誰かが、僕を、
ホウキで掃(は)きます。
それも、わざとです。
ゴミ扱いです。
もちろん、
ホウキで掃くなんて失礼です。
僕は、腹が立って、
身体を起こして、目を開きます。
怒るつもりでした。
ところが、
目に飛び込んできたのは、
みんなが、掃除している光景です。
高校の卒業式が近くて、
教室の掃除をしています。
そんな中で、
床(ゆか)で、寝転んでいたのは、
僕ひとりです。
僕をホウキで掃いていた女の子が、
怒っています。
「そんなところで寝ていられたら、
掃けないんですけど?」
「ごっ、ごめん」
僕は、跳ね起きます。
見回すと、みんな、
あわただしく掃除しているんです。
机は、もう、すべて、
教室のうしろに下げられています。
真っ白い粉を上げて、
窓で、黒板消しを、叩いています。
パン!パン!響きます。
よく、こんな中で、
眠っていられたと、自分でも思います。
もう大人になるというのに、
恥ずかしいです。
あわてて、
バケツに水を汲んで来ます。
雑巾を浸して、
床を拭くつもりです。
ちょうど、そこに、
僕が片思いしている女の子が来ます。
重たそうに、
大きな段ボール箱を抱えています。
近づくにつれ、
彼女の顔が、
段ボール箱で隠れます。
僕が、しゃがんでいるからです。
それで、
見ようとして、
身体を反らします。
バランスをくずして、
膝で、
バケツを引っ繰り返してしまいます。
彼女の足に、
バケツの水を浴びせてしまうんです。
「ごめん!」
謝ります。
ところが、次の瞬間、
彼女は、
水の中に、
沈んでしまうんです。
ー つづく ー
水の中に沈む?
次も、読んでくださいね![]()
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