夢の鍵に、
お姉さんが、息を飲んでいます。
「・・・・・触ってみてもいい?」
「どうぞ」
お姉さんが、
おそるおそる手を伸ばして、
指の腹で、
鍵を、そっと、撫でます。
「・・・ツルツルは、してないのね。
唇に、触(ふ)れているみたい」
「唇ですか?」
「握ってみてもいい?」
「いいですよ」
お姉さんが、顔を真っ赤にしています。
一気に、酔いが回ったかのようです。
「・・・やわらかいのね?」
「固くないですか?」
「固いけど、やわらかい」
「固いけど、やわらかい?
どっちですか?」
「固いけど・・・
手触りが、やわらかいわ。
・・・・・舐めてみてもいい?」
「鍵を舐めるんですか?」
「舐めるんでしょ?
あぁ・・・そうか、
あなた、彼女、いないんでしょ?
だったら、知らないか」
「女の人って、鍵を舐めるんですか?
なんで、舐めるんですか?」
「別に、
舐めたいわけじゃないんだけど、ね。
でも、
彼氏のいる女の人たちを見て、
舐めているのかしら?って
思っていたのよ。
そういうのって、
親密で、いいなぁ~って。
わかる?」
僕は、首を傾(かし)げます。
「彼氏のいる女の人たちって、
鍵を舐めるんですか?
え?
彼氏の鍵ですか?」
「彼氏の鍵に決まっているでしょ?」
「どんな意味があるんですか?」
「意味?」
「女神さまが、
意味が、現実を創るって」
「喜ばせたいってことじゃない?」
「喜ばせたいって意味が、
そういう現実を創っている?」
お姉さんが、
びっくりして、動きを止めます。
「・・・・そうかぁ。
私、自分の苦しみばっかりで、
喜ばしたいって、
思ったことがなかったわ。
私には、
そういう意味がなかったから、
そういう現実がなかったってことかしら?」
お姉さんが、
左斜め上を見つめながら、
考えます。
斜視で、
いつでも左斜め上を見つめているんです。
「現実だと思えば、思うほど、
厳しくなるってことも、そういうこと?
現実には、
厳しいって意味しかないものね」
「僕らは、
無意識に、現実だと思っているって。
厳しいってことなのに」
「本当に、
喜ばしたいって思ったら、
そういう現実が創られるのかしら?」
「なるんじゃないですか?
だって、
殺したいって思ったら、
殺し合いになりますから」
「そうよね・・・」
それから、
また、顔をあからめています。
「・・・あなたのこと、
喜ばしたいって、
思ってもいいかしら?」
「喜ばしてくれるんですか?」
「こんな私でも、いいなら」
「それも、意味ですよ?」
「そうね・・・・本当に、そうだわ。
私、
卑下(ひげ)しすぎて、
そういう現実しか創って来れなかったわ」
そう、うなずくと、
お姉さんは、
僕の鍵を舐め始めるんです。
ー つづく ー
ツルツルは、していません![]()
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