サメの泳ぐ波が、

お姉さんのお臍(へそ)を、

洗います。

 

 

サメが、

回っているのは、

襲うつもりだからです。

 

 

僕は、

お姉さんを助けたいんですけど、

怖くて、

水にさえ、入れません。

 

 

箱が、浮いています。

 

 

サメと闘える物が、入っていないかと、

避難したテーブルの上から、

水を手招いて、

引き寄せます。

 

 

箱を開けてみると、

手榴弾が入っていました。

 

 

でも、

投げようとしてみると、

お姉さんまで、

死んでしまうと、わかります。

 

 

狭い部屋ですから、

僕らだって、危ないです。

 

 

もう一つ、箱が浮いていて、

招き寄せると、

ウイスキーが入っています。

 

 

・・・・サメに飲ますか?

 

 

たぶん、

サメは、アルコールなんて、

飲んだことがないので、

簡単に酔いつぶれるかもしれません。

 

 

それで、

瓶を、逆さにして、

琥珀色のウイスキーを、

水の中に注ぎます。

 

 

ところが、

お姉さんが、両手で掬(すく)って、

飲むんです。

 

 

僕を、手招きます。

 

 

こっちに来て、一緒に飲まない?

 

おいしいわよ

 

 

サメが怖くないんですか?

 

 

怖いの?

 

 

怖いです

 

 

だったら、

この世界は、

それを映しているのよ

 

 

薄ら笑っています。

 

 

もう、酔っているんですか?

 

 

飲ませたのは、あなたでしょ?

 

 

サメに飲まそうとしたんですよ

 

 

鏡に映ったものを、

どうにかしようとするなんて、滑稽よ。

 

鏡に映ったものに、

リアリティを与えるのは、

やめなさいよ

 

 

サメが背びれを立てて、

周りを泳いでいるのに、

お姉さんは、酔っ払っているんです。

 

 

どうやって、

助けたらいいんでしょうか?

 


この世界が、物質だと、

思っているから怖いのよ。

 

でも、世界は、夢なのよ。

 

実体は、ないの

 

 

女の子が、テーブルの上で、

何かを、

一生懸命に、しています。

 

 

見ると、

手榴弾のピンを、

引き抜こうとしているんです。

 

 

 

ー つづく ー

 

 

 

 

 フカヒレ酒の味とか、

しませんかね?ウインクラブラブ