
どうして怒っていたのか、
わかります。
彼女が、
約束を破ったと思ったからです。
約束とは、絆(きづな)です。
約束を破るとは、
絆を切ることです。
僕は、
彼女に、絆を切られたと感じて、
怒っていたんです。
ということは、
僕は、彼女に、
絆を感じていたんです。
片思いなんですけどね。
ー つづく ー
川とかに落ちてなくて、
よかったです![]()
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