霊界にいたときのことです。
透きとおった川の、岩場に、生まれたての龍がいました。
体長が10cmくらいの緑色の龍です。
岩場の水たまりに、嵌(は)まったようになって、
渦の流れに、揉まれています。
僕は、両手で、掬うようにしました。
とてもカワイイです。
龍の赤ん坊を見るのは、初めてです。
連れて帰って、育てることにしました。
でも、どんなエサをあげたらいいのか、わかりません。
それで、神様に聞きに行きました。
女神さまです。
女神さまは、白く、美しい指で、
龍を撫でながら、
「水と一緒よ。 風と一緒」と教えてくれました。
「エサは、いらないってことですか?」
「いるわよ」
「水も? 風も、ですか?」
「いるでしょ」
水や、風に、エサをあげたことなんて、ありません。
「どんなエサなんですか?」
「あなたよ」
「僕?
龍に食べられちゃうってことですか?」
女神さまが、美しく笑います。
「そうとも言うわね」
今は、小さくて、こんなにカワイクても、
大きくなったら、僕を食べるのかもしれません。
それでも、捨てられなくて、
連れて帰りました。
いつか食べられるかも、と思いながらも、
育てました。
結局、エサはわからないんですけど、
時々、飛んで、どこかへ行くので、
自分で、勝手に、食べているみたいです。
僕の飼っている緑色の龍が、
20mくらいになった頃です。
僕は、龍の背に乗って、
海の上を飛びました。
海は広くて、
どこまでも、海です。
ところが、調子に乗って、
遠くまで飛んだ先で、嵐に遭います。
黒い波が、ぶつかり合って、
蜷局(とぐろ)を巻きます。
雨も、風も、激しくて、
落雷も、凄まじいです。
僕は、龍に、しがみついて、
龍と一緒に、
海に落とされたり、風に飛ばされます。
なぜか、
女神さまの言っていたことを思い出していました。
僕が、水や、風の、エサってことです。
嵐の海が、僕を食べそうだったからです。
客観的には、死にそうなんですけど、
主観的には、
海という大きな存在に飲まれていました。
そもそも、霊界で、死んでも、
大した意味はありません。
霊界へは、死んで、来たからです。
そこで、はっと気づきます。
僕が、死んだら、1-1です。
その答えは、0でしょうか?
1-1=0になるのは、
死んだら終わりと思っている人だけだったんです。
ー つづく ー
僕らが霊(スピリット)なら、
答えは違ってきますよね![]()
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