わたしは、
女に生まれてきて、
馬鹿(ばか)としか、
言われたことがありません。
父が、
いつも、そう言っていたのです。
でも、その父も、
地主に、そう言われていました。
父は、
自分が、いじめられていたので、
わたしたち女を、
いじめていたんです。
わたしの家は、
母と、わたしと、妹で、
男は、父だけでした。
父にしてみたら、
威張れるのは、
家の中だけだったんです。
生きていたとき、
わたしは、そんなこととは、
知りませんでした。
素直に、
女は馬鹿と、信じていました。
女なんて、
何のために生きているのか、
わからないでいたのです。
ところが、
死んで、あの家から解放されて、
うろつくようになって、
女とは、
良いものかもしれないと、
思うようになりました。
ことに、
男に抱かれて、喜ぶ様(さま)が、
こんなに良いものが、
この世には、あったのかと、
呆然とするほどです。
男たちも、女たちを、
この世で、最も良いものとして、
欲しがっているのです。
わたしは、父から、
女は、卑しいと、
教えられてきました。
今、思いますに、
どうして、父を、正しいと、
思い込んでいたのか、
その方が、馬鹿でした。
死んで、
目が覚めたって、感じです。
でも、
もう、わたしには、
喜ぶ肉体が無いんです。
石を抱いて、
水の中に飛び込んでしまったからです。
つらいことしかなかったから、
わたしは、わたしを、
無くしたかったのです。
でも、
男が腰を振っているとき、
女の中にあるのは、
得(え)も言われぬものらしいです。
女の声の、
甘く、切なく、喜ぶ音色が、
どうしても、
地上のものとは思えません。
女とは、
天上の極楽を、
我が物とすることが
できるようです。
わたしも、せっかく、
女に生まれてきたのですから、
我が物としてみたいです。
どうしたら、いいのでしょうか?
ー つづく ー
女性の、
甘く、切なく、喜ぶ音色は、
天上の音色です![]()
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