食事のとき、
母は、わたしには、くれません。
わたしが見えないんです。
目の前に、
わたしがいるのに、
悲しんでいます。
でも、
それを言うと、
父が荒れるので、
黙っています。
父が荒れるのは、
わたしを売るつもりだったからです。
売って、
お金にするつもりだったんです。
それが、
石を抱いて、
水に飛び込みました。
ですから、
腸(はらわた)が煮えくりかえって
いるのです。
父が、どす黒い火に、燃えています。
母も、妹も、
その火に、炙(あぶ)られています。
わたしまで、息苦しいです。
でも、どうして、
こんな家にいるのかと言うと、
生きるためです。
死ぬのが嫌だから、
こんな家にいるんです。
まるで牢獄です。
地獄です。
そのとき、
わたしは、ふと、気づきます。
もう、
わたしは、
こんな家にいることはないって。
だって、
どうせ、いても、
飯(めし)も、もらえないんです。
それに、
お腹が空いたからって、
死ぬわけでもありません。
もう死んでいるからです。
わたしは、
思わず、母に、すがりつきます。
母を救うためです。
「おっ母(かぁ)!
死んだからって、
無くなるわけじゃないの!
無くならないのよ?」
妹にも、
同じ事を教えます。
だって、
地獄のような、こんな家にいるのは、
死んだら、
無くなると思っているからです。
無くなるのが、
怖いんです。
わたしは、
たまたま、無くなりたかったので、
喜んで、その一線を越えました。
無くなるのが、
夢だったのです。
でも、
無くなれないのです。
そのことを、
必死になって、母と妹に、
教えるんですけど、
母と妹には、
わたしの声が聞こえないのです。
ー つづく ー
もし、霊たちと話せたら、
人間の生き方って、変わるでしょうね
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