交差点の真ん中で、

引っ繰り返った僕に、

彼女が襲いかかります。

 

 

彼女は、

細身で、

ウエストは、くびれているのに、

胸は大きいです。

 

 

もっとも、

僕を、

引っ掻こうとします。

 

 

たぶん、キチガイです。

 

 

やめてください!

 

警察を呼びますよ?

 

 

呼んでよ!

 

こっちこそ、

侮辱罪で訴えてやる!

 

 

彼女は、

僕が、よく、そんな顔で、生きてるねって

言ったって、怒っているんです。

 

 

もちろん、

そんなことは言っていません。

 

 

だって、

彼女は、美人なんです。

 

 

ちょっと、目つきに、

影(かげ)があって、気(け)だるく、

瞳の光も、遠いんですけど、

美人には、違いないです。

 

 

侮辱なんて、してないですよ!

 

 

したでしょ?

 

こっち、向くなって!

 

吐いたら、どうするんだ?って

 

 

僕が言ったっていうのが、

どんどん、増えてないですか?

 

 

鏡を見たことがあるのか?

とも、言ったわ

 

 

言ってないです!

 

 

私は、この耳で、

ちゃんと、聞いたのよ!

 

 

それ、幻聴です。

 

被害妄想です

 

 

私のせいにするの?

 

 

そんなこと、

僕が言うわけないじゃないですか?

 

 

どうして、言うわけがないのよ?

 

 

ブサイクなのは、

僕の方だからですよ

 

 

ほら、また、そうやって、

私をバカにする

 

 

どうして、

そうなるんですか?

 

 

本当は、

私のことを言っているからよ

 

 

あなたは、

ブサイクじゃないじゃないですか?

 

 

ところが、

彼女は、わんわん泣き出します。

 

 

・・・どうせ、私は、ブスよ。

 

言われなくたって、わかっているわよ

 

 

だから、違いますってば!

 

あなたは、

カワイクて、スタイルも良くて、

美人で・・!

 

 

そこで、僕らは、びっくりします。

 

 

クラクションです。

 

 

僕らは、右折レーンの前で、

倒れて、もつれ合っていたんです。

 

 

きっと、

右折待ちのクルマの中から、

僕らを見ていたはずです。

 

 

でも、

信号が、矢印を出したんで、

クラクションを鳴らしたんです。

 

 

僕らは、邪魔だったんです。

 

 

 

ー つづく ー

 

 

 

 

渋谷のスクランブル交差点で、

私の部屋の鍵なんだから、

返しなさいよ!

と、揉み合っているカップルなら

見たことがありますウインクラブラブ