そのお姉さん、
知らない女(ひと)なんですけど、
勝手に、
僕の部屋に入って来ると、
寝転がってしまうんです。
そのうえ、僕にキスします。
唇を、離しても、
僕の首を抱いたままです。
これって、
このまま、
「おいで」ってことでしょうか?
でも、どんなに見たって、
知らない女(ひと)です。
「・・・以前に、
会ったことないですよね?」
「あるわよ」
「覚えが、ないですけど?」
「覚えてない夢なんて、
どれくらいあると思っているの?」
お姉さんは、
僕の夢だって言うんです。
でも、今、した、キスの、
唇でさえ、生々しいです。
その証拠に、
僕のものが、固くなっています。
「夢って、どういうことですか?」
「物って、あると思っているでしょ?」
「あるでしょ?」
「ないのよ」
お姉さんは、
僕の首を抱いて、
放しません。
「物って、夢と、
同じもので、できているの」
お姉さんは、
僕の手を取ると、
おっぱいに、押しつけます。
「触(さわ)っていると、
思っているでしょ?」
「触らしているじゃないですか?」
「触ってないのよ」
でも、僕の手のひらには、
おっぱいの、張りと、重みとが、
伝わります。
「電気的なもので、
反発しているだけなの。
磁石の、
同じ極(きょく)同士を近づけると、
反発するでしょ?
それを、
触っていると、
解釈しているだけなのよ」
「電気的って、何ですか?」
「原子には、
プラスとマイナスがあるでしょ?
あなただって、プラスとマイナスで、
できているのよ?」
「だから、夢なんですか?」
「プラスとマイナスで、
できている原子って、
たとえば、炭素の、
プラスの原子核の大きさを、
ゴルフボールだとすると、
マイナスの電子は、
どれくらいのところに
あると思う?」
「1mくらい?」
「地球の表面くらいよ。
つまり、
原子核を、ゴルフボールだとすると、
原子そのものは、地球くらいなの。
つまり、スッカスカよ。
その原子核でさえ、
素粒子で、できていて、
その素粒子は、波でもあるの。
もう、夢でしょ?」
「え?」
僕は、首を抱かれたまま、
その首を傾(かし)げます。
「・・・どうかな」
「だったら、
これなら、どう?」
そう言って、
また、僕にキスします。
舌も入れて、絡(から)めます。
言葉にならない言葉で、
伝えます。
たしかに、夢です。
だって、
こんなキレイな女(ひと)が、
こんなことを、
してくれるはずがないからです。
ー つづく ー
僕の頭も、
スッカスカです![]()
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