さらに、病院に到着するまで、
僕は、龍から、何度も落ちました。
龍が、身体をくねらせて飛ぶからです。
肩と脚を骨折している僕は、
しがみついていることができません。
30mくらいの高さからです。
その度に、さらに骨折が増えます。
病院に到着するまでに、
死んじゃうんじゃないか?って
思ったほどです。
病院を見つけて、僕が、ホッとして、
「あれです!」って教えると、
龍が急降下して行きます。
ものすごい勢いです。
ところが、そのまま、
透明な自動ドアに、飛び込んで行きます。
きっと、自動ドアがわかっていないんです。
僕は叫びます。
「止まって!
ドアがあるよ!」
龍は止まりません。
そのまま、飛び込んで行きます。
もちろん、僕は、
透明なガラスドアに激突します。
顔面も打って、転げ落ちます。
ガラスドアが割れたんじゃないか?って
くらいの衝突音と揺れがしました。
ところが、龍と石の女は、
そのまま通過して、
病院のフロアー内を飛び回っています。
顔面も打って、
転げ落ちたのは、僕だけです。
僕は、
打ち砕かれたように痛いんですけど、
それよりも、
龍と石の女が、
中に入れたことに驚いています。
透明なガラスドアの向こうには、
『 休診日 』の看板が立っています。
休診日なんですから、
自動ドアは開きません。
それなのに、石の女を乗せた白い龍は、
病院内を、水槽の中の熱帯魚のように、
泳ぎ回っています。
僕が、外で引っ繰り返ったままなので、
龍と石の女は、出て来ました。
閉まったままの自動ドアを、
すり抜けました。
龍が、聞きます。
「ここなの?」
「・・・・・はい」
「じゃ、私たちは帰るわ」
「待ってください!」
龍たちが、引っ繰り返っている僕の上で、
白い風のように舞います。
石の女まで、
ガラスドアを通過できたことが
不思議です。
「どうやって、
このガラスドアを通り抜けたんですか?」
石の女が答えます。
「通り抜けたりなんかしてないわ」
僕は、這って、
自動ドアを開けてみようとします。
もちろん、開きません。
「だって、開かないんですよ?」
「開いていないのは、あなたでしょ?」
「どういうこと?」
「どういうことか、わからないの?
あなた、頭、固いのね?」
石の女から、頭が固いって言われたんです。
ー つづく ー
閉じてなければ、
外側はありません![]()
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