「でも、触っていますよ?」
だって、お姉さんは、
人差し指の腹で、
白く淡い粒のようなものを、
クリクリしているんです。
僕の目の前に、
真っ白い太ももを、開いて、
立てています。
お姉さんの息が深いです。
遠くを見つめます。
「物質だったら、触ったら、
そこにあるものでしょ?
でも、これは、
ここに、ちゃんと、ないの」
「でも、なかったら、
触れないですよ」
「この空間だけじゃないのよ」
「だったら、どの空間にあるんですか?」
「私たちって、
この空間だけだって、
思っているでしょ?
でも、空間って、
無数にあるのよ。
たまたま、この空間なのよ」
「たまたま、ですか?」
「これを、ね、こう・・・・
いじっていると、ね、
この空間の私って、
私の、ほんの、1つだって、
わかるの」
僕には、まったく、
わかりません。
「この私って、
たまたま、この私なの」
「たまたま私って、
何ですか?」
「可能性の1つって、ことよ」
もっと、わかりません。
「物って、
そこに、ちゃんとあるものでしょ?
そこに、ちゃんとなかったら、
物って言わないでしょ?」
「言わないですね」
「でも、これは、ね、
ちゃんと、ここに、ないの。
って言うか・・・・
これに、触れると、
無数の空間が立ち現れるの。
無数の次元が現れるの」
「次元も、ですか?」
「平面的じゃないのよ。
立体的なの。
あらゆる次元に渡って、
存在しているってことが、
わかるの」
お姉さんが、
思索を探るようにして、
クリクリしています。
濡れた襞(ひだ)も、
指で、なぞります。
「・・・・・こうしていると、
わかるの。
・・・わかるのよ」
「そう、感じているって
だけですよね?」
「だから、今、
消えてみせるから。
ここに、私がいるのは、
ここに、私がいるって、信じている
だけなのよ。
そこに、あるって、
思い込んでいるのが、物質って
ことなのよ」
そう言うと、
本気を出すつもりか、
シャツを脱ぐと、
ブラジャーも外すんです。
ー つづく ー
いよいよ、
本気を出すんですね