石なんて、何も考えていないと、
思っていました。
でも、石と、話してみると、
考えていなかったのは、僕の方でした。
だって、石の話が、むずかしいんです。
「もしも、よ?
もし、あなたが、今、
夢の中にいるとして、
この世界って、あなたの外にあるの?」
僕は、痛みで、転げ回ったときのままに、
空を見上げます。
空は、どこまでも空です。
夢になんか、見えません。
「・・・・・夢とは、思えない」
「それは、思えないって、思っているのよ」
「だったら、夢には見えない」
「それも、見えないって、思っているだけ」
「どうして?」
「頭が固いからよ」
そう言っているのが、石の女です。
「もし、頭がやわらかかったら、
もしも?って考えられるでしょ?」
「もしも、今、
夢だったら?って考えるのか?」
首がない顔で、うなずくので、
石が、グラグラと動くようです。
石に、頭が固いと言われるのが、
悔しいので、考えてみます。
「・・・・・もし、これが夢なら、
みんな、夢だよ」
「だったら、外なんて、ないでしょ?」
「夢なら、ね」
「その夢は、どこから来るの?」
「眠りだろ」
「どこへ戻るの?」
「やっぱり、眠りだろ。
夢なんだから」
「でも、夢は、できるだけ、
夢で、いようとし続けるの。
眠ると、終わっちゃうと、
思っているから」
「夢は、終わるよ」
「何度でも、生まれて来るのに?」
「輪廻転生みたいにか?」
大きくうなずいて、
頭が落ちそうになります。
「外を、作ったのは、
眠らないようにするためなの。
だって、眠りの中には、
外は、ないから。
ひとつだから」
「夢が、眠らないようにするのか?」
石の女が笑います。
「おかしいでしょ?
もともと、夢は、眠りなのに。
そんなおかしいことを、
夢は、しているの。
夢は、眠りを怖れているから」
「夢が、眠りを怖れている?」
「怖れているのよ。
それで、なんとか生き残ろうとして、
自分の輪郭を作ったの。
つまり、外側を作ったの。
外側があれば、
自分の輪郭が描けるでしょ?
輪郭があれば、守ることができる」
いつの間にか、僕は、真剣に、
石の女の話を聞いています。
でも、石の女が話すのを、
聞いているって、夢のようです。
ー つづく ー
眠りには、輪郭はありません![]()
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