近寄って来ると
僕は、バナナを1本、万引きして、
股間に隠したって疑われています。
それで、
ジーンズを膝まで脱がされました。
あとはパンツだけです。
万引きGメンの彼女は、
ちょっとネコ顔のキリッとした美人です。
「どうしたの？ 早く出して？」
パンツまで脱げってことです。
「いくらなんでも、
ないってわかるでしょ？」
「そこに、あるじゃないの。
さっさと出してちょうだい」
僕は、自分の股間を指さします。
「これ、バナナじゃないですよ？」
「だったら、見せられるでしょ？」
「だから、見せられないんですよ」
でも、彼女は、本気で怒っています。
「疚(やま)しいことがなければ、
見せられるでしょ？」
「見せる方が、疚しくないですか？」
「やっぱり、隠しているからだわ」
スーパーマーケットの、
明るい事務所の中です。
こんなところで、
パンツを下ろすのって、
勇気がいります。
ヘンに、ドアを、キョロキョロ見ます。
「誰かが入って来たら、
誤解されますよ？」
「されないわよ。 仕事だもの」
「いつも、
こんなことしているんですか？」
「でも、普通は、バッグか、
ポケットに隠すわ。
股間に隠す人なんて、初めて見たもの」
「本当に、僕が股間に隠すのを、
見たんですか？」
「ちゃんと見たわよ。
始め、食べるのかと、思っていたら、
チャックを下ろして、
押し込んでいるから、目を疑ったわ」
もちろん、僕は、
そんなことしていませんよ。
でも、彼女は、
そう、言い張るんです。
もう、
盗ったか、盗らないか、の証拠を、
見せるしかないです。
それで、覚悟を決めて、
パンツを下ろしました。
僕は、ちゃんと見せたので、
彼女が、すぐに謝ると思いました。
でも、近寄って来ると、
手にとって、調べ始めたんです。
ー つづく ー
どこまで疑ったら済むんでしょうか？
