石の女が、僕を指さして、
「頭が固い」って笑います。
石の女は、身長が60cmくらいで、
ずんぐりむっくりしていて、
首がありません。
肩の上に、いきなり顔があって、
そんな顔で、笑います。
つい、腹が立って、殴ったんですけど、
指まで骨折しました。
僕が、病院の前で、痛みで、転げ回ると、
石の女は、大笑いです。
踊るように、足を踏み鳴らして、
カン!カン!笑います。
僕は、体中、骨折しているのに、
病院の中にも、入れません。
休診日だからです。
自動ドアが開かないんです。
ほかの入り口を探したら、
いいんでしょうけど、
脚も、骨折しているので、歩けません。
それに、石の女だって、
ガラスドアをすり抜けたんです。
普通、石をぶつけたら、
ガラスは、割れます。
石の女は、岩ほどあるので、なおさらです。
「どうやって、通り抜けたんだ?」
「だって、同じだもの」
「同じって?」
「私と、ガラス」
「全然、違うよ」
「それが、頭が固いってことなのよ。
違うってことは、
外があるってことでしょ?
外がなければ、違いはないもの」
石の女が言っていることも、
僕には、まったくわかりません。
僕が、まったくわかっていないことが、
石の女には、わかるようです。
それで、諭(さと)すように、
話してくるんですけど、
僕の方が、石にでもなった気持ちがします。
「いい?
夢の中の石と、
夢の中のガラスの違いって、何?」
「石の夢と、ガラスの夢って、ことか?」
「そうよ」
「どちらも夢だよ」
「だったら、違いはないでしょ?」
「夢なら、・・・でも」
現実は、夢ではありません。
「だったら、あなたは、どこから来たの?」
「どこから?」
「じゃ、どこへ戻るの?」
「どこへ?」
「この世界を、外に置いているのは、
あなたなのよ?」
石の女の話を聞いていたら、
なぜだか、僕ひとり、ぽつんと、外に、
置き去りのような気持ちがします。
どうして、
こんな気持ちになるんでしょうか?
ー つづく ー
そんな気持ちになるのは、
真実を知っているからです![]()
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