男は、わたしに、
股を開かせたり、
四つん這いにさせたりします。
その間(あいだ)にも、
手を上下させています。
わたしは裸です。
「・・・何、しているの?」
「いや・・・・だって、
触れないから」
わたしが、幽霊だからです。
「なんとか、
さわってほしいです」
男が、謝ります。
「ごめん、あんまり、
かわいいから、つい・・・」
「わたし、かわいいですか?」
父からは、
罵(ののし)られたことしか
ありません。
「かわいいよ!
美人だよ!
おっぱいだって、大きいし・・・」
「美人?」
「鏡を見てごらんよ」
ところが、鏡に映りません。
男は、
鏡に、指で、触れます。
男の指だけが、映ります。
気の毒がります。
「こんなにかわいいのに、
自分を見たことがないの?」
「飛び込んだときに、
水に映る姿なら見ました」
「どうして、飛び込んだの?」
「無くそうと思って・・・」
「無くす?」
「それしか、
わたしには力がないと思って。
でも、無くす力もありませんでした」
「どうして無くしたかったの?」
「毎日、父が、不機嫌で、
怒鳴られて、叩かれて・・・・」
父のものまで、
くわえさせられました。
「それで、
死んだんだ?」
「死んだら、
無くなると思ったんですけど・・・」
「無くなりたいの?」
「無くす力だけはあると
思ったんです。
力が無いって、嫌だったんです」
「・・・普通は、
無くなりたくないって
思うけどね」
「無くなりたくないですか?」
「無くなりたくなんてないよ!」
「無くならないのに?」
逆に、男が聞きます。
「無くならないの?」
「無くならないです」
「死んでみると、わかるんだ?」
「わかります」
わたしが死んでも、
無くなっていないので、
男も、納得しているようです。
ー つづく ー
僕らって、
無くならないんですね![]()
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