石の女は、身長が60cmくらいです。
ずんぐりむっくりしています。
大きな顔が、肩に、いきなり乗っています。
「ねぇ? どうしたの?」
山の中で、こんな石に出会ったら、
誰でも逃げます。
でも、僕は、脚を怪我しています。
飛んでいて、巨木に激突したからです。
「・・・・・木に、ぶつかったんだ」
「そんなやわらかいものにぶつかって、
泣くことないでしょ?」
きっと石の女にとっては、
木はやわらかいんです。
「この近くに病院ってある?」
「びょういん?」
「接骨院でもいいけど?」
「せっこついん?」
僕も、石の女を、まじまじと見つめます。
石の女が骨折するようには見えません。
「・・・・あなたには、
どっちも必要ないよね?」
「必要ってものがないわね」
確かに、そうです。
「誰か、呼んで来てほしいんだけど?」
でも、石の女に呼ばれたら、
逃げるかもしれません。
でも、頼むしかないです。
「誰?」
「誰でもいいから」
石の女が、にっこり笑います。
「だったら、私でもいいんじゃない?」
石の女は、60cmくらいなので、
負(お)ぶってもらうには、
小さすぎます。
「木にぶつかって、
肩と、脚を怪我したんだ。
たぶん、骨折していると思う」
「こっせつ?」
「お願いだから、誰かを呼んで来て?
病院まで運んでほしいんだ。
頼むよ」
一生懸命に頼んだら、
呼びに行ってくれました。
石が歩くのを、初めて見ました。
転がっているようにも見えます。
ところが、石の女が呼んで来たのは、
白い龍でした。
体長20mほどの白龍で、腰を抜かして、
這って逃げようとする僕の目の前に
降りて来たんです。
ー つづく ー
石の女と話している時点で、
夢だと気づけないのが、夢らしいです