サメの泳ぐ波が、
お姉さんのお臍(へそ)を、
洗います。
サメが、
回っているのは、
襲うつもりだからです。
僕は、
お姉さんを助けたいんですけど、
怖くて、
水にさえ、入れません。
箱が、浮いています。
サメと闘える物が、入っていないかと、
避難したテーブルの上から、
水を手招いて、
引き寄せます。
箱を開けてみると、
手榴弾が入っていました。
でも、
投げようとしてみると、
お姉さんまで、
死んでしまうと、わかります。
狭い部屋ですから、
僕らだって、危ないです。
もう一つ、箱が浮いていて、
招き寄せると、
ウイスキーが入っています。
「・・・・サメに飲ますか?」
たぶん、
サメは、アルコールなんて、
飲んだことがないので、
簡単に酔いつぶれるかもしれません。
それで、
瓶を、逆さにして、
琥珀色のウイスキーを、
水の中に注ぎます。
ところが、
お姉さんが、両手で掬(すく)って、
飲むんです。
僕を、手招きます。
「こっちに来て、一緒に飲まない?
おいしいわよ」
「サメが怖くないんですか?」
「怖いの?」
「怖いです」
「だったら、
この世界は、
それを映しているのよ」
薄ら笑っています。
「もう、酔っているんですか?」
「飲ませたのは、あなたでしょ?」
「サメに飲まそうとしたんですよ」
「鏡に映ったものを、
どうにかしようとするなんて、滑稽よ。
鏡に映ったものに、
リアリティを与えるのは、
やめなさいよ」
サメが背びれを立てて、
周りを泳いでいるのに、
お姉さんは、酔っ払っているんです。
どうやって、
助けたらいいんでしょうか?
「この世界が、物質だと、
思っているから怖いのよ。
でも、世界は、夢なのよ。
実体は、ないの」
女の子が、テーブルの上で、
何かを、
一生懸命に、しています。
見ると、
手榴弾のピンを、
引き抜こうとしているんです。
ー つづく ー
フカヒレ酒の味とか、
しませんかね?![]()
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